2023.10.13 19:00
2023.10.13 19:00
ちゃんと届けることを考えるようになった(かじ)
──確かに今作にはKANA-BOONの遺伝子がすごくストレートに出ている感じがします。改めて聴き直してどう思いました?
えい まずは改めていいなあって思ったし、新しいリリースになるにつれてここが変わっていったよなあみたいな気づきもあったし。昔は普通に聴いてたフレーズだったりフィルだったりっていうのも、「ここめっちゃやばいことしてね?」って今になって気づく部分とかもめっちゃありますよね。昔はただファンだったけど、今は自分もバンドをやる立場になって、これは悲しくもあり嬉しくもありなんですけど、すごく聴こえ方は変わっていたかもしれないですね。
──なるほど。そうやって当時と違う視点で見ることができたから、逆にストレートに自分たちに落とし込めた部分もあったのかもしれないですね。まさにえいくんの言っていた「視野が広がった」ということだけど。
えい 当時は純粋に「いいなあ」って聴いてましたからね。今も「いいなあ」なんだけど、どこかで職業病というか、変に聴いちゃう部分もありましたね。
ふじい 昔はピアノの音とか別に気にしてなかったけどさ、改めて聴くと「あ、ここで鳴ってんだ」とかあるもんね。
えい パンクとかでも実際はやっぱりみんな音源とかしっかりこだわってるなって、ライブとかバンドを続けてきて思いますね。そうやって気づいたことはすごくこの1枚に落とし込まれたなと思います。
──かじくんはこの「青春」を歌った一連の曲が出てきたときにどんなことを感じましたか?
かじ 「こういう感じで行きたいのね」というのは思ったんですけど、それをより聴かせるために、音を変えたりとか、そういうことを考えるようになりました。今まではライブのことだけ考えて、勢いで乗り切っちゃう節もあったんですけど、それだけじゃなくて「ちゃんと届ける」っていうことを考えるようなきっかけになりましたね。
ふじい でも俺、ちょっと気持ちわかる。ずっと言っとるやんか、「聴きやすい音楽を作りたい」って。レコーディングとかでも「自分たちはこうなんだ」よりもお客さんが聴いたときにどうかなっていうのは確かにすごく考えるようになりましたね。
えい でもそれもね、ある種自分の中でプライドは1個折ったかもね。本当に変わらないというなら、筋としてはずっとライブハウスのことを歌うべきなんだよね。でも俺たちが何を理由に音楽を作ってるかっていうのは、1つは聴いてくれる人たちのためでもあるから、そういう意味ではどこかでちゃんと届けなきゃっていうか、バンドに固執しすぎちゃダメだっていうのがあったんですよ。どこかで削いでいった結果がこれで、よく言えば洗練されている、悪く言えば削ぎ落としたっていう感じなのかなって思ってます。
──そうなんだ。でも受け取る側としては何かを折ったとか何かを変えたという感じはまったくないですよ。ただただ研ぎ澄まされたっていうか、結局いちばん何が大事なの?っていうところをちゃんと見るようになったなっていう感じ。だってこれは「せーの」の一発録りでやったわけですよね。それはむしろバンド的だし、洗練とは真逆のやり方じゃないですか。
えい ああ。そういうやり方にしたのはエンジニアさんからの提案だったんですけど。
ふじい 僕らにはなかった発想だった。
かじ 自分らのグルーヴ感とか勢いとか若さとかがいちばん乗る方法だったのかなって思う。
──でもそういう、まさに「青春」を歌った曲だけでこの作品は構成されているわけではなくて。そのあいだに「ガールブレンド」と「コイニオチテ」という恋愛の歌が入ってくるんですが、これは作品全体としてはどういうものにパッケージしようと思ったんですか?
えい これ、1曲ずつ紹介していってもいいですか?
──どうぞ。
えい 「アオトハル」は単純に自分の意思表明というか、自分たちがやりたいことみたいなのが決まったっていう曲で。2曲目の「ガールブレンド」はさっき言った自分のルーツも含めて自由に作ってみようといって作ったんです。誰が聴いても耳に残るような、自分の持っている引き出しからおいしいところだけ集めて作りましたみたいなのが2曲目。で、3曲目「群青謳歌」は自分がやりたかったことのテーマを改めて出してみようっていうので、自分のくすんでいた青春を照らし合わせて書いた1曲です。
──うん。
えい そして4曲目「コイニオチテ」はちょっと皮肉になっちゃうんですけど、TikTokが今主流になって、薄っぺらいもんだったり浅はかな恋愛がすごく流行ってるっていうふうに僕は捉えていて、それに結構俺はイライラしてたんです。でもそういう今受け入れられてるものを改めて見てみて、そういう曲を書いてる友達とも話してみて、結局それが今の現代の人たちに求められているものなんだと納得したし、浅い言葉だからこそ刺さる時もあるんだろうなと思って受け入れたというか。っていうのを逆に皮肉にして……歌詞で〈薄い言葉だけの失恋ソングが/今日はやけに耳に染みて〉って書いてますけど、それも批判しているように見えてじつはリスペクトというか、曲を聴いてみるとそれをまんまやってるみたいな曲になっています。
──そして最後の「こんな僕ですが、何卒」は。
えい これはめちゃめちゃ自分のことを書いた。bokula.ってこんなバンドですっていう名刺というよりは「これがえいです」っていう感じなのかな。
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