関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ! 第1回
ロイド・カウフマン監督と『悪魔の毒々モンスター』の思い出
2022.07.08 12:00
2022.07.08 12:00
ロイド・カウフマンという男の魅力
『悪魔の毒々モンスター』はね、当時50万ドルで作って、世界的にものすごい興行収入を収めた成功作品です。その続編を撮影するにあたって日本の映画会社が、「じゃあホテル取りましょうか」とカウフマンさんに伝えたら、制作費削減のために「ホテルなんかダメだ」って言うんです。社長のカウフマンさんが監督、副社長のマイケル・ハーツさんが助監督、それとカメラマンのジェームズ・ロンドンの3人がニューヨークからやってきましたが、逆にお寺か、学校の体育館をタダで二週間借りられないかって頼んだ。それは無理だということでウィークリーマンションに滞在していましたが、紙皿とかスプーンをニューヨークから送ってきて自炊していたんです。彼らは徹底的にコストを抑えるんです、制作費にかけたいから。監督は日本語も覚えちゃって、現場で「はい、車通りまあす!」なんてスタッフがやるようなこともしていた。エキストラにも拍手して「エクセレント! 今日はどう? How are you?」と話しかけるものだから、エキストラも感激しちゃってね。普通は助監督が来るもので、監督に話しかけられたのは初めてだったらしくて「やる気になるな」と話していました。そうやって、役者をやる気にさせるんですよ。だから、遊び心があってイキイキしたくだらない映像が撮れるわけですよ。
カウフマンさんは、そう言う点で徹底してプロ。作る映画は楽しいけど、ビジネスマンとしてとても厳しい。ニューヨークに帰った後の編集も、夜中にやるんですよ。その時間帯の編集室代が安いからって。そうやって徹底的にコストを抑えて映画を楽しむという、かっこいい人でした。
人を持ち上げて気持ちよくさせる、という手法はもっと日本の映画監督にあって良いんじゃないかと思う。現場がものすごく楽しいんです。僕はテリー・ジョーンズさんの『エリック・ザ・バイキング/バルハラへの航海』にも出演していて。ジョーンズさんは元々『モンティ・パイソン』のメンバーでコメディアンですから、演者の気持ちがわかるんです。なので、彼も僕のことをノラせてくれてね。カメラの前でたくさん笑ってくれてるから、「テリー・ジョーンズさんが笑ってくれてるよ〜」って気持ちよくなっちゃった。
『悪魔の毒々モンスター』は人体破壊描写もすごいけど、なんていうかな、悪い奴らだから見ていて気持ちが良いんですよ。あれがね、例えば『13日の金曜日』みたいに罪のないカップルが殺されるタイプの映画だったら、僕は苦手です。しかし、悪い奴がものすごく悪い。だから「もっとやれ!」とさえ思える。なので、私も出演している第2作目と3作目を含めて本作を見ていただけると嬉しいです。悪い奴らのやっつけ方もいいし、発想がとにかく素晴らしいんですよね。