新アルバム『FLOWERS』とバンドの現在地を語る
go!go!vanillas牧達弥に訊くメンバーの進化、新作で立ち返る“自分たちのフィールド”
2022.12.15 17:00
2022.12.15 17:00
原点回帰とバンド・サウンドの更新を印象づけるニュー・アルバム『FLOWERS』が発売された。今回もgo!go!vanillas(以下、バニラズ)らしい多彩な全12曲が揃っているが、バンドが原点回帰するには、そもそもバンドが進化していることが前提として必要だ。今回のインタビューでは原点回帰やバンド・サウンドの更新についてはもちろんのこと、そこに至るまでの進化をどう捉えているのか、バンドを代表して牧達弥(Vo, Gt)に訊いてみた。来年2023年、インディーズ・デビュー10周年、翌2024年、メジャー・デビュー10周年を迎えるバニラズの活動はここからさらに加速していきそうだ。
──9月30日の日本武道館公演で、今回のアルバムの1曲目を飾る「HIGHER」を聴いて、とてもかっこいい曲だと思いました。アイリッシュ・フォークやカントリーといったルーツ・ミュージックの要素は、これまでのバニラズの楽曲からも聴き取れましたが、「HIGHER」はフォークやウェスタンの要素を、壮大かつアトモスフェリックな曲調で聴かせたところがバニラズの新たな一面に感じられ、新しいアルバムへの期待がぐっと高まったんです。今回の『FLOWERS』、そんな期待通りの、いや、期待以上のアルバムでとても聴き応えがありました。
すごく自然に生まれてきたんですよ。しかも、僕ら4人だけではなく、僕が入れたいと思った楽器を演奏している3人を迎えたことで、僕らも気合いが入ったし、3人もそれに応えてくれるように魂を吹き込んでくれていると感じながら作れたので、音楽的にも一番、楽しめたアルバムだと思います。
──ピアノの井上惇志さんとトランペットのファンファンさんとは以前に共演歴がありますが、フィドルの手島宏夢さんは今回のアルバム制作のタームからの参加ですね。
そうです。今回、レコーディングに落とし込む音は、ダイレクトに人間力を感じながら表現したかったので、どうしてもフィドルを入れたいという話をして、紹介していただきました。その3人と「LIFE IS BEAUTIFUL」という曲を、ほんと手合わせするみたいに、「まずはみんなでやってみよう」ってところから作り始めたのが今回のアルバムなんですよね。
──人間力という言葉が出ましたが、今回、『FLOWERS』を聴いて、第一印象として感じたのが、生のバンド・サウンドとビートルズをはじめとする60’sのロックというバニラズの原点回帰だったんです。もちろん、「HIGHER」を聴けば、原点回帰だけにとどまらない作品だということはわかるのですが、人間力を求めたのは、原点に回帰したいという気持ちからだったのでしょうか?
原点回帰というところもあるのかもしれないですけど、前作の『PANDORA』を作ったのがコロナ禍の混乱が一番不安な時で、メンバーとディスカッションするのもリモートだったので、自分のよりパーソナルな部分で曲を作るってことをやって。パソコンでいろいろな音を選びながら、普段やらないことまで含め、遊ぶって感覚で作りながら、それはそれですごく楽しかったんですけど、やっぱり1人で作り上げるってことに対する孤独もあって。そんなふうにラボみたいな感じで作り上げたので、次の作品ではメンバーそれぞれの演奏のカラーを広げていく方向で、サンプリングをプリセットですることが当たり前の時代にロック・バンドとして、自分達の演奏で音楽を作り上げてきたという自負も含め、僕らだけの音を作ろうっていうのが今回、アルバムを作るとき、最初に思った気持ちでした。
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