1stアルバムにみるバンドの“今”を砂原良徳×LEO今井が語る
「結果いい形になった」TESTSET、想定外を選んだ先の想定内
2023.07.12 18:00
2023.07.12 18:00
高橋幸宏のドラムは体に染み込んでる
──永井さん楽曲は「Stranger」?
LEO あと「A Natural Life」ももともとの発信者は彼ですね。
──この最後のブロックの曲でムードが変わりますね。
LEO うん。私が改めてこの完成したアルバムを聴いた時、前半が割とテクノ色が強くて、後半はどんどんどんどんロックバンドっぽい要素が入ってくるっていうふうに感じましたね。
砂原 そういう風にしようと思ったわけではないのではないですけど。
LEO ではないですけど、そうなりました。で「Stranger」は、私は永井くんが1曲リードボーカルをとる曲があった方がいいんじゃないかなと最初から思っていたんですけれども、それを彼にはっきり伝えたわけでもなかったんですが、彼もそういう気はあったみたいで。「1曲自分で歌いたい」っていうのがあったから、結果すごい良かったです。
──ドラムのフレージングに幸宏さんを思い出しました。
砂原 あ、そうですか?
──個人的な幸宏さん像かもしれないですけど。
砂原 僕はやっぱり高橋幸宏のドラムは相当体の中にあると思うんですよ。もう自然になんかやると──まあ僕ドラマーじゃないんで、打ち込むことになるんですが、割とこういうのを人にやってって言ってもまあ幸宏さんっぽくはなりますよね、やっぱり。そういうのばっか聴いてきたから(笑)。もう染み込んでしまってる感じですよね。で、白根さんも幸宏さんっぽいフレーズで叩くと、「あ、もうすげえぽかった」っていうのはすぐわかるし。まあ白根さんは根本的には幸宏さんのグルーヴとだいぶ違うけどね。
LEO そうね。グルーヴは。でも影響は。
砂原 影響はあるね。
──先行配信された「Moneyman」は強い曲だなと。歌詞の皮肉も効いていて。
砂原 これはもう僕は自然に出ちゃったものですね。ただなんかこう、キャッチーなものを作らなきゃいけないなあっていうプレッシャーの中から(笑)出てきたもので。どうなんだろうな?やっぱりまあ80年代の音を一番聴いてますからね。こういうのを作りたい、80年代を音にしたいと思ってやったわけではあんまりないんですけど。
──LEOさんは歌詞を書いたりとか歌っていく過程で「Moneyman」はどういう曲だなと?
LEO この1曲だけ早くマスタリングして完成させたんですよ。先行配信のあれで。そして家で聴いてて、ちょっとウルッと来ちゃったんですよね。
砂原 それがなんでなのか(笑)。
LEO 「俺どうしちゃったの?」みたいな。なんか歌詞を聴いてて、これ歌詞もすごい良く書けたんです、自画自賛になっちゃいますけど。で、メロディは基本的に砂原さんなんですよ。サビのとことかメロディはすでにあって、なんか自分の歌がこんな綺麗なトラックに乗ってて、「頑張った甲斐があったなあ」と。
砂原 そういう「ウルっときた」?
LEO とか、とにかく美しいなあって思って、ちょっとウルッと来たんです。たぶん疲れてたと思うんですけど。
砂原 疲れてたか酔ってたかどっちか(笑)。
LEO ははは。
──LEOさん作曲の「Tsetse」は歌詞にある寄生虫の一人称がリアルでなかなか怖い。
LEO あ、そうそう。これはね、そういうちょっとバイオレンスな歌詞っていうかね。これが一番メッセージ性も現実に基づいた何も特になく、“ゔゔゔゔ〜〜!”みたいな感じの歌詞ですね。楽しんで書いてるだけ。
砂原 曲のちょっとカオスな感じのアレンジとさ、サビのコントラストがすごいいいと思いますね。
LEO ちょっとイギリスの2ステップっぽいのが今になって懐かしさも感じるから。当時はガレッジとか言われてた音楽を聴くと「何これ?チャラ〜」みたいな感じだったんですけど、今聴くと懐かしいし、まあチャラいはチャラいんだけどカッコよさも感じて、「これが一時期流行ったのもわかるな」みたいな感じで、最近聴いてたんです。で、それをアグレッシブな歌詞と合わせたらどうなるかな?っていう。
──1曲1曲の話してるとより思いますけど、かなり幅があるアルバムですよね。
砂原 幅、結構ありますよ。でも幅がある中に共通したものがなんかありたい、アルバムとして成立させるにはそういう要素がいるなと思って。幅はあるんですけど、それができてるから、通して違和感なく聴けると思うんですね。
──何でしょうね、その一貫性みたいなものって。
砂原 いろいろあるんだと思います。例えばまあ彼のね? 歌とかももちろんその要素の一個だろうし、永井くんのギターも白根さんのドラムも僕のこの打ち込みもなんでしょうけど、ちょっと言葉に出して「これです」っていうのは難しいんですけども、すごく複雑に微妙なバランスでそれが成立してるんじゃないかなと思ってるんですけど。もうカテゴライズはね、“ぽい”っていうのは言えてもちょっと難しいものにはなってるよね(笑)。
LEO うん。
──聴いてる人の年齢とかどういう音楽を通ってきたかによって聴こえ方も違うでしょうし。
砂原 うん、そうですね。若い子にどういうふうに聴こえるのか知りたいところですね。
──確かに。ところで今回タイトル『1STSET』に使ってらっしゃるフォントですけど、ロシア構成主義っぽいですね。
砂原 ああ、そういう見方をする人がいるんだ。LEOくんはゲームっぽいっていう。
LEO ゲームのピクセルというふうに思った。
砂原 あと読めない人がいるんですよね、これ。ここの黒いところ見ちゃって。
LEO “トフトフ”。
砂原 (笑)。そのだまし絵感が僕は好きなんですけども。