今年もフル満喫した庄村聡泰が最も印象的だったアクトは?
フジロック総括1万5000字レポート(後編) 誇るべき日本を感じた2日目夜〜最終日
2023.09.07 18:00
FOO FIGHTERS(Photo : Taio Konishi)
2023.09.07 18:00
(前編はこちら)
さあ、ついにこの瞬間がやってくる。先述の通り筆者の初フジはFUJI ROCK FESTIVAL ’05。他ならぬ『In Your Honor』リリース直後のFOO FIGHTERSを観るためであった。それ以降の来日公演にも足を運んではいるものの、18年ぶりにまた同じ地で、そして奇しくもまた最新作『But Here We Are』リリース直後という縁を感じざるを得ないタイミングで彼らのライブを観られることとなったのである。登場SEはなし。定刻を少しすぎたところでDave Grohl(Vo,Gt)が袖からギターをかき鳴らしつつ勢いよく登場。6人が定位置へ着いたところで歯切れのよいミュートのリフ。「All My Life」だ。新加入のJosh Freese(Dr)が叩き出す重厚感と疾走感を併せ持つドラミングに大観衆が一斉に身体を揺らす。バンドはそのまま「Pretender」「No Son Of Mine」と畳み掛けていく。楽曲は大胆なライブアレンジを施され、演奏はDaveの指揮でストップ&ゴーを繰り返し、合間にセッションやクラシック・ロックのカバーを挟みながら巨大なシンガロングの渦へと観衆を力技で巻き込んでいく。
序盤ではMetallica「Enter Sandman」やBlack Sabbath「Paranoid」。中盤では先に出番を終えたALANIS MORISSETTEを呼び込んで先日訃報が報じられたSinéad O’Connor「Mandinka」。メンバー紹介ではNate Mendel(Ba)がBeastie Boys「Sabotage」。Pat Smear(Gt)がThe Ramones「Blitzkrieg Bop(電撃バップの邦題でも有名)」。そしてJoshがDEVOのメンバーでもあることから「Whip It」。終盤にファーストアルバムからの選曲となった「Big Me」では翌日のWHITE STAGEヘッドライナーであるWEEZERからPatrick Wilson(Dr)が“新しい7人目のメンバー”としてギターで参加するなど、もはや“スクール・オブ・ロック・ザ・ライブ”とでも形容したくなるようなスタイル(笑)。
バンドは「Monkey Wrench」で会場を盛り上げに盛り上げた後、昨年亡くなったTaylor Hawkins(Dr)が1番好きだった曲として「Aurora」をしっとりとプレイ。ラストは万感の思いでの「Everlong」であった。ライブ中フジロッカーの反応が良かったのをすっかり気に入って何度も“For FUJI!!”と連呼していたDave。“新しいタトゥーにするよ”と言っていたが、本当にDaveの身体に“For FUJI!!”は刻まれるのか? 本当にPatrickはWEEZERから電撃移籍するのか? 彼らの今後の展開からもますます目が離せない(笑)。あ、でも日本全土をツアーしたいって話は是非とも実現の方向でお願いします。
初日同様、FOO FIGHTERSの力強いロックですっかり足取りが軽くなってしまった(ハイになってただけともいう)筆者は飽き足らずWHITE STAGEへと移動。昨年の単独ツアーの衝撃もまだまだ記憶に新しいが、やっぱり絶対に楽しいLOUIS COLEを観る。かのThundercatが「I Love Louis Cole」なんて曲を作ってしまうほどの超人ドラマーとして名を馳せる彼。そんなドラマーのソロ名義でのライブとなると、さぞかしそのプレイにフォーカスした、ややもするとマニアックなものと思ってしまいがちではあるのだが、むしろ彼のスタイルはそれとは真逆。自身は短丈ヘソ出しのスーパーマリオパーカーが衣装だわ、バックダンサー+サポートミュージシャンは全てお揃いのホネホネボディスーツだわ、ドラム叩かずに歌うわ喋るわ踊るわギター弾くわルーパーいじるわPCいじるわ、でもってドラム叩いたと思ったらやっぱり超人だわの、持ちうる才能全てを下世話なパーティーへと全振りしたようなステージなのだ(褒めてます)。楽曲も高尚なものなとは縁遠い人懐っこさと踊りやすさに特化したゴキゲンなファンクチューンばかり。ハイになった筆者はますますハイになってしまい、もう少し遊びたくなってしまう。
そんな筆者にとどめを刺したのが先日FLYING LOTUSの主宰するレーベルBrainfeeder(先のLOUIS COLEやThundercatも所属)との契約を発表し、同レーベル初の日本人アーティストとなった長谷川白紙。深夜帯のRED MARQUEEは完全にメーターが振り切れていた。まず単純に、音がデカイ。そしてバックスクリーンに投影されるカオティックな映像も完全にこちらの心身をブッ潰しにかかっている。ハイスピードで繰り出される楽曲の数々、細かくチョップされまくった音の粒がまるで散弾銃のようだ。踊るでもなくただ眼前で繰り広げられる情報量の暴力に身を委ねていると、終盤で筆者が長谷川白紙の音楽に触れるきっかけとなった「草木」のイントロが流れる。これがまたなんと音源よりさらにBPMを上げた狂気のアレンジとなっており”ああ、やっぱりこの人は頭がおかしいに違いない”と思わされた次第。帰りにPLACE ARENAにてSAKURA CIRCUSの命知らずのパフォーマンスでもう一丁の狂気を喰らい、就寝。
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