劇団☆新感線『紅鬼物語』が開幕間近、今の目標と原動力とは
デビュー7年目で念願の初舞台へ 一ノ瀬颯の心を占める「自分磨き」への思い
2025.05.05 18:00
2025.05.05 18:00
人と比べるのをやめて、自分を認められるようになった
──その「ひたすら頑張るのみ」というモチベーションの源泉ってなんですか。人によって、他者との競争心とか、いろいろあると思いますけど。
競争心は大きいですね。自分と同じ戦隊に出ていたメンバーや、同じ時期にデビューした人たちが今どのあたりにいるか、というのはやっぱりすごく意識していましたし。
でも、ちょっとそれをやめようと思って。今年の目標は「自分は自分」なんです。

──なるほど。ちょっと心の持ち方が変わったんですね。
もちろん悔しい気持ちは大事です。人と比べて自分を奮い立たせるやり方があるのもわかっています。僕、良くも悪くも人のいいところを見つけるのが得意なんですよ。その人の秀でているところと自分を比べて、そのたびに相手のことが本当に素晴らしいとしか思えなくなるんですけど。でも、自分にも間違いなくいいところはあるはずなんだから、人のいいところを見つけるのと同じくらい、ちゃんと自分のいいところにも目を向けてあげなくちゃなって、最近やっと考えられるようになりました。
──人のいいところは見つけられるのに、自分のいいところに目を向けられないというのはよくわかる気がします。
なんだろう。ナルシストになりたくなかったんだと思います。小学生のときに、僕しかいないところに向けて、同級生が「おい、イケメン」と言ってきて。ここで振り向いたら、「自分のことイケメンだと思っているんだ〜」ってからかわれるのがわかっていたから、意地でも振り向かないようにしていました(笑)。

──イケメンゆえの苦悩……!
たぶんそういうのが積み重なって、ナルシストになりたくないという気持ちが強くなりすぎて、結果として自分のいいところを見てあげられなかったのかなって、今、話していて気づきました。
──ということは、多少はイケメンということも認められるようになった?
高校の後輩に言われたんです、「褒められたらありがとうって言わないと嫌味になるよ」って。それで、そうかそうかと思ったんですけど、「ありがとう」って言ったら「否定しないんだ」と言ってくる人も出てくるので難しいところですね(笑)。

──以前、自分のことを自己肯定感が低いとおっしゃっていて。その理由がちょっとわかった気がしました。
人と比べなくなったおかげで、今はだいぶマシになりました。でもそれもこの仕事をやっているからだと思います。モチベーションの話に戻りますが、結局どこで承認欲求を満たすかという話で。直近だと、『119 エマージェンシーコール』の第4話みたいに自分のお芝居を認めてもらえた経験が少しずつ増えてきて、自分を認められるようになったというか。ベクトルが他人じゃなくて、自分に向いている感じですね。今は、またそんなふうに評価してもらえるように、自分のお芝居のレベルを上げることに関心が向かっている。お芝居に対する探求心が、今の僕の原動力になっています。
──では最後に、そんな一ノ瀬さんの「ここを直したい」という自分の癖や習慣を教えてください。
なんだろうなあ。そうやって考えると、どんどん出てきちゃう気がしますけど(笑)。僕、何か難しいことに新しく取り掛かろうとするとき、最初の一手をすごく渋っちゃうんです。そこを直したくて、よくビジネス書とか自己啓発本を読んでいるんですけど。本には「まず2分やってみる」というようなことが書かれていて。2分やってみたら、人って途中で投げ出したくない心理が湧いてくるので、その心理作用をうまく使うことで最後までできるそうなんです。だから、はじめの着手で渋るという思考の癖を直せるようになりたいですね。
──たぶん完璧主義なところがあるのかもしれないですね。
それはあるかなって気がします。今は何事にも挑戦することが大事なので、あまり難しく考えず、まず2分やってみるということを実践できるようになりたいです。

スタイリスト/檜垣健太郎(tsujimanagement)