2023.02.05 12:00
2023.02.05 12:00
私にしかないものを信じられるようになった
──今回、作品の題字を穂志さんが書かれたと聞きました。
藤井道人プロデューサーの意向でと伺っています。莉奈を呼び起こして、莉奈のトーンで「生・き・て・て・ご・め・ん・な・さ・い」と、一字一字つぶやきながら。映画のタイトルになるということで、何回も何回も書いたので、机の上が“生きててごめんなさい”と書かれた紙でいっぱいになりました(笑)。
──修一役を演じた黒羽さんとの共演はいかがでしたか?
私とはやってきたお仕事が全然違うので、発声のコントロールや、基本的なところも含めて羨ましいなと思っていました。でも黒羽さんは、常に何かを模索し続けている感じがして、「どんどん変わっていきたい」と、もがいているようにも見えて。もちろん、今までの黒羽さんのペースでもやっていけるのに、あえてそこを壊していくようなところがすごく素敵だなと思いました。
──合間にはどんなお話を?
ずっといい距離感でいてくださったので、「寝れてる?」といった日常会話です(笑)。あとはメイクさんが黒羽さんと同郷だったので、黒羽さんの高校時代のお話を聞いたりもしました。壁を作る方なのかなと思っていたんですけど、すごく親しみやすい方でした。
──印象的だったエピソードはありますか?
莉奈が泣いてトイレに閉じこもるシーンの時に、カットがかかった後も(次カメラが回るまで)役の感情を切らさないために、泣きながら黒羽さんに抱きついていたんです。驚いているだろうなと思いながらも、黒羽さんなら、そんなアプローチも受け入れてくれるだろうと思ったし、実際に受け入れてもらえました。
──感情をキープするために。
そうですね。あのシーンのお芝居はエネルギーの渡し合いだと思っていて、次のカットで、より2人のエネルギーを強く感じたかったので、物理的に接触をさせてもらいました。
──この作品は“他人を認める”というのが一つのキーワードになるかと思いますが、穂志さんはご自身と周囲を比較してしまうようなことはありますか?
私も「認められたい」という気持ちは強いし、だからこそ嫉妬もしちゃうほうだと思っています。でも、27歳くらいになると、折り合いもつくようになるんですよね。もう少し若い頃は「何で?」みたいな気持ちばかりだったんですけど、みんな持ってるものが違うし、生い立ちも、顔も背格好も違うので、外見的なところも含めて比べられないもの、「彼女にしかないものがあるなら、私にしかないものもあるんだろうな」と信じられるようになりました。
──そう思うようになったのには、何かきっかけが?
徐々にですかね。もちろん今でも苦しい時はありますけど、明らかに持ってるものが違うんだなと、おのずと気づいていくといいますか。『街の上で』という映画の時は、そこまで腑に落ちていなかったので、観ていただいた方の中から4人のヒロインのうち“誰推し”みたいな話が出たりすると、すごく傷ついたりもしていました。でも今は、そういったことも全然気にならなくなりましたね。
──この数年で、かなり変化があったんですね。
それまでは年齢をすごく気にしていた自分がいたんですけど、30代の先輩たちにいい背中をたくさん見せていただき、段々と「若くないと価値がない」というところから抜け出せた気がします。そして、次は何ができるかな、と視野が広がりました。以前は「どうしよう、もう若くない」という思いで頭がいっぱいだった部分もあったので、そこから抜け出せたというのが一つ大きいと思います。
──2021年から2022年にかけて、バンクーバーに滞在されていたことも大きいですよね。
それも大きいと思います。私が演じた役の設定が19歳だったんですね。他にも30代の方が20歳の役をやっていたり、年齢に関係なくチャンスの機会が開かれていました。バンクーバーでは「あなたが何歳でも関係ない」と普通に言われるし、むしろそんなことは誰も聞かない。何歳であろうと関係ない、という空気はすごく居心地がよかったし、いい雰囲気に触れることができたと思っています。
──これまでお話を伺ってきて、穂志さんの持ち味の一つとして「行動力」を感じたのですが、その源はどこにあるのでしょうか。
帰国してからは、もちろん周りのことも大事だけれど、「私の人生だから」と思うようになりました。やらないで後悔するよりも、やって後悔したい。モヤモヤしてるくらいなら、気持ちがまとまっていなくても伝えたいと思うようになりました。いい意味で、周りの目を気にしなくなってきているのかなと思います。