日本のロックを牽引する存在となった4人の進化と変化に迫る
go!go!vanillasが新曲で追い求めた抜きの美学、彼らはなぜ常に“最高”を叩き出せるのか?
2025.08.05 18:00
2025.08.05 18:00
タイトルはもう「これしかない」と思った
──でもこの曲もまた、譜割りかなり遊んだでしょう?
牧 そうですねメロ、遊びました。
──パターンどのくらい作ったんですか? シンプルなトラックだからこそ乗せがいもあったろうし。
牧 そうですね、まさに本当にループさせて、サビに行くまでずっとループさせてひたすら仮歌でメロディー入れたりとか、言葉を詰めてやってみたりとかして、歌詞づくりと同時進行でやっていきました。タイアップってこともあって、テーマを決めてから「この言葉入れたいな」っていうのがポンポンポンポンって出てきて、それを入れるためのメロディーを繋ぎ合わした感じです。
──その「入れたい」っていう言葉は、歌詞の中で具体的にどの言葉?
牧 「お土産」ですね。最初の方で坂本が肉まんやランドセルを家族に買って帰ろうと暴れ回るシーンがあって。戦いの最中と相反してるこの感情が『SAKAMOTO DAYS』の良さだと思ったので。この真心みたいなものと、自分が生き残っていくためにそれまでこれが世界だと思ってたところから、愛によって違う世界に行けたっていう、そこを表現したかったです。他にもいっぱいありますね。「血生臭い生家」とかも。坂本が愛するものっていうところで娘の花と妻の葵っていう2つの花があったので、坂本も何かの花に例えたいなと思って「ダンデライオン」に。
「ダンデライオン」ってフランス語で“ライオンの牙”っていう意味なんですけど、花の形がそう見えるかららしくて。まさに強い坂本、百獣の王というか最強の殺し屋っていうところがありつつ、でもタンポポってパッて綿毛が飛んでいっちゃうじゃないですか。だからその幸せがちょっとでも吹いたらなくなっちゃうっていう、守るものが弱点にもなるし強さにもなるっていうところがとてもタンポポっていうか、「ダンデライオンだなぁ坂本は」って思ったんです。

──いいですね、ロマンあふれる。
牧 ロマンを詰め込んでますね(笑)。花言葉も良くて、“真実の愛”とか“幸せ”っていうのもあるんですけど、綿帽子になるともう“別れ”なんですよ。ここも凄い合ってるなぁと。
──今日ここに来る途中、まさにこのタイトルについて考えてて。『SAKAMOTO DAYS』にタンポポは出ない、じゃあ「花言葉はどうだ」って調べたら、「あぁなるほど」って気づいたんですよね。“ずっと一緒”って意味と……
牧 “別れ”なんすよね。
──そこら辺もやっぱ上手いですよね。
牧 「ダンデライオン」って曲めっちゃあるじゃないですか。だから、極力避けたかった(笑)。避けたかったけど、今回はもう「これしかない」と思って。
柳沢 最初、仮タイトル「せいろ」でしたから。
牧 芸森スタジオで食べたお蕎麦がせいろだったんで(笑)。
──(笑)それとバックトラックとボーカルが際立つ感じのミックスも凄く良くて。
牧 あれはもう小森さんっていうエンジニアの方が。
セイヤ 小森さん様様です。
牧 IRORI Recordsの色々なアーティストをやってくれてるんですけど、その方のミックスが凄く良くて。僕らが移籍して最初に出した「SHAKE」も小森さんにやってもらったんですけど、その時からもう「やばい」ってなって。しかも事前にくれないんですよ。大体送ってきてくれるじゃないですか、でも小森さんはスタジオでドンなんですよ。向こうも自信があるし「文句ねーだろう」ってぐらいの感じなんだなってわかるから、なんか安心してて。自分の曲なのに、人の曲のような感じで聴けるっていうのがかなり良いですよね。
セイヤ 全部聴こえてきますよね、ちゃんと楽器の音と。
──そろそろ締めってこともあってちょっと曲の話から離れるんですが、バニラズはこれまで進太郎くんの加入だったり、プリティくんの復活劇だったり、バンドとしてのドラマはあったと思うんですけど、明確な転機みたいなものがあったかというと、個人的にはない気がしてて。
牧 ないですよ。僕らはないっす(笑)。
──にも関わらず、武道館2Daysを当たり前に売り切るくらいに成長できたっていうのが感慨深くもあるし、凄いなと思うんです。その理由って自分たちではどう考えてます?
牧 これはわかんないですね。 例えば特定のファンや社会、色んな人に向けて凄く躍起になってきたバンドではないと思うので(笑)。逆に言えば、愛されてるなって。
──20代前半のバンドとか、バニラズをフェイバリットに挙げるバンドマンめちゃめちゃ多いじゃないですか。
セイヤ 増えてきましたよね。
──彼らへのメッセージという意味でも、知りたいんじゃないかなと思って。
牧 でも多分、今のバンドシーンは昔の四つ打ちバンバンやってるようなジャンルが1つになってるっていうのとは全然違って、20代とか10代の若い子はちょっとひねくれた奴しかバンドやってないんじゃないかと思ってて。だからその、メインシーンど真ん中のバンドに行く恥ずかしさみたいなところからちょっと外れた俺らがちょうどいいのかも(笑)。
セイヤ でもなんか深いところまで知ろうってしてくれる人多くない? 曲の歌詞から全部汲み取るみたいな。で、ライブを見てくれて「こんなアグレッシブなバンドやったんや」とかけっこう言われますね。そういうギャップの連続みたいなのを起こしとるんかなって、みんなの中で。
──2019年に「サイシンサイコウ」って曲を発表してますけど、バニラズはそれを本当に体現してる稀有な存在だと思ってて。“最新が最高”って言うのは簡単だけど、実際に毎作品で実践し続けるのは相当難しいことじゃないですか。牧くんって服とかサウナとかも好きだし、缶詰みたいな生活しているイメージないのになんでこんなに曲のクオリティを更新し続けられるんだろうって。
牧 どうなんだろう。僕1人っ子なんですけど、だからけっこう1人の時間が好きなんですよ。その時にもう、かなりインプットしてますね。垂れ流しとかでも、色々気になったものを。
柳沢 でも最近めっちゃ思うのが、こうやってみんなでいる時とかに、例えば「明日何時集合です」みたいな話をして「はい」ってみんな言うじゃないですか。でも牧さんってその5分後くらいに「明日何時?」みたいなこと聞いたりするんですよ(笑)。だから多分、必要な情報以外をカットする能力に長けてて、垂れ流してても必要な情報を摂取してそれをアウトプットできるんですよ。フィルターがすげえんだと思います。
