2022.12.16 18:00
UA 2022年11月26日 昭和女子大学人見記念講堂公演より(撮影:田中聖太郎)
2022.12.16 18:00
理想的なバンドと届けられた先鋭アレンジ
「みなさん、ダンスしたくないですか? みんなの声も聴きたいわ。よかったら踊ってね。」登場するなりUAが観客たちにそう呼びかけて始まったこの日。オープナーは『Are U Romantic』から2曲目のリードとなった「お茶」で、1階席の人たちは立ち上がり、UAとコーラスのふたりの動きに合わせてお茶ダンス。あたたかで柔らかく、開始早々幸福感が広まった。曲後半のUAのラップもいい感じだ。そして2曲目で一気にムードチェンジとなり、早くもここで驚かされた。それは『ATTA』収録の「愛の進路」だったのだが、まるで別曲のように大胆なアレンジが施されていた。70年代後半~80年代初頭のニューヨークパンクを想起させる性急でタイトなビートがかっこよく、そのあまりに鮮やかな再構築っぷりに自分の体内温度は一気に上昇した。「スカートの砂」もまた斬新なアレンジで別曲のようになっていた。オリジナルは夏向きの明るい曲だったが、それとは真反対で不穏さが伝わってくる。リズムを変えるとかその程度のことじゃなく、歌詞の意味さえ変わってしまうくらいに根本的に構築し直す、その思い切りはUAだからこそで、普通はなかなかここまで変えられない(ここまで変える勇気がでない)。「アイヲ」に続いて歌われた「JAPONESIA」は、UAと神田智子とイガキアキコ、3人揃っての独特の踊りも惹きつけるもので、曲自体が次第に躍動。「Lightning」(『SUN』に収録)は音源よりもっとネオソウル的な感触のアレンジになっていた。
「『Are U Romantic?』ツアーの、今日が最後の夜です。ベストパフォーマンスを目指すので、気を送ってください。」そんなMCを挿んでからの第2ブロックは、『Are U Romantic?』収録のソウルバラッド「Okay」でスタート。歌唱も実にソウルフル。ホーンの音はプリセットしたものが鍵盤から鳴らされていた。続いてイガキアキコのヴァイオリンが美しく活きる「踊る鳥と金の雨」、そして「閃光」。最小限の音数であるだけに、一音一音に説得力があり、UAの歌唱表現の個性も際立つ。初期のヒット曲「リズム」はそれこそドラムとベースのリズムが強度を持ち、モダンなダンスサウンドとなってカラダを揺らしにかかる。ビリー・ジョエルの「ストレンジャー」のような鍵盤音で始まって一気にテンポアップしたのは「数え足りない夜の足音」で、これも20年以上前の曲でありながらも鳴りは2022年的。とはいえ朝本浩文のプロダクションのよさも残して活かされていた。続いて『Are U Romantic?』から「Honesty」。ここではメンバーみんながパーカッショニストになったかのように、それぞれの楽器で様々な音を鳴らす。即興の妙。伴奏と歌という関係性ではなく、それぞれの音がUAの発語に頷いたり言葉を挿んだりしているかのようだった。
ここで演奏は一旦休みとなり、オーディエンスとのコミュニケーションタイムに。「やっほ~~」を最もロングトーンでいけた女性をステージに呼び、UAとお茶を飲んで話をするという「うーこの部屋」の時間だ。そのユル楽しいひと時が終ると、本編最後のブロックに突入。演奏が始まれば途端にビシッとかっこいいUAになるわけで、自分でも言っていたが、そのギャップがすごい。ブルージーな「雲がちぎれる時」、そして「みなさんは平熱ですか? そりゃそうだよね(笑)。熱い歌をうたいます。」と言って始まった「情熱」。そこではアコギもいいアクセントになっていた。
次の「プライベートサーファー」は1月の「25th→→→30th anniversary Live!!」のアンコールの最後にも歌われたが、その時同様、音源とは別曲と言っていいほど激変されたアレンジ。オリジナルはゆったりしたレゲエだったが、壮大なバラードになっている。コーラスのあり方はゴスペル的とも言え、UAは祈りを込めるようにエモーショナルに歌っていた。それはもう感動的。「ねえ誰か この世界を全部洗って」「もう2度と戻れない今日を 無駄にしないで」「またいつか ここで遭おうよ」「ねえ誰か この世界を全部笑って」。その歌詞は、パンデミック以降のこの世界、この地球に対しての祈りのようにも思えた。「みんなで、心の中で地球にありがとうと……」とUA。90年代の終わりに彼女がどんな気持ちでこの曲を書いたのかは知るところではないが、そこでの言葉が2022年に怖いほどリアルに、重く心の中に入ってきた。そしてUAと神田智子とイガキアキコの揃いのダンスが目を喜ばせる「AUWA」から「TIDA」へ。演奏の熱量がどんどん高まり、グルーヴが強度を増し、ひとつのピークへ。そこからア・カペラっぽく曲が展開し、UAの「Are U Romantic?」の一声で本編が幕を閉じた。
アンコールは、今年のフェスなどのオープニングで多く歌われもした「太陽手に月は心の両手に」。西田修大があのギターリフを弾けば一気に開放的なムードになって、1階席の観客たちもカラダを揺らし出す。途中でディスコっぽい感覚が増し、ダンスするUA。照明の光も曲の躍動を煽る。「また春や夏のフェスでも会いたいと思ってます。」そう言ってから最後に歌われたのは『Are U Romantic?』のリード曲「微熱」で、ハッピーであたたかなヴァイブスが会場の隅々にまで広がっていった。新作『Are U Romantic?』の楽曲群はこのように、固めて歌われるのではなくいろんな場所に散りばめられて歌われたわけだが、それらはみな過去の楽曲と自然に混ざり、繋がっていた。過去曲だとか新曲だとかいう分け隔てがなく、UAはここで演奏された全ての曲を2022年の今の自分を表現する歌として捉えていたということだ。よって20年以上前の曲からも新しいイメージ、景色が広がった。UAは今、そうして見せることに意義を感じ、それを楽しんでいる。
その「楽しんでいる」というところが肝心で、先鋭化されたサウンドであっても、どの曲も外に開かれていて、UAは実に気持ちよさそうに音に乗って歌っていた。大らかで、ポップで、外に開かれている、そんなモードのUAはやっぱり最高にステキだ。この超理想的なバンドと共に、2023年も新しいポップミュージックを届けてくれることを期待したい。
セットリスト
UA『Are U Romantic?』ワンマンライブ
2022年11月26日 東京・昭和女子大学人見記念講堂
1. お茶
2. 愛の進路
3. スカートの砂
4. アイヲ
5. JAPONESIA
6. Lightning
7. Okay
8. 踊る鳥と金の雨
9. 閃光
10. リズム
11. 数え足りない夜の足音
12. Honesty
13. 雲がちぎれる時
14. 情熱
15. プライベート サーファー
16. AUWA
17. TIDA
EN1. 太陽手に月は心の両手に
EN2. 微熱