出演中のドラマ『うちの弁護士は手がかかる』や転機作を語る
「36年間で今の私が一番好き」村川絵梨が考える“女優”である意義と矜持
2023.11.24 20:00
2023.11.24 20:00
マネージャーは、私にとっての道標
──『うち弁』の主人公・蔵前勉は元マネージャー。村川さんにとって、マネージャーさんはどんな存在ですか。
村川絵梨の半分はマネージャーでできていると言ってもいいと思います。それくらい絶対に必要な存在というか。いないと無理ですね。
──もう付き合いは長いんですか。
10年くらいになるのかな。お仕事に関しても、マネージャーが「これは絶対やった方がいい」と言うものに関してはやるようにしています。マネージャーは、いろんな角度から私の新しい可能性を切り開いてくれる人。私にとっての道標です。逆に言うと、身の回りのお世話は求めていなくて。蔵前さんみたいに抹茶フラペチーノを毎日買ってくれるとか、そういうのは必要ないかな(笑)。
──自分では無理だと思っていたけれど、マネージャーにやった方がいいと言われたからチャレンジした作品ってありますか。
たくさんありますよ。最近だと、今年の頭にやっていたミュージカル『ドリームガールズ』とか。世界中で愛されている作品ですし、私が演じたエフィはすごく難しい役。そんなに歌に自信があったわけではないので、やりたい気持ちはあったんですけど、ちょっと日和ったんです、さすがに。
そしたら、マネージャーが勝手に「できます!」と返事していたみたいで。「え〜! 勝手に言ったんだ」って(笑)。
──最終的にチャレンジしようと思った決め手はなんだったんですか。
マネージャーが信じてくれていたからですね。マネージャーには、私がエフィとして舞台に立つビジョンがイメージできていたらしくて。自分には見えない景色を見えている人がいるならやってみようかって。最後はマネージャーの熱意に引っ張られるような感じでした。
──で、実際やってみたら?
やって良かったと思いました。初日のカーテンコールで、お客さんからたくさんの拍手をいただいて。知り合いも「見たことのないものが見れた」と感想をくれて。そう言ってもらえることが役者の醍醐味だし、そんな作品に出会えたことは本当にラッキーでしたね。
──マネージャーからもらった言葉で今も残っているものはありますか。
朝ドラ(『風のハルカ』)のオーディションを受けているとき、私はまだ高校2年生で。実際に決まったら、大阪での撮影になるから、1年間学校に行けなくなる。そしたら3年で卒業するのは難しくなるなと思って、「オーディションやめていいですか」って相談したことがあったんです。
──え! 朝ドラのオーディションを?
そしたらマネージャーから「受かってもないのに、そんなことを考えるのは早い」と言われて、確かにそうだなと。この言葉が結構響いて。以来、やる前からあれこれ考えるんじゃなくて、やってから考えればいいじゃんという精神になりました。
──ちなみに朝ドラに合格した後、学校はどうしたんですか。
受かった瞬間、「やったー!」というより先に「学校どうしよう?」って思いました(笑)。でも最後の1年間は、通信制に切り替えてもらうことができて。平日は大阪で撮影をして、週末、東京に帰る新幹線の中でレポートをまとめて、日曜に授業を受けるという毎日。あのときの私は脳みそが天才だったと思います。台詞もすっと覚えられて。
しかも辛いと思ったことがなくて、本当にずっと楽しかったんですよ。周りの人にも恵まれましたし。何より(大森)美香さんの脚本が面白くて。毎回、脚本が送られてくるのを、単行本の新刊を待つような気持ちでワクワクして待っていました。
──朝ドラ時代の思い出もぜひ聞かせてほしいです。
自分のプロ意識のなさと素人っぷりに笑ってました(笑)。同世代だと(中村)倫也くんとか、木南(晴夏)ちゃんとか、(水川)あさみちゃんがいて。みんなポロポロ泣いたり、すぐ怒ったり、一瞬で役に入り込めるんです。自分と年齢の変わらない人たちがそれだけお芝居ができることに圧倒されていました。
中でも一番背中を見せてもらったのは、渡辺いっけいさん。いっけいさんは、撮影前に早めにセットに入って、必ず小道具を全部触るんです。そこに何があるのかを常に把握することで、お芝居中も自由にセットの中を動き回れる。プロの役者さんってこういうことをするんだなって、日々勉強でした。
──当時の朝ドラは、新人女優を育てる場でしたからね。
本当に育てられた感じです。美香さんからも一度言われたことがあるんですよ。
──その話、ぜひ聞きたいです。
脚本って「だわ」とか「だよ」とか語尾で台詞の雰囲気が変わるじゃないですか。でも、それを役者は平気で自分の言いやすいように変えたりする。私も、そういうことをちょいちょいしてたみたいで。一度、美香さんから「こっちは1文字1文字命を懸けて書いてるんだから、勝手に変えるなんて100年早いよ」ということを言われたんです。新人の私に対する、愛ある叱りですよね。
そこから私も、ここで点を入れた理由はなんだろうとか、しっかり考えるようになって。台本を忠実に守ようになりましたし、作家さんが書いてくれた台詞の中で役を膨らませたいと思うようになりました。
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