2024.02.15 18:00
2024.02.15 18:00
土屋太鳳を主演に迎え、マッチングアプリによる出会いから始まる恐怖を描いた2月26日公開の映画『マッチング』でSnow Manの佐久間大介と共に重要な役を担う金子ノブアキ。
俳優として確かな活躍を見せる一方で、唯一無二のビートを鳴らすドラマーとして、昨年12月にはロックバンド・RIZEの復活ライブも敢行。後継ミュージシャンたちに影響を与え続けている。
役者業と音楽活動について、金子は「共通項ができてきた」と語る。その真意と機微の変遷、表現活動への姿勢に迫った。
俳優の仕事はサポートミュージシャンに近い
──内田英治監督と前から仕事をしてみたいと思っていたとコメントされてましたが、作品をご覧になられていたんですか?
はい、『ミッドナイトスワン』や『全裸監督』がすごく好きです。暗くて、苦しくて、そういうのって大事じゃないですか。苦しい描写に躊躇がないというか。平和じゃないとああいうのって作れないと思うので、表現できるってことがすごく大事だなと思って。なので嬉しかったです。
──オファーを受けたときは思いが通じ合ったような感覚でしたか?
太鳳ちゃんが主演ということで、彼女との共演歴もあったので面白そうだと思いました。内田監督の現場に触れてみたかったという興味がデカいかな。打ち出し方として今回はエンタメ色もあるんですけど、その中で監督のいつも通りのどぎついのがいっぱいあって、そのバランスがいいなと思いました。海外の映画祭とかでもホラー映画で笑いが起こる事があるようで、台湾の映画祭に出品して、実際にそういう反応もあったみたいです。笑いながら見るみたいなのと、どぎついのの二本柱が今回の監督のやり方なのかなと思っています。
──「内田監督ってこういうのも撮るんだ」って思わされる作品でしたね。
やりたかったみたいで。題材も含めて、なるほどと思いましたね。ガラッと変えるのかと思ったら、苦しさもちゃんと表現されていたので意外でした。「こういうの作りたかったんですね」って話をしたのを覚えてます。
──題材の“マッチングアプリ”は、どう解釈するかで撮ったもん勝ちの作品になるというか。
結構前からひな形はあったようなんですよね。ブルーオーシャンじゃないですけど、これから擦り上げていく題材にはなると思います。いいところもいっぱいあると思うんですけど、悪用もできちゃうから、セキュリティも含めてこれから進化していくのではないでしょうか。
──音楽や俳優と多岐にお仕事をされていますが、あらゆることを機械やコンピューターがサポートしてくれるこの社会において、いち人間としての振る舞い方が変わったなんてことはありますか?
年齢感もあると思うんですけど、40代に入ったくらいかな。どうしようもなく自分自身の性質みたいなものが分かって、単純にふわーっと終わりを意識するようになってくるんですよね。僕の周りでも子供が産まれたり、お亡くなりになってしまう方が増えてくるし。突然にそれはあったりするから、そういったことに慣れてくると同時に、自分でも意識が変わってきて。この間まではジェットコースターで言うと登って景色が見えてきたところだったんですけど、ここからは駆け抜けていくんだなって思いましたね。
あと僕はドラマーなのですが、裏方気質でステージでのあり方を表方、裏方双方の目線からみる事が多くて。撮影の現場でもそこの共通項みたいなものができてきました。技術さんとのシンパシーもすごくあるし、「ケーブルさばくのうめえ!」とか(笑)。俳優部っていう部署は、一番近いのはサポートミュージシャンの仕事なんですよね。ディレクター、プロデューサーがいて、オーダーを受けてレコーディングして、お渡しして、編集・ミックス・マスターしたものを見るみたいな。すごく似てるなと思ってから、いろんなパズルがハマっていった感覚になりましたね。たまたまこの仕事が表に出過ぎちゃうっていうだけなんだけど、一つの部署として考えるとサポート仕事っていう感じなんですよね。
──俳優とミュージシャンの相互作用みたいなものも?
できてきたっていう感じですね。最近は蓄積されていく肉体的なダメージの経年劣化もあるので、アクション系を避け始めています。身体が許す限り「ドラム叩きたい」「ライブをやりたい」っていう次元に入ってきてますね。
あとは単純にセリフを発することがすごく楽しくなってきているんです。物理的に、唾液が減ってきて喋りやすくなるんですよ。ナレーションとか長セリフで鍛えられたこともあるかもしれないんですけど、そのすみ分けが具体的になってきたかなと。身体を使うのは全部ドラムにとっておきたいなって考えると、取捨選択が非常にシンプルで。
──具体的な契機はあったんですか?
どの現場だったかな? ある日突然喋りやすくなってたんですよね。現場ではカフェインを抜いて水だけ飲むようにしてたり。以前は現場で珈琲を飲んでたんですけど、飲むと唾液が溜まっちゃって。台詞がいいところで出ないなって悩んでた時期がありました。今はその悩みも解消できて、とにかく喋るセリフに“込める”ことがとても楽しくて。これから年を重ねていくと、そこが重点的になってくるわけじゃないですか。そういうゾーンの入り方をしていきたいなという憧れはすごくあります。
あとは両極で、バンドマンとしてはドカーン!っていうのをいつまでも野蛮に大人げなくやってたいなっていう二つの理想がありますね。だから楽しいですよ、これはできないってことをちゃんと理由をつけて言えるから。きっとどの人の人生に当てはまる話だと思うんですよね。
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