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INTERVIEW

声優初主演作『クラユカバ』の裏側、講談界への思いに迫る

「好きなものをみんなに広げたい」神田伯山がさまざまなメディアに出続ける理由

2024.04.11 17:30

2024.04.11 17:30

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「ファスト的でないもの」のほうが長年観てもらえると考えている

──お弟子さんができたことで意識の変化はありましたか?

それは大きいです。今弟子が3人いるんですけど、みんな20〜30歳くらい、一番若い子が20歳なんですよ。彼らにはとりあえず講談で食べていけるレベルになって欲しいなと。それだけが望みです(笑)。いやもちろん売れたら売れたで一番いいんですけど、一生懸命な講談師になって欲しい、そういう思いはありますね。全員が売れなくても、みんなが良い講談師になることはできる。そのためには私は彼らにいくらでも力を貸す、私もそうしてもらったから……そういう純粋な思いはあります。だからこの時代、若い子にあんまり言い過ぎちゃうとついてこないよ?って言われてますけど、彼らには細かいことも全部注意していきたい。良くも悪くも“全部を教えること”はできないですから。まあそれで育つかどうかは別なんですけどね(笑)。

──ご自身が弟子入りしたときの師匠を思ったり……?

ただ、うちの師匠(三代目神田松鯉)が私を取ってくださったのは65歳のときで。私は今40歳だから、円熟の背中は見せることはできない。でも彼らは私を選んでくれたわけで、師匠である自分も一緒に成長していくと言いますか、自分も頑張っている背中を見せていく。そういう意識が強いですね。

──ちなみにこういう取材だったりお仕事の話をすぐラジオでされていていつも驚くのですが、そろそろ会う人たちに「ラジオで言わないでください」的なことを言われませんか?

いやー、私にとってラジオはラジオで完結しているんですよ、あくまでも私の中では。だから話していることも“日記”なんですけどね。でも「弁当がしょぼい」みたいなことを喋っていたら地方公演で楽屋にやたらと豪華な弁当が置かれるとかそういうことがあったりして。ラジオで言った事が、実生活に影響するんです。困りますね(笑)。

──影響しますよ!

皆さん真面目に受け取るんですねえ。いや私がだいぶ悪いんですけど。これまた別件の話で、以前、とあるホテルの会で弁当が全然来ないから「外に食べに行きます」って言ったら「もうすぐ弁当出ます」と止められて、でも結局時間までに来なくて。あのホテル最低だ! みたいなことをラジオで言ったら、何年も続いていた仕事が来なくなりました。多分誰か責任者が聞いてたんでしょうね。そういうことを言うときちんと仕事が来なくなるんですね、それは面白いなあと。もちろんあのラジオがあることによって味方も増えるんですけど、どんどん敵が増えていくラジオでもあるんです。普通仕事先の人の悪口は言わないですからね。

──でもそのスタンスは変わらない、と。

ありのまま、という感じです。

──最後に。このBezzyはWEBメディアですが、もし伯山さんがWEBメディアの編集長をやってくれと頼まれたらどんなものをやりますか?

そうですね……今言われて改めて思ったんですけど、自分では今までそれに近い活動をやってきたような気がしますね。私が入門したときって、講談に関する本やCD、DVD、つまりコンテンツが全然足りない状況で。要は講談に興味を持つ人が利用できるインフラがなかったんですよ。それで私はまず第1にインフラを整える作業から入ったんです。だって落語は入門本もたくさんあるしCDも山ほどあるのに、講談はその100分の1くらい。だから今講談界に足りない本は何かを考えて出版したり、CDも売れないと出せないならじゃあ売れるためならどうしたらいいか……を逆算したり。YouTubeのチャンネル開設(「神田伯山ティービィー」)もしましたしね。だから講談に関する最低限必要なところは既に出してきたかなあ、と。講談本は以前より全体的に増えていますね。良い時代です。

そう考えると、私自身の志向としては今良く言われる「ファストなんとか」的なものとは逆に向いているかもしれないです。例えば自分のチャンネルで『畔倉重四郎』という一席30分くらいの読み物を全19席にわたって読むのを載せているんですけど、そういう「ファスト的でないもの」を用意するほうが、長年コンテンツとして観てもらえるのかなあ、というのを最近考えています。

畔倉重四郎「悪事の馴れ初め」(1席目)【全19席】

──伯山さんは何日にもわたって同じシリーズや続き物を読む、いわゆる「連続読み」も積極的にやられますよね。それはそういう目的もある?

それもありますし、そういう長いものを現場で聴くのが今の時代には難しくなっています。でも確実にある面白さを広めたい。コツコツやっていくしかないでしょうね。私のYouTubeではいつでもどこでも観ることができますから、講談の入口はちゃんと開かれています。講談関係ない別のWEBメディアだと誰かが言っていたのですが、芥川賞の選考委員会をどういう風にどういう基準でやってるのか、それYouTubeで観たくないですか? つまり今、クローズドにされてるものをオープンにする。

──それいいですね!

それでいうと「花形演芸大賞」って私が獲った演芸の賞があるんですけど、誰がどう審査してるのかよくわからない。大きくいうと芸なんて好き嫌いのものなので。「M-1」みたいにちゃんと表舞台に立って審査をすることで“審査員自体が審査をされる”ということがない、ノーリスクの人たちを晒したいという願望はありますよね(笑)。あ、だから「演芸評論家を評論するコンテンツ」もいいなあ。いや、ちゃんとしてる演芸評論家の方もいるんですよ!? だから誰がちゃんとしてるのか、ということをお伝えしたい! 演芸に限らず、政治、スポーツ、グルメ、あらゆる評論家を評論するYouTube、こういうのでどうでしょうか(笑)。

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作品情報

クラユカバ

 ©︎塚原重義/クラガリ映畫協會

©︎塚原重義/クラガリ映畫協會

クラユカバ

2024年4月12日(金)全国劇場にて『クラメルカガリ』と2作同時公開
配給:東京テアトル ツインエンジン

公式サイトはこちら

スタッフ&キャスト

【スタッフ】
原作・脚本・監督:塚原重義
キャラクターデザイン:皆川一徳
特技監督:maxcaffy
操画監督:アカツキチョータ
美術設定:ぽち
美術監督:大貫賢太郎
音響監督:木村絵里子
音響効果:中野勝博
音響制作:東北新社
音楽:アカツキチョータ
主題歌:チャラン・ポ・ランタン「内緒の唄」
アニメーション制作:チームOneOne
製作:クラガリ映畫協會

【キャスト】
荘太郎:神田伯山
タンネ:黒沢ともよ
サキ:芹澤優
稲荷坂:坂本頼光
指揮班長:佐藤せつじ
松:狩野翔
トメオミ:西山野園美

【あらすじ】
「はい、大辻探偵社」紫煙に霞むは淡き夢、街場に煙くは妖しき噂…。今、世間を惑わす”集団失踪”の怪奇に、探偵・荘太郎が対峙する!目撃者なし、意図も不明。その足取りに必ず現る"不気味な轍"の正体とは…。手がかりを求め、探偵は街の地下領域"クラガリ"へと潜り込む。そこに驀進する黒鐵(くろがね)の装甲列車と、その指揮官タンネとの邂逅が、探偵の運命を大きく揺れ動かすのであった…!!

1983年6月4日生まれ、東京都豊島区出身。日本講談協会、落語芸術協会所属。2007年11月、三代目神田松鯉に入門。2012年6月、二ツ目昇進。2020年2月、真打昇進と同時に六代目神田伯山を襲名。持ちネタの数は200を超え、独演会のチケットは即日完売。講談普及の先頭に立つ活躍をしている。

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