2024.04.08 17:00
2024.04.08 17:00
劇団四季の最新オリジナルミュージカル『ゴースト&レディ』。開幕まであと1ヵ月となった本作の公開稽古がおこなわれ、これまでベールに包まれていた作品のナンバー詳細や振付、演出の一部がメディアに向けて披露された。
ミュージカル『ゴースト&レディ』の原作は『うしおととら』や『からくりサーカス』など多くのヒット作で知られる藤田和日郎氏の中編コミック『黒博物館 ゴースト アンド レディ』。四季はこれまでも小説や児童向け読本、スタジオ地図のアニメーション映画『バケモノの子』などを原作に多くのオリジナルミュージカルを送り出してきたが、青年誌に連載された漫画を基にしたミュージカルの制作は今回が初となる。
公開稽古が開催されたのは四季芸術センター(横浜市)。日々稽古がおこなわれているアトリエ内に続く廊下には舞台で使用する衣裳や小道具なども置かれ、作品の一端を見ることができた。また、アトリエのドアには原作者・藤田和日郎氏が描いた漫画のカットが複数貼られており、カンパニーのメンバーは毎朝その絵を見て稽古場に入っているらしい。
公開稽古の模様をお伝えする前に、本作の簡単なストーリーを紹介させてほしい。
時は19世紀。ロンドンのドルーリー・レーン劇場には灰色の服を着た男=グレイと呼ばれるシアター・ゴーストがいる。グレイはある裏切りによって命を落とした元決闘代理人だが、生前から芝居をこよなく愛し、ゴーストとなった今も彼が客席に現れる芝居は必ず成功すると劇場街で囁かれている存在だ。ある日、グレイの前にひとりの令嬢が現れ「私を殺してほしい」と彼に頼む。彼女の名はフローレンス・ナイチンゲール(フロー)。恵まれた家庭で育てられたフローは人々を助ける看護の道に進みたいと願うが、家族の強い反対にあらがえず生きる意味を失い自らの死を望んでいた。彼女の願いを最初は拒むグレイだったが、フローが“絶望”の底に落ちた時に殺すことを条件に彼女と行動を共にする。世界はクリミア戦争真っただ中。船に乗りこみ向かった野戦病院でふたりに一体何が起きるのか──。
この日の公開稽古は本作の演出家、スコット・シュワルツ氏の「壮大なアドベンチャー満載の稽古を皆さまにご覧いただくことに興奮しています」との挨拶から始まった(通訳:鈴木なお氏)。ミュージカル『ノートルダムの鐘』の演出で多くの観客から圧倒的な支持を受けたシュワルツ氏が日本の漫画を原作にした『ゴースト&レディ』をミュージカルとしてどう立ち上げたのか、期待が高まる。尚、ここから先は作品の内容に深く触れていくので、その旨ご留意いただきたい。
メディアに公開されたナンバーは3曲。順を追って楽曲や物語の背景をレポートしつつ、稽古場で感じたことなどもお伝えしていこう。
最初の1曲は第一幕第四場「国は責任を取れ」~「走る雲を追いかけて」。戦場特派員・ラッセルが戦地の惨状を報じ、人々の機運が高まる中、女性看護要員団の団長を命じられたフローが仲間の看護婦(当時の呼称)たちとともにスクタリ陸軍野戦病院に向かう決意を歌う楽曲だ。
このナンバーではフロー役・真瀬はるかとグレイ役・金本泰潤らが登場。これから始まる厳しくも意義ある仕事に向けて希望と使命とを抱くフローたち看護婦の凛々しい姿と、それを「ハイハイ」とでも言いたげな顔で見つめるグレイとの対比が面白い。この場面のグレイの佇まいからは『エビータ』におけるチェを想起させられた。
1曲終わったところで演出のシュワルツ氏と振付のチェイス・ブロック氏による個別のノート(改善点をクリエイティブスタッフが当該者に伝えること)が出され、それぞれチェック箇所を再点検する。ここでは特に「走る雲を追いかけて」で乗船前の看護婦たちの視線や動きに対するアドバイスがブロック氏よりあった。
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