劇映画初出演で感じた思い、これまでの苦労を愛せる理由とは
「今は俳優として必要とされたい」IMP.基俊介が切り開く“自分だけのものじゃない”人生
2025.07.14 19:00
2025.07.14 19:00
辛い時もメンバーがいたから乗り越えられた
──雅は「他人から愛されなくても、幸せに生きることを許されたい」と言います。他者からの愛がなくても人は幸せに生きられるのか。それともやっぱり愛は必要か。基さんの考えを聞かせてください。
結局これって正解はないし、幸せの形は人それぞれ。その前提の上で僕の考えを言うと、やっぱり愛はあったほうがいいのかなって。ただし、その愛は家族からでなくてもよくて。友達でも誰でもいいと思うんです。たとえば、陽彩は雅と出会った。あれも一つの愛だと思うし。
そこで言うと、僕にとっての陽彩や雅はメンバーなんですよ。辛かった時代も決して一人ではなかった。「マジでぜってえ見返してやるかんな」という同じ思いを共有できる仲間がいたから乗り越えられた。同じ志を持てる理解者がいるだけで人生って違ってくると思うし、それが家族や友達というようなわかりやすい言葉で定義づけられる関係でなくても全然いいと思う。
そんな相手はいないという人も、もしかしたらまだ出会っていないだけで、いつか出会えるかもしれない。だから、今すぐ答えは出さなくてもいいような気がします。

©︎武田綾乃/講談社 ©︎2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会
──そんなハードな物語の中で、ご自身の演じた堀口はどういう存在としていられたらいいなと考えていましたか。
原作と映画で堀口の解像度が若干違うんですけど、僕は脚本を読んだときに堀口に対して憎めないウザさを感じて。それがきっと堀口の生き方というか、自分の置かれた境遇と向き合うための折り合いのつけ方だと思ったんですね。だから、映画の中で見せている彼の姿は嘘ではないけれど本心でもない。というか、その状態が堀口にとって心地いいのであれば、嘘さえも本心にしているところがあるのかもしれない。それはそれで堀口にとってはオッケーで、あまり無理をしているところを感じられないのが堀口の良さなんだということを意識して臨みました。
──この映画は、親によって奪われた人生を自らの手で取り戻し、「私は私の人生を生きる」と決意するまでの物語だと感じました。基さんが、自分の人生を自分で生きていると実感したのは、いつ頃のことですか。
そこに関して言うと、僕は恵まれた側の人間だと思っていて。母親の影響で物心ついたときから社長のことを知っていて。子どものときって、お母さんが喜ぶことを率先してやりたがるじゃないですか。自分が「タッキーになる!」と言ったら、手を叩いて母が喜んでくれたので、この道を目指すようになりました。

──なるほど。わりと小さい頃からもう今の自分が出来上がっていたわけですね。
しかもそれが決して無理をしているとかじゃなくて。根本的に人を喜ばせるのが好きなんです。今、ステージに立ってファンのみなさんに喜んでもらえるようにパフォーマンスをしていている自分と、母に喜んでもらおうと社長のマネをしていた幼い頃の自分。そこに乖離はほとんどなくて。そういう性格の僕にとって、今のこの仕事は天職なんです。
── 一方でどうでしょう。最初は滝沢さんの憧れから始まったアイドル人生だと思うのですが、自分がステージに立つ側になったら、当然滝沢さんのようにはなれないし、滝沢さんのマネをしているだけでもいけない。どうやって基俊介のスタイルを見つけていきましたか。
明確に僕はこれだというものはまだ見つけられていないかもしれないです。ただ、今回やってみて改めて僕は俳優業が好きなんだなって思いました。IMP.としての活動を第一にしながら、ここから先、俳優の道をどうやって切り開いていくかは、もっと自分なりに考えていきたいですね。
──俳優業の何にそんなに心惹かれているでしょう。
つくる過程ですね。たぶん僕は、みんなで一つの目標に向かって突き進んでいく感じが好きなんです。
僕たちもこの間まで『IMPACT』という舞台をやっていましたが、お客さんにインパクトを与えるために何ができるかということをみんなでああじゃないこうじゃないと話し合い、研鑽を積んで。本番の幕が上がって、お客さんが喜んでくれているのを肌で感じて、自分たちがやってきたことは間違いじゃなかったんだなって確信できた。
『愛されなくても別に』の現場でも、ほんの1秒、ほんのワンカットに命を懸けているみなさんの姿が大好きでした。いろんな人たちがこういうものを表現したいという想いをぶつけ合いながら、一つの作品をつくり上げていく。その過程にもっと携わっていきたいという思いがあります。

──この先、どんな俳優になっていきたいですか。
まだ本当に数えられるくらいの作品しか出たことがないので、大層なことは言えないですけど、まずは俳優として何かしらの形で認められるようになりたいです。自分が出ることによって、たくさんの人が観てくれて、評価してもらえることがいちばん幸せ。そのためにも、まずは必要とされる俳優にならないと、ですね。必要とされることに今飢えているかもしれないです。
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