関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ！ 第14回
実話に基づくストーリーとマ・ドンソクの迫力に痺れる『犯罪都市』
2023.06.25 12:00
2023.06.25 12:00
関根勤が偏愛するマニアックな映画を語る連載『関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ！』。第14回は2018年に日本公開された『犯罪都市』。
中国マフィアのボスが手下を連れて、借金の回収を目的にソウルにやってきた。あまりの暴力的な彼らのやり方によってソウル市内の暴力団組織との抗争も激化。そんな中、ソウルのチャイナタウンを管轄とする刑事が、地域の平和を守るために一斉検挙を計画する。マーベル映画にも出演したことで世界的に人気が高い俳優、マ・ドンソクを主演に迎えたシリーズ第1作目となっている本作の魅力を関根勤が語る。
第14回『犯罪都市』
今回『犯罪都市』を紹介するのは、前回の『蘇える金狼』松田優作を紹介したように、やはり本作でも主演のマ・ドンソクを見てほしいからですね。松田さんが昔の伝説だとしたら、ある意味で今の伝説はマ・ドンソクと言っても過言ではない。今のアジアであれほど体の大きい俳優さんってあまりいないですよね。あと顔がいいんですよ。松田さんもそうだけど、ハンサムのようでハンサムではないんです（笑）。ちょっと怖いんですよ、顔が。あれで例えばジョージ・クルーニーのような顔だったら話が違ってくる。あの苦虫を噛み締めたような表情がいいんです。そしてなんと言っても強靭な肉体！今回は刑事役ですが、マ・ドンソクがヤクザを演じている『悪人伝』も凄い作品なので、おすすめです。
さて、『犯罪都市』は悪役の黒竜組（チャイニーズマフィア）の3人がとにかく悪くて、無茶苦茶なんですよ。劇中にクラブで暴れまくるシーンでは、支配人の手を斧で切っちゃうし。よくいろんな作品に出ている俳優さんが出演しているので、端役でも本当にうまい方が演じている。そういう意味だと前回紹介した『蘇える金狼』に近いものがあるかもしれないですね。
物語の魅力としても、やはり悪役が凄ければ凄いほど面白いんですよ。本作の悪役であり、中国マフィアのボスを演じるのはユン・ゲサン。彼が演じているから、かっこいいんです。韓国側の暴力団のボスも軽くやっつけてしまうくらい強い。そして、それに対抗するマ・ドンソクですよ。二人の迫力のぶつかり合い、ここが本作の最大の魅力ですね。ユン・ゲサンは女性人気も高いんです。僕、『犯罪都市』を映画館に見に行ったとき女性のお客さんが多くて驚きました。そしてユン・ゲサン演じるチャン・チェンの部下で血気盛んな坊主頭のウィ・ソンラクを演じたチン・ソンギュ！ あの俳優さんは『エクストリーム・ジョブ』（2019年）でめちゃくちゃ良い人の役を演じていて、どっちの役も演じられるタイプなんです。実力派俳優が集まっているので、まあ演技が素晴らしい。そしてコメディ要素もあるから面白いんです。
韓国のクライムサスペンスは、やはり気性が激しいんですよね。欧米の作品だとピストルが出てくるけど、韓国は包丁や斧、ハンマーなど日常生活にあるものが武器として登場するから、より現実的でちょっと怖いんですよ。あと、近接戦闘も多い。本作のクライマックスの空港でのバトルシーンなんて、物をとにかく壊してぶつけて凄いですよ。とにかくアクションが見どころではありますが、何より本作は実際に起きた出来事に基づいているんです。その実話性、そして外部からくるマフィアを排除しなければいけない警察側の苦悩、それが面白かった。これまで僕がこの連載で紹介した韓国映画は悪い奴がいたとして、そのさらに悪い奴が登場する作品が多かったですが、本作は明確に善の立場が存在する点でも一味違います。“やはり正義が勝つ”という話なんですよ。
韓国と中国の暴力団抗争に巻き込まれつつ検挙を狙う警察の様子を観ていると、上は「早くどうにかしろ」とか口ばっかだし、「ああ、やっぱりどこも現場が一番辛いんだな」っていうのがわかるのも面白い（笑）。「警察24時」がお好きな方には、まずおすすめしたいですね。コメディ要素もあるから、どんな人でも観やすいと思いますが、格闘技好きな人には特に痛快なので観ていただきたいです。
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