2022.12.16 18:00
UA 2022年11月26日 昭和女子大学人見記念講堂公演より(撮影:田中聖太郎)
2022.12.16 18:00
11月に『Are U Romantic?』東名阪ワンマンライブを行なったUA。その最終となる11月26日の東京・昭和女子大学人見記念講堂公演を観た。
2022年は8月にブロードウェイミュージカル『ジャニス』があり(UAはアレサ・フランクリン役で出演)、11月23日(人見記念講堂公演の3日前)には奄美島唄の唄者(ウタシャ)である朝崎郁恵と銕仙会能楽堂本舞台で共演。ソウル、民謡と、音楽の種類が変わって発声の仕方が変わろうとも魂で歌うことに変わりはなく、むしろそうして表現の様式をまたいでいくことで自身の可能性を探り、広げ、確認し、楽しんでいる、そんな2022年のUAがいる。いや、“2022年の”ではなく、これまでもUAはずっとそうしてきたわけで、その姿勢がブレることなどなかった。そしてポップミュージックを歌うUAのライブの最新型とも言える今回の『Are U Romantic?』ワンマンライブを観て、またそう思った。
ポップミュージックと一言で言っても、UAのそれにはR&Bにエレクトロにロックにワールドミュージック的なるものにといろんなエレメントが入り、合わさっている。曲によってというだけでなく、1曲のなかで異なる様式へと展開していく曲もある。ジャンルのひとつを頭につけて何々シンガーなどと言うことの無意味さはとっくに理解しているつもりだが、それにしてもUAが曲によって(あるいは1曲のなかで)変化する多様な音楽ジャンルに柔軟かつ自由にノッていけるシンガーであることには毎度驚かされるし、今回もそれに唸らされた。
時期によって、R&B成分濃いめ、ジャズ的インプロヴィゼーション多め、ポリフォニー要素強めといったふうに、どこかに彼女の関心がグッと向き、それがパフォーマンスのありように反映されてきたこれまでのUAのライブだが、では今のUAの関心はどこにあり、何を突き詰めようとしているのか。今回のライブで自分が感じたのは、何かひとつではなく、これまで彼女が好んで聴いてきた多様な音楽に自由にアクセスしながら、現在の理想的なバンドと共に自身の過去曲を再構築していくこと。そして再構築された曲を極力大らかに(「ポップに」と言い換えてもいい)届けること。主にそのふたつが意図するところだったのではないかと自分は感じた。
まずは、どの曲もオリジナルの音源のそれとは大きく変わったアレンジにやられた。なかにはUAが歌い出すまでそれがその曲だとわからなかったものもあった。どの曲のアレンジも刺激的で、モダンで、鮮やかで、2020年代的で、興奮させられた。「あの曲がこんな音でこんなふうに鳴らされるのか!」と。そのように刺激的で鮮やかな音を鳴らしている現在のバンドのメンバーをここで書いておこう。西田修大(ギター)、鈴木正人(ベース)、大井一彌(ドラムス)、小田朋美(鍵盤)、荒木正比呂(シンセサイザー)、神田智子(コーラス)、イガキアキコ(コーラス、ヴァイオリン)。1月の「25th→→→30th anniversary Live!!」の時からチェンジしたのはドラムだけで、今はこの7人とUAでひとつなのだという息の合った様子が見てとれた。若手ばかりのこのバンドでUAが歌うようになったのは「25th→→→30th anniversary Live!!」からで、エレクトロ味をかなり導入しながらもナマ演奏のグルーヴを少しも後退させることなく歌声を引き立てる彼らは、ツアーやフェスで度々公演するに連れてとんでもないバンドへと進化するであろうことがその時点でイメージできたが、実際その通りになっていた。
確かな腕を持つ奏者たちはナマの強靭かつしなやかなグルーヴを生み出しつつ、電子音を前に出すやり方にも対応できる。旧来型のバンドとはそこが違い、だからアレンジがロック方向だろうとソウル方向だろうとジャズ方向だろうとエレクロト方向だろうと柔軟にいけるのだ。その鳴り音の新鮮さとアンサンブルの素晴らしさがライブの肝と言ってもよく、彼らと出会えたことはUAにとって本当に大きなこと、幸福なことだったんだなと改めて思った。
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