9月23日公開、海辺の町で出会う「喪失」を抱えた男女の物語
福地桃子、岡山天音、井樫彩が過ごした濃密な瞬間、3人で振り返る映画『あの娘は知らない』
2022.09.24 12:00
2022.09.24 12:00
やるからには一緒にお仕事する人の見たことない姿を見たい（井樫）
──劇中でも、物語が進むに連れて2人の空気感が少しずつ変わっていきますが、それは自然と作られていった空気感だったのでしょうか。
岡山 そういう要素もあると思いますね、うん。
福地 たしかに何かがあってというよりは、ものすごく静かに、自然に、2人の関係性が出来上がっていったように思います。
──とくに印象的だったシーンはありますか？
福地 私は“人には言いづらい部分”を、顔を合わせず俊太郎に伝えるシーンです。
──お風呂のシーンですかね？
福地 そうです。あのシーンは台本を読んでいたときに、伝え方がすごく女性的だなと思いました。でも実際に撮影してみると、そのセリフが自分の中でとても言いやすかったんです。なので、頭で考えていたというよりは、「相手にこうしたら届くんだろうな」という感情を優先して演じていた気がします。
岡山 僕は、ご飯をいっぱい食べるシーンです。いっぱい食べすぎちゃって、恥ずかしかったです。
井樫 そこ!?（笑）
──美味しかったですか？
岡山 めっちゃ美味しかったです（笑）。“たくさん食べて、奈々がちょっとびっくりしている”と台本に書いてあったので、いっぱい食べなきゃと思っていっぱい食べたんですけど、ちょっとやりすぎちゃいました。
福地 でも、わかります。
岡山 えっ、わかるの？
福地 そのシーンは、忘れてた！ と思いました。真面目な話。
岡山 嘘でしょ？ ここから真面目な話できる？
福地 できます（笑）。あれは奈々が作った朝ごはんなんですよね。何気ないやりとりだけれど、“食卓の温かみ”みたいなものを感じられる瞬間って、どこか特別だと思うんです。演じているときは「いっぱい食べてるなぁ」くらいの気持ちでしたけど、あらためて映像を観たときに、意外と自分の中で印象深いシーンだったなと気づきました。
──井樫監督は、この2人だから実現したと感じたシーンや、自分の想像を超えたお芝居をされた瞬間みたいなものはありましたか？
井樫 結構ありますね。とくに印象的なシーンは2つあって、夜の海で俊太郎が思いを吐露するシーンと、奈々が先に起きて泣くシーンです。海のシーンに関しては、天音さんのバランスがすごいなと思ったんですよね。計算してお芝居を作っていく力と、自分の感情を押し出す力の両立ができるところが素晴らしいなと感じました。
奈々の泣くシーンについては、私には福地さんが結構考えるタイプに見えていて。もちろん考えるとは思うんですけど、“考える”ってどこか自分をセーブしていることでもあるので、「そこを1回取っ払おう」と話していたんです。実はそれが私の中の裏テーマでもあったので、撮影前に一度お話をして、その後すぐお芝居に表れていたことにグッと来ました。
福地・岡山 ありがとうございます。
──脚本執筆の流れについてもそうですし、井樫監督は今作を通して新たな福地さんを見せたいというお気持ちが強かったと。
井樫 やっぱり、やるからには一緒にお仕事する人の見たことない姿を見たくないですか？ たぶん、監督はみんなそうだと思います。
福地 自分がどういう人なのかって、なかなか人から言われることがないので、私自身も新鮮でした。私は奈々と考え方がまったく同じではないけれど、演じる上でそこはあまり疑問に思わなくて。そういう感覚も初めてでしたし、今作を通じて、これまでにないたくさんの感情に出会えたと思っています。
