イナズマロック フェス 2022 特集 第1回
西川貴教ロングインタビュー【前編】──イナズマの進化がもたらした変化、滋賀に築き上げたもの
2022.09.10 18:00
2022.09.10 18:00
組み合わせに振り回されないイベントを
──回収のしかたがとても上手だし、西川さんがトリのアーティストというより座長であって、血の通った関係性を最初から表に出していったところが、こちらが楽しめる要素として大きなポイントかと思いまして。
大都市圏のフェスはきちんとメディアもついてくるので、そのフォローがあって当日のニュースになったりするんですけど。今はフォローしていただくことも多くなってきたんですが、最初は関西とも東海とも違う“狭間”だったので、どこのエリアからもフォローされなかった。やってるらしいけど全容がわからない、アクセスも決していいわけではないとあって。人を集めること自体が大都市圏の20倍くらい大変でしたね。
──僕が[Alexandros]に在籍してた時も、滋賀県でライブやったことなかったですもん。
そういう意味でも、出ていただいたアーティストのプラスになることをどこに設けるかというと「出て楽しかった」ってとこだけ。今となっては、本当におかげさまで、ここを目指してきてくれるバンドとか、登竜門的なイベントになってきてると思うんですけど、当初は違ってた。このフェスに来ていただけるのが本当にありがたい、来ていただいた方に最大限の感謝だけお届けするというか。もうほんと実家に来てもらうみたいな感じで(笑)。全員が手弁当から始めたイベントなので。
僕も他のイベントやフェスに出演させていただくと、「バックヤードにこんなケータリング出してる、すごいなあ」みたいなのがたくさんあるんですけど、うちは田舎で、一生懸命畑で採ったものなんですよ、的な(笑)。他のフェスに行ったときに「先週どこ行ってたの?」ってなったときに「イナズマ行ってたんだ」「知らないけどどんなフェス?」みたいな会話で「よかった」とか「楽しかった」って言っていただけるのが僕らにとって最大限のプロモーションだったので。それしかできることがなかった。
逆に、お客様が慣れてないからいい意味でフレッシュにできる。かつ、イベントだとみんなが気にする出順や組み合わせも、うちみたいにごった煮だと、どういう組み合わせにしても常に味は混ざってるので(笑)。このバンドをご贔屓にしてます、とかじゃなく、最初から最後までとにかく楽しもう、イベント全体を好きって言ってくれる人たちを増やすこと。つまりは「イナズマロック フェス」のファンをつくること、組み合わせに振り回されないイベントにすることを目標にやり続けてきた。
──西川さん、およびT.M.Revolutionがトリを取らないっていうのを早い段階から始められてたのも、そういう意図があるんですね。
そうですね。いち早く、その状態を作ろうと。本当に、まるっと3日間とか2日間、僕が出演しないみたいな年が作れてないっていう現実はあるんですけど。とはいえ、日にちによっては本当に自分が出ない、もしくはトリを飾らないって日をなるべくたくさんこれから作っていきたいと思っているんですね。もとより、僕のためのイベントではないので。もちろん責任はとりますしきちんと現場にはいるんですけど。自分のものじゃなく地域の皆さんのものにしていこうと立ち上げたから、それこそ「あのアーティストが来てくれるんだったら最終日のトリをどうぞどうぞ」という感じで割り切れてる。
歴史をみると、オズフェスでオジー・オズボーンがひとバンド目にやるとか。これもやっぱり目的が違ってた。あれをプロデュースされた奥様(シャロン・オズボーン。オジーの妻でありマネージャー)の意思としては、オジーをしらない世代の皆さんに、オジーのフォロワーがいる空間でオジーを見せてあげることだったわけで。僕は主たるものが地方創生、地域振興なのでそれに妨げになるようなものならやらない方がまし。僕がそれに頼ってしまったらおしまいだとも思ってて。僕が多少牽引することで地方創生や地域振興が回るのならまだまだ貢献したいという感じ。釣り合いが取れなくなったら運営だけに回る。求められればやります。
次のページ