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INTERVIEW

主演映画『死ねばいいのに』が問う、“自分を分かる”こととは

「いつかは、ただ純粋に優しい人になれたら」奈緒が役を通して耕す価値観

2026.07.14 18:00

2026.07.14 18:00

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誰かと真剣に向き合ったときにこそ、自分のことが分かる

──渡来映子という人物について監督と言葉を尽くし合ったというのは、ある意味、長い時間をかけて役づくりをしていたともいえるんでしょうか。

うーん……そうかもしれませんね。意識的に役をつくるというのではなく、金井さんとの会話の中で、自然と映子という人間が構築されていく感覚がありました。だから撮影に向けて特別に何か準備したこともなかった気がします。

──いっぽうで映子さんは、すごくインパクトのあるキャラクターでもありますよね。

そうですね。作品のビジュアルや、劇中の序盤のほうの彼女の言動に触れただけだと、そう感じて当然だと思います。

──奈緒さん自身が最初のうち、どんな印象を持っていたのか気になります。

自分のことを分かっていない人、ですね。すごく余白の多い人だなって。

──余白ですか。なるほど。

私たちは日常生活を送る中で、たくさんの人間関係を築き、その関係性の中でいろんな考え方に出会ったりするものですよね。そしてそこで、自分がどういう人間なのかを知ったりもする。でも映子は誰かとの関係性というものを持っていないし、構築しようともしてこなかった。だから余白が多いんです。やっぱり、人間が1人で自分自身のことを知るのには、限界があると思います。誰かと真剣に向き合ったときにこそ、普段から自分が何を考えていて、何を欲しているのかが分かったりするものなのかと。

『死ねばいいのに』より奈緒が演じた渡来映子
©︎京極夏彦/2026映画「死ねばいいのに」製作委員会

──おっしゃっていること、すごくよく分かります。

だから映子にとって亜佐美との出会いは、本当に衝撃的なものだったと思います。亜佐美の存在が、映子自身がまだ知らない自分と出会わせてくれたんです。亜佐美との出会いによって、映子は新しい扉を開くことができた。そう捉えていました。

──ちなみに奈緒さん自身は、いまの自分のことを「分かって」いますか?

分かっていません(笑)。もちろん、自分のことを知りたいとずっと思っていますし、10代の頃よりも20代の頃のほうが、20代の頃よりも現在のほうが、私という人間のことを分かっています。でもまだまだ、私の知らない私がいるのを感じているので、自分のことを分かっているとはいえません。

──そういう捉え方をされているからこそ、こんなにもいろんな役との出会いがあるのでしょうね。

これからももっと、いろんな役や作品をとおして、自分のことを知りたいし、少しずつ分かっていきたいですね。

──奈緒さんが出演される作品選びについてもお聞きしたいと思っていました。参加を決断される際、何を重視しているんですか?

自分がその作品のためになれるかどうか。出演のお話をいただいた際、まず想像します。この“作品のためになる”というのは、私がどれだけ頑張れるか、ということではありません。もっとシンプルな意味で、その作品のためになれるのかどうかです。だから、たとえどれだけやりたい役だったとしても、作品にとっては私じゃないほうがベストだと思うこともあります。熱意や好奇心を持った自分とは別に、客観的な視点を持ったもうひとりの自分がいて、私はこの厳しい自分によく相談をしています。

──奈緒さん流のプロとしての在り方ですね。

自分の欲求で言うと、いただいたお話はどれもやりたいんです。でも、果たして私がすべてをまっとうできるのかどうか。スケジュールの問題もありますし、現場に皺寄せがきてしまわないかなとか。そしてもしもまっとうできなかったとき、作品はもちろん、作品に関わる人々や、自分自身も傷つけてしまうことになる。だから、作品が届くべき人たちのところに届くことを、私は一番に願います。

──ときに出演を見送ることも、作品のためになることがあると。

はい、そう考えています。

──本作もそうですが、奈緒さんといえば、メッセージ性の強い作品に多く出ている印象があります。

よくそう言っていただきますね。

──テーマやメッセージを背負うことが、つらくなったりはしませんか?

それはないです。作品が完成してお客さんに届いた時点で、それはもうみなさんのもの。テーマやメッセージとの触れ合い方は、お客さんしだいです。ただ、なるべく誰かを傷つけたくないと思っています。でも、こうして生きているだけで思いがけず誰かを傷つけてしまう可能性は誰だって持っています。そのことを忘れないようにしながら、創作現場には覚悟を持って立っています。だから私がひとりで苦しくなることはありません。よく心配されるのですが、大丈夫です!

──奈緒さん流の仕事術があるように、何かリフレッシュ術はあったりしますか?

最近は旅行ですね。右も左も分からないような場所に行くのって、ちょっとした緊張感がありませんか。こうしていろんな役を演じる日々の中だと、私はもっと自分自身と向き合う時間が欲しくなります。そして、少し緊張してしまうような見知らぬ土地を訪れることで、私は新しい自分と出会うことができる。これがいまの私のリフレッシュの方法ですね。

──地元の福岡に帰るのはどうですか?

本来の自分に立ち返るためには、帰省するのもリフレッシュの手段のひとつです。でも旅をするなら、緊張感のある見知らぬ土地です。

──自分と向き合う時間をとにかく大切にされているんですね。

もう長いこと、日々のことをノートにつけています。最近はそれが進化して、次の日の自分への伝言を書いたりもしています。未来の自分が読む前提で、すごく楽しいんです。これも小さなリフレッシュになっているかもしれません。

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個性的な役を多く任されることへの思い

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作品情報

死ねばいいのに

©京極夏彦/2026映画「死ねばいいのに」製作委員会

©京極夏彦/2026映画「死ねばいいのに」製作委員会

死ねばいいのに

2026年7月3日(金)よりテアトル新宿ほか全国公開
2026年|日本|カラー|シネマスコープ|DCP|5.1ch|95分
配給・宣伝:S・D・P

公式サイトはこちら

キャスト&スタッフ

出演:
奈緒
伊東蒼
前原滉 髙橋ひかる 草川拓弥
浅野竣哉 カトウシンスケ 木原勝利 日高七海 / 田畑智子
平原テツ

原作:京極夏彦「死ねばいいのに」(講談社文庫)
脚本:喜安浩平
監督・編集:金井純一
音楽:D flat
製作幹事:S・D・P メ〜テレ
製作プロダクション:ダブ

1995年2月10日生まれ、福岡県出身。NHK連続テレビ小説『半分、青い。』(18)でヒロインの親友役を演じる。翌年にはTVドラマ『のの湯』(19)で連続ドラマ初主演、2019年には『ハルカの陶』で映画初主演。2025年に橋田賞新人賞、東京ドラマアウォード2025主演女優賞などを受賞する。主な出演作に、『事故物件 恐い間取り』『みをつくし料理帖』(20)、『先生、私の隣に座っていただけませんか?』『マイ・ダディ』『草の響き』『あなたの番です 劇場版』(21)、『余命10年』『TANG タング』『マイ・ブロークン・マリコ』(22)、『スイート・マイホーム』(23)、『陰陽師0』『先生の白い嘘』『告白 コンフェッション』『傲慢と善良』(24)『死ねばいいのに』『シャドウワーク』(26)などがある。2026年4月には初のフォトエッセイ『いつか』も出版。2027年に主演映画『あをの情』が公開予定。

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