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関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ! 第15回

仕事に疲れた女性に観てほしい、父親として身も引き締まる『コロンビアーナ』

2023.09.03 12:00

2023.09.03 12:00

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関根勤が偏愛するマニアックな映画を語る連載『関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ!』。第15回は2011年に日本公開された『コロンビアーナ』。

幼少期、目の前で両親をマフィアに殺された少女カトレアは迫り来る追手の手から死に物狂いで逃れ、故郷・コロンビアからアメリカに住む叔父の家に身を潜む。すぐに殺し屋になりたがった彼女を戒める叔父だったが、15年の歳月を経て美しく成長したカトレアは復讐を誓った残忍な殺し屋になっていた。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズをはじめとしたマーベル映画のガモーラ役、さらに『アバター』シリーズのネイティリ役でも知られるゾーイ・サルダナが“素顔”で主演を務めた本作の魅力を関根勤が語る。

関根勤

第15回『コロンビアーナ』

やっぱり復讐モノって面白くて、感情移入できるんですよね。「頑張れよ」って。今回ご紹介する『コロンビアーナ』は主人公の子供の頃から物語が始まるのが良い。殺されちゃうお父さんも結局マフィアで悪いんですけどね。それで両親が殺されて、アメリカに逃げておじさんに保護される。あのキャラが良いんですよ。演じているクリフ・カーテイスも良い俳優で……そんな彼に育てられて、カトレアは立派な女性になる。

最初に驚いたのは、彼女がわざと酔っ払ったふりをして車両事故を起こして留置所に入るシーン。酔っていると思いきや、颯爽とカツラを外して目的を遂行するんです。あんな凄いもの、久々に見ましたね。施設内をめちゃくちゃ把握していて、『ミッション:インポッシブル』のトム・クルーズみたいって思いました。

ただ、結局叔父さんは彼女に「生き延びたんだから、適当なところで暮らしなさい」って言っているのに、父への愛が強かった故に復讐が行き過ぎちゃうんですよねえ。やりすぎちゃうんです。自分の証拠をわざと現場に落とすような、危険なことをする。おじさんにも注意されますが、結局その彼女の行為がまた悲劇を生んでしまうわけです。彼女の宿敵であるマフィアのボスもすごく嫌な顔をしていて、全体的に良い役者を使うなあと感じました。

とにかく主演のゾーイ・サルダナがかっこいい。彼女もいろんな作品に出ていますよね。彼女の素顔が見られて、アクションシーンが堪能できるところが本作の魅力です。

『コロンビアーナ』よりゾーイ・サルダナ(写真:Interfoto/アフロ)

僕は本作が単なる復讐モノではなく、娘が父のために暴走してしまって、結局は親の因果が子に影響して幸せになれないっていう物語が響きました。「やっぱり親はちゃんとしなきゃいけないな」って(笑)本当に子供は関係ないのに、引き込まれてしまうから可哀想なんですよ。

特に今回の場合は「娘の父親への愛」がキーだなと感じていて、これが女性主人公だからこそと言いますか、男性主人公の復讐モノとは少し違うところです。やはり娘と父親の関係性って、息子と父親の関係性とはちょっと違うんですよね。僕、息子がいないからわからないけど、息子ってやっぱり自分の後ろ姿を見せて「俺みたいな男らしい男になってくれ」、あるいは「俺を超えてくれ」っていう父の思いが託されると思うんですよ。しかし、娘にはそういうのがなくて、「とにかく幸せになって」しかないんです。“ファンタジー”に近いんですよ。とにかく幸せに暮らしてくれ、って。「男は頑張れ」って父親は見るけどね。そう考えるとやはり本作で小さい時に娘のカトレアを逃したお父さんは、本当に逃げて欲しかったんだなあと感情移入できる。そして本作はやはりあの少女を演じた子役のアマンドラ・ステンバーグの存在感がとても魅力的で良いんです。そして大人になる転換シーンが、急にあの酔っ払って突っ込むシーンだからインパクトがものすごい。彼女の素顔からじゃない、あそこの演出は上手いですね。

子供の頃から敵を取りたい、という憎しみを抱えて育ってきた。その15年間という時間があるのも哀愁なんですよ。そして彼女に戦いを教えた叔父さんは、教えたことを後悔するようになっちゃって……。大人が家族を失うリベンジとは一味違って、子役を上手く使っている。そういう意味で本作は『おしん』と同じなんですよ。小林綾子さんを散々見せているから、田中裕子さんになっても、乙羽信子になってもずっと観ていられる。あれ、田中さんからの物語だったらあんなに視聴率取れていないと思いますよ。僕も見ていなかったと思う。

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作品情報

コロンビアーナ

コロンビアーナ

2011年製作/108分/PG12/アメリカ・フランス合作
原題:Colombiana
配給:ショウゲート

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スタッフ&キャスト

監督:オリビエ・メガトン
製作:リュック・ベッソン、アリエル・ゼトゥン
脚本:リュック・ベッソン、ロバート・マーク・ケイメン
音楽:ナサニエル・メカリー

出演:
ゾーイ・サルダナ
ジョルディ・モリャ
レニー・ジェームズ
アマンドラ・ステンバーグ
マイケル・ヴァルダン
クリフ・カーティス

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