出演中のドラマ『うちの弁護士は手がかかる』や転機作を語る
「36年間で今の私が一番好き」村川絵梨が考える“女優”である意義と矜持
2023.11.24 20:00
2023.11.24 20:00
いつか朝ドラにお母さん役で帰ってきたい
──村川さんといえば『ROOKIES』も忘れがたいです。
私は女子校だったので、男の人がいっぱいいる現場に慣れてなくて。最初はみんなのことが怖くて、当時はあんまり読書とかしないタイプだったくせに、楽屋の隅っこで本を読んでいるフリをしていました(笑)。でも、みんな優しくて、私が年下だったこともあり、みなさんの方から輪の中に巻き込んでくださるようになって、そこからはすごく楽しかったです。
──じゃあ、村川さんの演じる塔子が劇場版で「ずっとレギュラーだと思っていたからよ」とユニフォームを渡されるシーンは、シンクロするものがあったんじゃないですか。
あそこは塔子のために付け足してくれたシーンで、本当にうれしかったです。高校は予定通り3年で卒業できたんですけど、卒業式自体は出られなかったんですね。だから、あのシーンはリアルに学生生活から卒業できたような気持ちでした。
──その後も女優として様々な作品に出演し続けていますが、中でも転機になった作品といえば?
女優としての覚悟を持てるようになったという意味では、『花芯』という映画が大きいですね。当時、私は28歳で、女優の20代後半ってみんな悩むんです。この先、結婚はどうしようとか、中には女優以外の新しい道を目指す人もいるし。私も、きき酒師の資格を取ったのが28のとき。いろんなことに悩んでいて、女優として何かを見つけたいともがいている時期でした。
──『花芯』は瀬戸内寂聴さんの小説が原作。大胆なラブシーンもありました。
やっぱり肌を見せることには、覚悟がいりました。私自身はいつか通る道だと思っていたし、好奇心旺盛なタイプなので通ってみたいと思っていたんですけど。でも、家族が悲しんだら嫌だなと思って。だから、やるかどうか決める前に、一応、親には相談しました。そしたら、「やってこい」って温かく背中を押してくれて。
今振り返っても、20代のうちに通っておいてよかったなと思います。あのときの気持ちと勢いがあるからチャレンジできた作品だし、ずっと心の中で凝り固まっていた何かから脱皮できた。
今、ジェンダーのことがあって、女優ではなく俳優と呼ぶ流れになっていますけど、私は女優という言葉が好きなんですね。これからも女優という人生を歩んでいきたいという決意が決まった作品でした。
──それは、女優という言葉にどんな想いがあるからですか。
16歳のときに事務所の会長に言われたんです、「女優ってどういう字を書くか知ってるか? 女が優れると書いて女優だ」って。きっとそれは演技だけではなく、いろんなことを学んで、素敵な女性になりなさいという意味で。今は、お芝居だけでなく、ライフスタイルもフィーチャーされる時代。私も、生き方も含めて憧れてもらえる女性になれたらなという想いはあります。
──そういう意味でもアグレッシブに人生を楽しんでらっしゃいますよね。インスタを拝見したら、ニューヨークやインドにも1人で旅行に行かれたり。
年々思い立ったら即行動になってきて(笑)。旅は、心が飢えたときに出かけるという感じですね。インドとかまさにそうで。インドに行って何もないわけないなと思って。インドは人がとにかくエネルギッシュ。そんな人たちを見ていたら、小さなことでブツブツ言っていられないなと思ったし。ニューヨークでは到着早々、タクシーでぼったくりに遭っちゃって(笑)。そのときも、「こんなの払えない」って戦って、無理やり下ろしてもらいました。
──たくましいですね。
昔はめちゃくちゃネガティブだったんです。すぐ人のことも嫌いになっていたし。でも、年をとるごとに怒りをパワーに変えるのに疲れちゃって。もっとハッピーに生きた方が人生は幸せだなって気づいてからは、すごくポジティブになりました。
この間も、女友達と旅行中に車がパンクしちゃったんですけど。その車は女友達のお父さんから借りたもので、「お父さんが乗ってるときじゃなくて良かったね。私たちで良かったね」って、彼女のことを励ましていました。
──じゃあ、憧れの女性像に少しずつ近づいている実感も?
ひとつ言えることは、36年間の中で今の私が一番いいなと思います。年齢とか仕事とか、いろんなことが合致してきた感じがして、やっと心から人生が楽しいと思うようになってきたし、自分らしく生きられている実感がある。だから、こんな感じで次の10年も楽しめたらいいなって。
とりあえず仕事が一番好きなんで、この先も仕事はずっと続けたい。今の目標は、今度は朝ドラにお母さん役で帰ってくること。この10年の間に叶えられたらうれしいですね。
──年をとるのが楽しいと言えるのって最高ですよね。
本当にそう思います。来年も『テラヤマ・キャバレー』という舞台があるんですけど、寺山(修司)さんを題材にした音楽劇に挑戦するのも、海外の演出家の方の現場を経験するのも、(主演の)香取慎吾さんとの共演も全部が初めて。経験を積んでいくと、初めてのことって少しずつ減っていくから、これだけ初めて尽くしなのもありがたいなって。いくつになっても、初めてのことに飛び込んでいきたいです!