舞台『みわこまとめ』主演と演出家が目指すエンタメ像とは
山西竜矢×大西礼芳の同世代トーク 新しくも古くもない、自分たちだからできること
2024.08.29 17:00
2024.08.29 17:00
どんな役であっても、画面にいるだけでつい気になってしまう。『競争の番人』『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』『花咲舞が黙ってない』など数々のドラマ・映画で印象を残してきた実力派・大西礼芳が舞台に立つ。
タッグを組むのは、現代女性への賛歌と支持された『今夜すきやきだよ』『SHUT UP』などのドラマの脚本を手がけ、映画監督としても活躍する気鋭・山西竜矢。
山西のベースキャンプであるピンク・リバティの最新作『みわこまとめ』は、恋愛という沼にハマった女の孤独と暴走を、ユーモアとペーソスが入り混じったタッチで描いていく。どれだけ傷ついても、なぜ人は恋をするのか。これは、やりきれない寂しさを抱えるすべての人の物語だ──。
恋愛の不思議さみたいなものに興味がある
──本作は、大西さん演じる恋愛依存の主人公・実和子の物語です。山西さんはこれまでも女性を主人公とした物語が多い印象があります。
山西 小さい頃から女性と接する時間のほうが長かったんですよね。近所も女の子が多くて、男の子とキャッチボールをするより、女の子と漫画を読んでるタイプの子どもで。そういうのもあって、女性のほうが親近感があるのかもしれません。
大西 山西さんは“女性の味方”をしてくれているなという印象があるんですよ。今回もそうですが、決して女性を批評しない。どういう生き方をしていても、どうぞそのまま立っていてくださいと言ってくれるような人だと思います。
山西 あとは、もちろん作品にもよるんですけど、自分が男性だからか、男性を主人公にすると自己批判や言い訳みたいな描写が多くなる気がして、書いてて難しいんですよね(笑)。同じ男性のダメなところを描くにしても、女性の目から言いたい放題言ったほうが良い感じがして、女性が主体の物語を好んで書いているような気がします。
大西 女性が女性自身の立場の低さや不利な部分を語ってしまうと、どうしても主張のように受け取られてしまうところがあって。それが悪いわけではないですが、男性が書くことによってコメディになり得るところがあるのかなと台本を読んでいて感じました。
──恋愛依存というテーマも興味深いです。
山西 僕の作品には、「恋愛」と「死」がよく出てくるんです。たぶん僕にとってこの二つは身近なファンタジーなんだと思います。よく考えたら恋愛って何なんやろなって。どれだけ夢中になっても、終わればその感情は消えてしまう。その不思議さみたいなものに興味があって。日常のことを描いてるのに、結構叙情的なところまで連れていってくれる題材だと思うんです。
──主人公の実和子もそうですが、ボロボロになるのがわかっているのに、なぜ人は恋愛をするのでしょう。
大西 なぜ人は恋愛をするのか。(少し考えて)……居場所を探してる、とか?
山西 いいこと言ってると思う。
大西 どれだけ恋愛に重きを置くかって、人によって違うと思うんですけど、わりとその人の家庭環境とか幼少期の記憶で変わってくるのかなって最近思ったりします。
──実和子はまさにそんなキャラクターですよね。愛情を受けて育っているように見えて、どこかちくはぐを抱えている。
大西 愛されてることはわかるんだけど、親と自分がちょっとズレてるなっていう感覚って、子どもにとって不安要素になると思うし。親からの愛が過剰だったり足りなかったりすることで、そこを補填するかのように大人になってから恋愛の考え方が変わってくるのかなって。
──実和子は男たちから愛されたかったのでしょうか。それとも愛したかったのでしょうか。
大西 結局は愛されたいのかなって思います。(腕を組んで考えて)……ああ、でも愛したかったのかな?
山西 あはは。
大西 私の話をして申し訳ないんですけど、私は愛したいです。
山西 そうなんや。
大西 愛するという気持ちが自分ってもしかしたら人より少ないのかと思いつめることがあって。
山西 思いつめんといて。思いつめんでいいよ。
大西 恋愛にのめり込む気持ちがあんまり私にはわからなくて。だからこそ、そういう経験をしてみたいのかも。
山西 大西さんの言うてることはよくわかります。実和子が愛されたいのか愛したいのかは、明確に決めていなくて。僕自身も、ずっと愛されたい人間やと思っていたけど、そうじゃないのかもしれないと最近思うようになりました。難しいですよね。結局不可分な気がします、愛されたい欲求と愛したい欲求って。
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