本間昭光のMUSIC HOSPITAL 第9回 小林柊矢(前編)
小林柊矢が『柊』に込めたストーリー、愛を直球で伝える勇気とこだわり
2023.03.03 12:00
2023.03.03 12:00
アレンジャー、プロデューサーとしてJ-POPのヒットソングを数多く手掛けてきた本間昭光の対談連載「本間昭光のMUSIC HOSPITAL」。本間氏のプライベートスタジオを舞台に、現代のセルフプロデュースに長けた若手アーティストとの音楽談義が展開される。
今回招いたのは、ノスタルジックかつ叙情的な楽曲で幅広い年齢層に支持されるシンガーソングライター小林柊矢。2月15日(水)にリリースした1stフルアルバム『柊』では、さまざまな”愛”をテーマにした楽曲が並んでおり、アレンジには本間やトオミヨウ、鳥山雄司、soundbreakers、GRPといったJ-POPシーンを牽引する面々が参加している。
今回はその『柊』を再生しながら取材を実施。アーティストとして、そしてひとりの人間としての小林柊矢を現時点で最も表す楽曲集の聴きどころや制作の裏側を語り合ってもらった。
本間昭光(以下、本間) どうですか、アルバム『柊』を通して聴いてみて。
⼩林柊矢(以下、小林) 先にリリースしていた「白いワンピース」「レンズ」「君のいない初めての冬」とかもこうやってアルバムに並べてみると、ストーリーがあって、聴き方が変わるというか。
本間 シングルをアルバムに入れるって非常に難しい部分があって、そこが突出してしまいがちになるんだけれども、小林くんのアルバムは全部強い曲だから良いね。
小林 人間の弱さを書いていることが多いので、統一感ある感じになるんですよね。
本間 やっぱり感動した?
小林 感動しました。実際ショップに行ってCDをぎゅっと握るとまた実感するというか。
本間 ショップにポップが立っているのを見たりとかもね。1stアルバムって当然のことながら1回しかないからね。よかったね、無事出来上がって。
小林 無事、ギリギリで完成できましたね。
本間 昔ならありえないスピード感だよ。昔はだいたい4ヵ月前には完成しないといけなかったから。
小林 現代に音楽やっててよかったです。
本間 デジタル時代だからこそできるものもあるし。録音から発売まで短くはできるけど、結構手間はかかる。1曲ずつの思いってどうなの?「はじまり」から。
小林 アルバムの始まりっていうのもありますし、ライブの登場の時でもかけたいなと思って。1stフルアルバムだから、僕の道が新たに始まるという意味を込めてつけました。ストリングスバージョンとストリングスを入れないピアノソロバージョンっていうのを作っていただいて。静寂の中から音が現れて始まるみたいなそういうイメージがあったので。こだわりもある曲になりましたね。
本間 メロディも鳥山雄司さんなんだね。
小林 他の方に作曲していただくのが初めてなんですよ。すごい新鮮ですね。
本間 「はじまり」は美しいメロディですね。
小林 僕が歌わずとも、登場で流れただけで泣いちゃうんじゃないかっていう。
本間 2曲目「愛がなきゃ」で一番伝えたいことってなったら?
小林 サビの一行目の“愛がなきゃ 愛がなくちゃ”。僕の周りのスタッフさんやファンのみなさん、家族。僕は曲を作ってただ歌うしかできないけど、いろんな方たちの愛に支えられて、こうやって1stフルアルバムをリリースできてるっていう。みなさんの愛を受け取って息をしてるんだって伝えたいですね。
本間 「愛」ってちょっと難しいテーマだと思うんですよ。「LOVE」ではないじゃないですか。人生で、一番愛を感じた時って?
小林 母親に音楽で食っていくんだって決意を言った時に手紙を書いてくれたんですよ。自分が決めた道を歩んでいきなさい、って。その手紙今も部屋に飾ってあるんですけど、見るたび勇気をもらうというか、愛が詰まってるなって。
次のページ