FUJIROCK FESTIVAL'24特集 #3
庄村聡泰のフジロック’24滞在記──洋邦どちらのショーマンシップにも痺れたDAY1
2024.09.10 17:30
THE KILLERS ©︎ 2024 Chris Phelps
2024.09.10 17:30
静と動のファンクが並んだ粋な采配
初日からあくせくと移動を続ける。タイムテーブルモロ被りではあったが一目だけでもと思いなんとか間に合ったROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRAではレゲエ調にアレンジされたThe Birthday「涙がこぼれそう」があっけらかんと晴れ渡った苗場の空に鳴らされている。メインボーカルを務めるのはBRAHMAN/OAUのTOSHI-LOW。色々な意味を含むこととなってしまったこのタイミングではあるが、まずは素直に心地よく身体を揺らしつつ、思いを馳せる事とする。終演後にはこれまた突然の訃報となったジョン・メイオールへの思いを此度は全日パレスにてDJとして出演する長男ギャズ・メイオールが語っており、こちらにも無言で思いを馳せる。
続くグリーンステージのアクトは、FRIKO。今年2月リリースの1stアルバム『Where we’ve been, Where we go from here」が各所音楽愛好家達の間で話題となり、SNS上の口コミで大バズり。それから半年経たずしての初来日初フジロック初グリーンステージという異例の事態を巻き起こしてしまったバンドである。広大なステージ上にサポートメンバー含む4人編成の楽器やアンプがぽつねんと佇む様には気取らない形でのパフォーマンスを望んだであろうバンドの心意気を感じるし、2曲目にプレイされた「Chemical」の痙攣気味なアンサンブルには思わず痺れた。
Pailey Minzenberger(Dr)の熱演でバスドラムが動いてしまい、気恥ずかしそうに位置を直す姿にほっこりしつつ、MCではNiko Kapetan(Vo,Gu)が自らの置かれているこの状況に対して「クレイジーだ!」と興奮気味に絶叫。中盤の「For Ella」でNikoがギターを下ろしピアノへとスイッチするとそれを受け取ったPaileyがフィードバックで彩りを添えるという秀逸なコンピプレイも観せてくれた。世界初披露の新曲までをも含む惜しげもないステージング。見逃したという方は是非とも11月に開催される単独公演へどうぞ。
次はROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRA同様、こちらも一目だけでもと苗場食堂にてWINO先輩(筆者は面識ないのだが、[Alexandros]川上洋平がリスペクトを表明する御方なので自分もそう呼ばせていただく)へ。「LOADED」感激しました。本当にありがとうございました。
ホワイトステージに移動し、テンガロンハットにホットパンツという些かアメリカンが過ぎる装いのTEDDY SWIMS。だが彼の歌声が陽が落ちかけるホワイトステージに響き渡ったその瞬間、誰もがツッコむことなど忘れ、その圧巻のパフォーマンスに耳目を奪われてしまったことだろう。音源からしてそらもう雄弁なボーカライゼーションは生声だとより一層の雄弁さであり、それが従えた凄腕のバックミュージシャンたちのプレイと合わさることで更なる凄みをもち、ロックな曲ではオーディエンスに襲いかかってきたり、バラードでは抱きしめられたり、といった趣きであった。テディの旦那はニクいヤツであったのだ。
そしてニクいでいえばバックバンドの面々も同じく所々にフュージョンやハードロックに根差したプレイを巧みに織り交ぜていき、曲のアウトロなどではそのテクニックを存分に披露。特に「Devil in Dress」から「Funeral」への繋ぎでかまされた超絶ドラムソロはホワイトステージ総出での拍手喝采であった。お待ちかねの「Lose Control」はラスト前にプレイされそちらをしっかりと堪能させていただき、ハゲるんじゃねえかと思うほどの強い力で後ろ髪を引かれつつ移動。向かうはフィールドオブヘブンである。
ヘッドライナーのTHE KILLERSは外せまいとして(本当は上原ひろみHiromi’s Sonicwonderだって強烈に観たかったが人類はまだ分身できないのである)、その前まではヘブンに留まり現在進行形のジャズとファンクのコンボをキメることにする。TEDDY SWIMSの装いとはあまりにも対極に位置する爽やかな白ずくめの装いで颯爽と登場したCHIP WICKHAMは最新作のタイトルナンバーでありオープニングナンバーでもある「Cloud 10」からのスタート。しっとりと、そしてたおやかなサックスのブロウに夕暮れどきの風が何ともよく似合う。サポートメンバーの活躍ぶりにも目を見張るものがあり、特にビブラフォン奏者のソロ!あれめちゃくちゃカッコ良かったなあ……。
CHIP WICKHAMの“静”なジャズの後はGHOST-NOTEの“動”のファンク。この落差というか食い合わせの妙にはサイコー!ありがとう!という他にないし、タイムテーブル組みの際に予め仕組まれていたに違いない。全くもって粋な采配である。Snarky PuppyのRobert Sput Searight(Dr)とNate Werth(Per)という超ド級のリズムセクションが主催するプロジェクトであるGHOST-NOTEが超ご機嫌な新作『Mustard N’Onions』を引っ提げヘブンを熱狂の坩堝と化すべくやってきたのだ。
ボーカリストが開口一番「ジャパーン!」と高らかにシャウトし「JB’s Out!(Do It Baby)」で一気にオーディエンスのボルテージを上げる。総勢9名による分厚いアンサンブルの鉄壁っぷりと言ったら、もう他の追随を許さないほどにタイト。ライブ中何度も急速なストップ&ゴー(キメ)が挟み込まれるもこちらの足を止めるような危うさは皆無。なんなら曲に入る際の「1・2•3•4!」の4カウントすらグルーヴィーに聴こえてきてしまったほど。そんな極上の演奏に我を忘れて踊り狂うオーディエンスと俺、あっという間の1時間10分であった。きっとバンドもそうであったのだろう。ラストにRobertが発した「Peace!Love!and Funk!」の言葉が何よりもそれを物語っていた。
次のページ