2024.10.19 12:00
2024.10.19 12:00
短時間で役に潜れる率が深まった気がする
──近年、コンスタントに舞台作品に出られていますよね。舞台に出続けている理由というのはあるんでしょうか。
単純に、すごく楽しいんですよ! もちろん映像のお仕事も楽しくて大好きなんですけど、舞台には舞台にしかない良さがあり。もちろん壁を感じることもありますし、厳しい世界でもある。でも、大変だからこそ面白いものができたり、より激しいものができたり、私は舞台のパワーってすごく強い気がしていて……そういうものに初舞台で触れたときに「なんて世界なんだ!」と思ったんですね。まだやりたい! と思って今に至る、という感じです(笑)。
──壁を感じること、あるんですか……?
ありますよ!? いやもう、壁しかない(笑)。本当に難しいことばかりです。
──でもそうやって壁にぶつかりながら、他のお仕事に生かされていたり、成長を実感できたりするわけですよね。
そうですね。舞台だと一つの作品に浸っている時間が長い分、「ここまで役って掘れるんだ」とか、「ここまで作品について考えられるんだ」というレベルを常に更新している気がするんです。だから映像の現場に入ったときにも、役への理解の深さみたいなものが以前よりもさらに深いところまで行ける気がするんですよね。あと、舞台で身体的な表現を体験したことで、映像で演技をするときも感情や表情に身体が伴うようになっていると感じます。
──舞台でそうやって役への理解が深められるようになったのは、具体的にどんなことが理由だと思いますか?
一つは稽古期間が長くて、役と向き合える時間が多いということ。あと、多くの人に見られている状況でお芝居をするのはすごく怖いことだし、雑念が入りやすいと思うんですよね。演じる身としてはなるべくその雑念を排除しようと頑張る、排除するためにはより没入していくしかないと思うんです。ときには見られることを意識するのも大切なんですけど、大体はそれを取っ払うために作品により没入したり、相手のセリフに集中することをやっていった結果なのかな、と思いますね。
──映像作品で演じるときも、そのアプローチの深さが生かされていると。
そんな気がします。例えば映像でも、カメラで撮られているのにそれがわからないくらい没入できている瞬間ってあるんですよね。映像の場合は「用意、スタート」から「カット」までしか芝居をしないので、瞬発的にそこまで深く潜るのがすごく難しい。やっぱり、役に潜るためには助走が必要だったんですよ。でもそういった部分で、少しずつですが短時間で潜れる率が深まっているような、そんな気がするんですよね。
──舞台が「楽しい」と言われましたが、一番楽しさを感じるときは?
舞台って、同じことを毎日やって、同じセリフを毎日言う。だからこそ、日々の自分の違い、周りの役者さんとの差、前日との変化やテンションの波、そういうものがすごくわかるようになるんですよね。その差はお客様からはわかるかわからないかレベルだったりするんですけど、舞台の上でそれぞれがうまくハマる瞬間があると「今日すごいかったね!?」みたいになる。それが本当に楽しいんですよ。
──『セツアンの善人』も音楽劇ですし、最近はミュージカル作品にも出演されていますよね。舞台で歌うことに関してはいかがですか?
難しいですね……。やればやるほど課題が出てくるといいますか。ただ、私自身は歌がある作品はとても好きなんです。より人に届きやすくなりますし、音楽の力ってやっぱり凄いんですよね。ただ、本当に難しいんですけど(笑)。でも、だからこそ頑張ろうと思えています。
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