本間昭光のMUSIC HOSPITAL 第14回 アユニ・D
大事なのは時代への俯瞰力、アユニ・Dと語る音楽で叶えたい夢
2024.08.21 18:00
2024.08.21 18:00
日本を代表する音楽プロデューサー・本間昭光が、現代のセルフプロデュースに長けたアーティストと音楽談義を繰り広げる対談コラム「本間昭光のMUSIC HOSPITAL」。
今回のゲストはアユニ・D。BiSH解散後に活動を再開したソロプロジェクト・PEDROのフロントマンとして頻繫に全国ツアーを回るほか、各地ロックフェスへの出演、近作ではアルバム全曲の作詞作曲を手がけるなど精力的に活動中の彼女だが、本間とは今回が初対面。2人が語り合う、現代の音楽シーンで生き残るために必要なプロセスとは?
田渕ひさ子は音楽人生の原点であり頂点
本間 ベースはスティングレイを使っているなと思ったんですが、なんであれを選んだんですか?
アユニ BiSHをやっているときに初めて楽器を買ったんですけど、当時の事務所社長(渡辺淳之介)いわく「良いもの、かわいがって一生大事にできるようなものを自分のお金で購入して使いなさい」という指示だったんです。当時の自分には人生で一番高い買い物でしたし、楽器の知識無しで購入したので、今になって思えば大層なことをしたなと思って。
本間 スティングレイって、ネックが太くないですか?
アユニ 太いです。2本目もスティングレイを購入したので、自分はそれしか知らなくて。他のベースを弾くと「うわ、弾きやすい!」って思います。
本間 レコーディングでもずっと使っているんですか?
アユニ そうですね。
本間 それはもうバンドにとっての顔だよね。あれを持った写真がカッコ良かったし、音もスティングレイの音があるし。レコーディングはずっとスリーピースでやっているんですか?
アユニ そうです。でも私なんかは簡単なことしかしてなくて、ギターの田渕ひさ子さんが何本も音を重ねてくださったりするんです。サポートメンバーのパワーにより音源がスリーピース以上になる曲もありますね。
本間 ライブ映像を観たんですが、スリーピースならではの迫力と臨場感があるなと思って。もう代わりの人は考えられないでしょ?
アユニ そうですね。ドラムのゆーまお(ヒトリエ)さんという方も、ボカロなどのインターネット界隈をはじめ本当に経験豊富な方なので手技がすごいんです。本間さんは天月-あまつき-さんとか、MARiAさんの曲を手掛けていらっしゃいますよね? 中学のころからすごく好きでした。ジャンルが幅広いですよね。
本間 なんでもありだからね(笑)。ご縁が広がっていって、最終的には演歌の作曲もやっちゃった。小学校と中学校の先輩が天童よしみさんで、実家から歩いて5分、1回曲がれば天童さん家みたいな。そういう昔からの縁が巡り巡って、それがずっと続いている人生ですよ。ご縁って大事ですよね。だって、田渕さんとやっているのってすごくない?
アユニ そうなんですよ。ひさ子さんと出会った当時は自分の音楽知識が皆無だったので、ひさ子さんがレジェンドだということを知らずでして。そこからひさ子さんのことをたくさん調べて、そこからはもうどっぷり。「この人は神だ!」って。今は自分の音楽人生の原点であり頂点である方になりました。
本間 田渕さんからは何を一番学びましたか?
アユニ ひさ子さんが20年以上前に書いていたコラムとかは全部読み漁って、好きな音楽も聴き漁ったので、音楽面はもちろん学んだんですけど、バンドとしての姿勢やステージでの表現が大きいですね。ひさ子さんって普段は天使のように朗らかな方なのに、ステージに立った瞬間にギターを我が物にして、お侍さんのように鋭いギターを弾いて、でも表情は淡々としていて。ステージでの音楽への魂の乗せ方とかは、傍にいてすごく学びになります。
本間 所作みたいな感じだよね。これが「音楽道」だとしたら、「道」とつくものって、書道だって剣道だって柔道だって、必ず所作があるわけじゃん。だから、そういうひとつの形みたいなものって、実は大事なんじゃないかなと思っていて。アユニさんも映像とのギャップ感が出ていい感じですよ。ステージに立ったときはスイッチがバチンと入っちゃうでしょ?
アユニ それはあるかもしれないです。実生活で言いたいことがあまり言えない性格なので、ステージに立って音楽として伝えていると、強い気持ちになれますね。
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