2024.11.06 18:00
2024.11.06 18:00
現在放送中のアニメ『妻、小学生になる。』のオープニング主題歌として起用されているのが、大阪を拠点に活動する3人組バンド・pachaeの「アイノリユニオン」だ。彼らにとって初のタイアップソングとなったこの曲を聴けばわかるとおり、類まれなセンスとスキルをもったバンドである。フロントマンでありコンポーザーでもある⾳⼭⼤亮(Vo&Gt)の生み出す楽曲はジャンルもスタイルもなんでもこいの雑食ぶりでありながら、ポップスとしての強度は1ミリも譲らない。それを具現化するバンバ(Gt)とさなえ(Key)のプレイもとても完成度が高い。つまり最初の音源を出してから3年あまりですでに高い完成度を誇る音楽集団なわけだが、一方で出す曲出す曲見事にバラバラなのでいったいどんなバンドなのか掴みどころがあるようでないともいえる。
そこで今回は「アイノリユニオン」のことはもちろん、なんでpachaeはpachaeになったのかという根本に迫ってみた。音山の根っこにある思いや感情、そしてそれを支えるメンバーの姿勢まで、このユニークなバンドのユニークさの所以がわかるインタビューになっていると思う。
わかる人だけにわかってほしいみたいなことは言いたくない
──『妻、小学生になる。』の放送が始まりましたが、実際にTVで自分たちの曲が流れ始めて、手応えはどうですか?
⾳⼭ 感触は、徐々に、ですね。
バンバ YouTubeにアップしたMVの再生回数もちゃんと増えているので「やったぜ」っていう感じですね。
──初めてのタイアップでしたが、やってみてどうでした?
音山 結構楽しく曲を書けました。普段は自分自由に書けるからこそ悩んでいるので、ひとつ筋がある状態で書くっていうのは、普段の苦悩は逆にない感じもあったし、作品がすごいよかったんで、いつもよりも書きやすかったなあって思います。
──なるほど。
音山 普段はテーマも直感で選んでるから難しいんですよね。無数に浮かんでるものからひとつだけ掴んで下ろしてくるっていう感じがあるので。自分自身にいろんな経験や知識がないと、そもそも曲は書けないなと思うんです。恋愛経験がなくても恋愛の名曲を書く人とかもたまにいますけど、そうなれるって思うほうがおこがましい。でもこういうタイアップは、作品って形である種経験させてくれるみたいなことなんで。原作、めちゃくちゃ読んで書きましたね。
──さなえさんは今回の制作はどうでした?
さなえ 音山さんからデモ音源が送られてきた時点で、展開が多くて、聴いてて楽しいなっていうのがありました。あとはライブで早く弾きたいなって。
バンバ まだ1回もやってないけどね。
さなえ 明日初披露なんです(笑)。
──ああ、そうなんだ(笑)。楽しみですね。バンバさんはどうですか?
バンバ 聴いてもらったらわかると思いますけど、難しいですよね(笑)。いい曲やけど難しいから、練習頑張らなあかんなって思いました。まあ、毎回なんですけど(笑)。
──pachaeの曲って全部そうじゃないですか?
バンバ マジでそうです。もう、怖い(笑)。
──曲ごとにいろんな要素が入ってくるし、ジャンルなんて関係なしに広がっていってるpachaeの音楽ですしね。
音山 まあ、難しくしたいわけじゃないんですけどね。
──最初のデジタルEP『GIM』を出してから3年ですけど、そのなかで自分たちの音楽の変化についてはどう感じていますか?
音山 今作るべき曲をその時その時自分の中で作ってるだけなんで。全然違う曲を出してるけど、何かが変わったわけではないのかなって思います。最近は結構ポップス寄りの曲を出してますけど、変な曲出してって言われたらすぐ戻りますしね。
──「変な曲」って(笑)。
音山 俺の曲作りが変わってきてそうなったというよりは、もともと自分の趣味の範囲でしか曲を作っていないんですよ。めっちゃ偉そうなんですけど、たぶん、もともと結構いろんな曲を書けるタイプなので。もっと広げようとも思ってますし、でも、これ以上広げなくてもいいかなとも思ってます。「まだ出してないけど、こういうジャンルも書けるよ」っていうのも何個かあるんですけど、今あるやつでも十分いろんな振り幅で書けてるから、それをどう表現するかっていうことなのかなって。
──逆に、どんな曲でも書けるぶん、取捨選択をするのが難しい、というのはないですか。
音山 でも選び方は俺の中では簡単で。取捨の「捨」の部分を言っていくと……尖った言い方になるかもしれないですけど、「流行らんやろ」って思うジャンルは全部省いていった結果が今ですね。でも、「何年後にバズる」みたいな、めっちゃ新しいジャンルにしようとも思ってなかったです。
──それはどうして?
音山 結局、いつの時代も歌謡曲が求められるなと思うので。結局売れてる曲のサビは歌謡曲だっていうのは日本では変わってないんで。だからあまり歌のメロディを凝りまくったものにするみたいなことは最初から考えてなかったですね。
──ああ、確かにpachaeいろいろな曲がありますけど、メロのキャッチーさや歌謡性というところではすごく一貫している感じはありますよね。
音山 そうですね。楽器が変やから、歌はシンプルにっていうところはありますし、楽器も、変な音はしてるけど、変には聞こえさせたくないみたいなのがある。わかる人だけにわかってほしいみたいなことは言いたくないんですよね。「わかる人」を増やすのもやっぱり大事だし、やっぱり多くの人に聴いてもらいたいので。
──そこの精度が、特にここ最近の曲を聴いているとすごく上がってきている感じがします。すごくシンプルに聞こえるようになってきたなって。
音山 昔に比べればかなり。
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