2026.07.14 18:00
2026.07.14 18:00
映画、ドラマ、そして舞台にて、さまざまな役の人生を歩んできた俳優・奈緒。次に彼女がどんな作品に出演し、どのような役どころを演じるのか、つねに気になる存在だ。自身の人生と役の人生とは、彼女にとってどういった関係性にあるのだろうか。
そんな奈緒が新たに挑んだのは、渡来映子という謎めいたキャラクター。作家・京極夏彦の小説を原作とした映画『死ねばいいのに』の主人公だ。鹿島亜佐美という女性が何者かに殺害されたことをきっかけに彼女は現れ、生前の亜佐美と交流のあった者たちの証言をたどっていく。
彼女は何者なのか。その目的は何なのか。次第に明らかになる、映子と亜佐美の思いもよらぬ関係性。渡来映子の人生を歩むことは、現在の彼女に何をもたらしたのか。その言葉たちからは、奈緒という俳優であり人間の、生き方が見えてくる。

映子はまるで、私たちの共通の知人のようだったんです
──金井純一監督との映画づくりはこれが2度目ですね。
ムロツヨシさん主演の『マイ・ダディ』(2021年)という作品ぶりに、またご一緒させていただきました。この作品に関してはとくに、事前にコミュニケーションを重ねることが大切になると思っていました。あらかじめ信頼関係ができているところから、今回はスタートすることができました。
──本作のスリリングな展開に魅せられ、登場人物たちの切実さに打ちのめされました。奈緒さんはこの作品の脚本をどう受け取ったのでしょう。
作品の構造的にミステリー要素があって、本当にスリリングですよね。それに、登場する人間たちの気持ちというものにもミステリー性があって、とても面白い。だからこそ、役者にとっては難しい本だとも感じました。
──個人のミステリアスなところを表現することの難しさですか?
登場人物たちがどういう人間なのかは、会話劇の中で分かってくるんですが、私が演じる渡来映子に関していえば、ほかの登場人物たちとのやり取りや関係性の中で、観客のみなさんに対して彼女の人物像を提示し、ついてきてもらわなくちゃならない。これをどう表現すればいいのか、撮影前の時点だと、あまりうまく想像できなかったんですよね。
──たしかに、脚本上の活字からだけだとイメージするのが難しそうです。
そうなんです。活字だけだと、どうしても難しくて。というのも、登場人物たちのやり取りのシチュエーションが、急に大きく変わるんですよ。それまでは室内でやり取りをしていたはずなのに、草原の中でのやり取りに場面転換するんです。こればっかりは現場に行ってみないと分からないだろうと思いましたね。
──そんなふうに柔軟でいられたのは、監督とのコミュニケーションが取れていたからなんですかね。
だと思います。現場では本当にいろんなことが起こるのですが、そこで臨機応変に動くためには、私たちがつねに手を取り合っている必要があります。コミュニケーションを重ねて関係性を深めることの重要性を、みんな実感していました。

©︎京極夏彦/2026映画「死ねばいいのに」製作委員会
──こういった取り組み方は、どの作品でもそうなんですか。それとも、本作だからこそのものですか?
取り組み方は作品によって変わります。今回に関しては内容的にもセンシティブなものですし、主演を務める者としてどう舵を取っていくべきかたくさん考えました。
──舵取りですか。
そうです。やはり何よりも作り手側の関係性が重要だなって。
──本作の座長としての奈緒さんのスタンスですね。
本作には京極先生の素晴らしい原作があって、すでにたくさんのファンの方々に大切にされています。金井監督をはじめ、みんな京極先生と原作に対して特別な想いがありました。それらを共有するためにも、やっぱりコミュニケーションが重要になってくる。この作品について、事前にたくさんの言葉を交わしました。プロデューサーも含めてご飯を食べに行ったりもしたのですが、もうずっと、『死ねばいいのに』の話をしてましたね。何でもない雑談から気づきが生まれたこともありましたし、この作品に臨むうえで、とっても大切な時間だったと感じています。だから渡来映子のこのビジュアルも、撮影がはじまる前の段階で立ち上がっていたんです。

──それ、面白い話ですね。あまり聞いたことがないです。
ですよね。いま思えば不思議な時間でした。映子について金井さんと話していると、これから自分が演じる役の話ではなく、渡来映子という実在の人物について語っているような感覚になってくるんです。「映子ってさぁ……」みたいに。彼女はまるでずっと、私たちの共通の知人のようだったんです。
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