"Hakubi Noise From Here - HALL edition"/photo by 翼、
2022.11.10 18:00
京都出身のスリーピース、Hakubi。近年の配信シングルでは新たなアプローチによりそのサウンドスケープに更なる進化を見せてくれており、そんなバンドのまた新たな試みとして、去る11月3日に自身にとって初となるホールでのワンマン公演を開催した。本記事ではその模様をお届けする。(取材・文/庄村聡泰)
“Hakubi Noise From Here – HALL edition”と銘打たれた本公演。会場は普段Hakubiが主戦場としているライブハウスとは随分と趣の異なる”The Garden Hall”。所在地は恵比寿であり、渋谷区および目黒区が誇る恵比寿ガーデンプレイス内のイベントホールとなっており、JR恵比寿駅からはほぼ直通の動く歩道(正式名称は“恵比寿スカイウォーク”)が整備されており、要するに内装ばかりか入り口、道程に至るまでが非常に”オシャ”な会場である訳だ。思わず面食らったオーディエンスも多かったのではなかろうか。大丈夫。おっさんも最初ここに来た時ゃ思ったさ。“え、ここでライブやんの?大丈夫……?”と。とはいえ自分の内面を炙り出される様な歌詞、改めて生きていく事の意義を問い掛け、肯定するHakubiの世界観にどっぷりと浸るにはホールという環境は打ってつけ。周りの目を気にする事なく目の前のHakubiの、そして片桐の声と歌詞に没入する事が出来る。
均等に並べられた椅子を埋め尽くすオーディエンスはそんな空気を察してなのか、はたまたHakubiの世界観の勝利か、ほぼ黒を基調とした装い。ステージ背面に浮かぶ、電飾で作ったと思われるHakubiのバックドロップが薄紫の光りを帯びつつ、怪しげに客席を見下ろしている。
しばらくするとステージが暗転。遂にメンバーの登場だ。マツイユウキ(Dr.)は今日も襟足が長く、ヤスカワアル(Ba.)は今日もグラサンで、片桐(Vo./Gt.)は今日も金髪であった(思わず天使を想起させる衣装がゴリゴリに似合っていた)。そんな片桐は本日も絶好調。オープニングを飾った「悲しいほどに毎日は」で早速オーディエンスの心に揺さぶりを掛ける。少年性と少女性が同居している様であるその稀有な歌声は正に性別や人智を超えていると形容する方が自然で、先述の衣装、そして携える真っ赤なギターも含め、本当にどこか別の世界からやってきた存在めいていた。
続く2曲目には早くも筆者の推し曲である「Twilight」をプレイ。ラストのラストに8ビートで走り出す展開がたまらない。泣き叫ぶ様に歌われる歌詞をヤスカワとマツイが静から動へとドライブさせていく。
「どこにも行けない僕たちは」や「在る日々」を鋭く叩きつけ、「Friday」ではマツイがハモりパートでも存在感を見せつける中、「あいたがい」が情感たっぷりに歌い上げられる。
途中、ステージ前方に薄幕がかかり、そちらに映像を投影しながらのセクションが挟まれる。散文詩の様な、私小説の様な言葉の数々が映し出されるというホールならでは、ワンマンならではの演出。そんな中で披露されたのは2022年第4弾配信シングルとして11月30日にリリースされる事が発表されている「32等星の夜」。Hakubi流のラブソングである「あいたがい」の次曲として鳴らされる、Hakubi流のクリスマスソングだ。その表現の幅を広げ続けんとする飽くなき挑戦精神、また新曲披露に対するMCも特にない中で、さらりとやってのける天の邪鬼的な姿勢には思わずにやりとさせられてしまう。一足早いクリスマスソングのサプライズに、オーディエンスもじっと耳を傾けている様だった。そしてやはり今宵のHakubiの白眉(どこかで言いたかった)はピアノにOfficial髭男dismのサポートも務める善岡慧一を迎えた4人編成での「栞」そして「22」の流れであろう。特に「22」はまさにこの編成でないと再現が難しい楽曲であっただけに、ホールの空気感と相まってより一層、感情に訴えかける一幕を届けてくれた。
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