『ゼンブ・オブ・トーキョー』の舞台裏では何が起きていた?
熊切和嘉監督が見た日向坂46四期生、自由だから撮れた“二度と戻れない瞬間”とは
2024.10.25 18:00
2024.10.25 18:00
あくまで俳優たちとして四期生と接した
──渡辺莉奈さんは今作の役作りでショートカットに?
そうなんですよ。メイクさんにも確認をとって(笑)。「絶対似合うと思う」ってお墨付きもらえて、本人も乗ってくれて。
──説田役の石塚瑶季さんの姫カットも?
そうですね。説田を眼鏡っ子にしようっていうのはなんとなくあったんですけど、ロケハンで池袋行った時にたまたま姫カットの人が歩いていて「あ、これだ」と思ってすぐ絵を描いて(笑)。
──正源司さん演じる池園はリュックにしっかり班の札をつけていたりとか、それぞれの着こなしも、監督が中心となって考えられたんですか?
一応絵は描いたんですけど、細かいところは衣装さんとかメイクさんとかにいろいろ案を出してもらった中で振り分けていったような感じですかね。
──LINEの登録名までこだわってますよね。宮地すみれさんが演じた梁取は「♡あかね♡」とか。
それは遊びどころと言いますか(笑)。キャラクターがはっきりと分けられたので、そういうところは助監督だったりが考えてくれたところもあります。
──なるほど。全員かなり凝った役名ですよね。
役名は脚本の福田さんが考えてくれたんですけど、名前を考えるのは福田さんも苦手らしくて。新しい名前を考えるアプリがあるんですけど、そういうのも使ったりしながらやったみたいです。最初は「池園ユカリ」だったんですよ。でも最初にオーディション的な読み合わせをやった時に、みんな「ユリカ」って間違えていて、「今時はユリカの方が多いのか?」と思って「優里香」に直したりとか、そういうことはありました(笑)。
──彼女たちの同期ならではの空気感が生んだアドリブシーンもありましたか?
それはもちろんありますね。普通の俳優たちだと撮影までに頻繁に合わせることできないので、そんなに仲良くなることないと思うんですけど、彼女たちは元々仲が良いので待ち時間もずっと喋っていますし。だから彼女たち同士で練習なのか、掛け合いなのかよくわかんない感じになって、そのまま使っているところもあります。最初の浅草のシーンもかなりアドリブ合戦というか。とにかく楽しんで撮っていました。
──カフェのシーンの小西夏菜実さん演じる枡谷の表情はすごく良いですよね。
小西さんは見た目クールな感じですけど、すごく面白い表情をするんです(笑)。それを引き出したくて。
──先生役の八嶋智人さんの、「なんでお前らさっきからちょっと半笑いなんだよ」っていうセリフも最高でした(笑)。あそこもアドリブなんじゃないかなと思いましたが。
あれはそうですね(笑)。やっている中で、間を自由に埋めてもらった感じです。あのシーンは3回ぐらいやっているんですけど。
──監督自身もそんな遊び心溢れた撮影や編集は久しぶりだったんでしょうか?
今回特に自由だったんですよね。あんまり計算してサスペンスを盛り上げるとかでもないですし(笑)『658km、陽子の旅』とかだともっと繊細なところで神経質になったりしていたんですけど、今回はとにかく彼女たちがのびのび演じてくれたらいいなというのはあったので、そういう意味で楽しかったですね。なんでもありかなと思って撮っていました。
──映画を撮る前と撮った後で、特に変化が見られたメンバーを挙げるとすると誰でしょうか?
割とみんな変わったんですけど、一番大きく変わったのは竹内(希来里)さんですね。最初は緊張していて、台本の読み方もわかんないぐらい全く落ち着きなくてできなかったのが、リハーサルを重ねてどんどん良くなって。藤嶌(果歩)さんはもともと上手で、藤嶌さんがすごく付き合って練習してくれていたんだと思うんですけど、すごくやっぱり面白かったですね。あの2人の掛け合いは。
──広いフィルモグラフィの中で、ご自身で「こういう作品が自分に一番合っているな」と思うものはありますか?
意外と偏っていると思うんですよね(笑)。自分としては職人としていろいろ撮ってみたいですけど、やっぱり譲れない部分はあって。今回も一見キラキラしているけど、実はみんなうまくいかない子たちなんです。すごく応援したくなるというか、どんどん成功していく子たちの話では撮れないと思うので、ぱっと見は全然違うタイプだけど、どれも意外と自分の好みのキャラクターたちなんですよね。誰からも理解されないようなことにまっすぐになるとか、推しキャラグッズを求めて並ぶとかってすごくシンパシーを覚えます。
──では最後に。あの時代に戻れない監督から見て、日向坂46のメンバーはどう映りましたか?
あくまで僕は俳優たちとして接したのですが、すごく四期生のみんながピュアだったんですよね。そのことが何よりも良かったです。