2025.07.04 18:00
2025.07.04 18:00
廣野凌大の音楽プロジェクト・Bimiのメジャー1stアルバム『R』が4月にリリースされた。現在Bimiはそれを記念したツアーを敢行中で、ファイナルを7月6日にSpotify O-EASTにて迎える。
“Restart”、“Replay“、“Reborn”といった意味をアルバムタイトルに込めた『R』では、彼がこれまで磨いてきたヒップホップに加えて、リミックスという形での過去作の再解釈や元々好きであったというパンクロックの導入、もう一つの顔である俳優業を通じて出会った人とのコラボレーション楽曲など、彼がここまで歩んできた27年分の轍がさらわれている。そしてその轍は、かつて夢見ていた理想像と今の姿には違いがあるものの、抱いていた理想を追いかけて駆け抜けたからこそ出来上がったものであり、感謝とある種の弔いがアルバムを通して行われ、それゆえに凄まじい情報量と熱量が生まれている。
Bimiはアルバムに込めたコンセプトやメッセージをどのように獲得していったのか。制作過程のエピソードを通して彼の矜持に迫った。

27年を供養して種を蒔いていくアルバム
──メジャー1stアルバム、恐ろしい情報量と熱量でした。ここまでエネルギッシュな内容になるとどこまで制作の段階で想定されていましたか?
「とりあえず12曲作ろう」から始まりました。インディーズで一人でやってた時からラップが多かったんですけど、いろんなジャンルに手を出したいなと思っていたのと、27歳になるにつれて考え方も凄く柔軟になっていったので、その垣根をなくしたというか。そこからどう落とし込んでいこうって考えて、気がついたら12曲できてたんで、あとは聴きやすい順に並べたって感じです。
M1から4までは今まで通りラップが好きなんでぶちかましてって感じで、M5から8までが結構オリエンタルであり思想強めでバラエティー色が強くて、M9から12までが繊細な心の流れというか、そういうイメージで作りましたね。だからM1から4までがスキルの提示で、M5から8までが別のジャンルのスキルの提示、M9から12までが歌のスキルの提示と、全然違うスキルを提唱したって感じです。
──このアルバムに入るべくして入った12曲が自然とできていったということですね。
「Nemo」と「暴食」、「27th -味変-」の3曲は入れようと決めていました。「Nemo」で一回自分を殺して、「暴食」で生まれ変わって、「27th -味変-」は過去の自分のリミックスなんですけど、この曲を今の年齢で改めて消化するっていうのを考えてたので。あとはこの『R』っていうタイトルは作っていく中で決まっていったんですけど、自分を形成していった周りの環境を歌おうって思って作ったらこのタイトルになりました。
──アルバムのジャケットを見ると、草花と紙幣が燃えていて、華やかなショービズとその裏に飛び交う、ある意味汚い金をまとめてBimiが燃やしてやるぜ、みたいな。
自分の汚い部分も綺麗な部分も含めての“火葬”に近くて、27年の供養ですね。お焚き上げすることで残った灰が散らばって草木の肥料になるように、このアルバムがどこかに引っかかってくれて、話題性を持ってさらにBimiに興味を持ってもらう人が増えて、自分の生きやすいフィールドにもっと強度が加われればいいなって思ってて。種を蒔いていくっていう感じのアルバムです。

──制作はいかがでしたか。
結構バタバタでしたね。最初の方にもう個人の曲は出来ていたんですけど、やっぱりフィーチャリング曲はどうしてもお互いのリズムがあるので。でも、難航はしてないかも。自分がバース蹴ってフック作って客演のアーティストに送って、送り返してもらって、そこに修飾して終わりって感じでした。(制作の)テンポとしては良かったんですけど、俳優をやりながらだったんです。舞台に出ていた友達にも何曲か提供してて、俳優の方で書くのはその人のお客さんに向けて、その人が輝くようにっていうプロデュース的な脳みそで書いて、こっちはセルフプロデュースで自分が表現したいものと、客演がどう生きるかとかそういう考えなきゃいけないっていう別の脳みそを使ってたんで、その行き来がしんどかったですね。
──ご自身の中に常に主観と客観があるんですね。
そうですね。だいぶ俯瞰で見れるようになりましたけど、やっぱり俳優をやったり、いろいろ仕事していく上で見れるようになりました。

──冒頭の「辻斬り」「百鬼夜行 feat. Whoopee Bomb」の和モノ感はどういう着想で?
インディーズで始めた時から世界で戦う時のことを意識していて、和モノは日本人のアイデンティティだから、絶対そこのジャパニーズソウルは海外の人が好きだし、俺も好きだから失わないようにしようと思って。毎回アルバムには絶対一曲ぐらい尺八を入れたりしてるんですけど、その中でもやっぱ「辻斬り」は今回の一番Bimiとして成長してきたスキルの提示という、R&Bと和メロとヒップホップのビートを合わせて。結構いい足し掛けだなって思いますね。 1バース目とフック、2バース目とフックでまたちょっと聴こえが変わるというか、音が変わるような作り方ができたんで、本当に辻斬りというか、どこからともなく現れて、斬ってかまして帰るBimiの体現ができたのかなっていうのがあります。
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