2022.11.04 19:00
2022.11.04 19:00
ずっと皆さんと一緒に音楽を作ってる感覚がある
──もうひとつの10月リリースの楽曲は、メジャーデビュー曲「Did you see the sunrise?」。こちらはPrime Video『仮面ライダーBLACK SUN』の主題歌です。テーマソングが決まっての率直なご感想というと?
主題歌を担当するのは夢だったので、活動を辞めずに続けていてよかったなと思いました。でも同時に、長年にわたりたくさんの人に愛されている作品の主題歌を歌う人間として超学生が受け入れていただけるのか不安もあったんです。「なんだこの仮面の男は!?」と思われるんじゃないかと……。
──(笑)。
でも発表後の反応を見ていると、今まで応援してくださっていたファンの方々は喜んでくださっていて、「超学生のことあんまり詳しく知らないけど、予告編観た感じだと雰囲気も合っててすごくいいじゃん」みたいなことを言ってくれる方も多くて、意外と皆さん超学生という存在に期待してくださっていて。全然不安に思う必要がなかったなと安心しました。ここまで来れたのも、本当に応援してくださった皆さんのコメントのおかげなんです。
──と言いますと?
「ここの歌い方が好きだったよ」というコメントや、「こういう曲歌ってほしいな」というリクエストから、自分が次どうしたらいいのかのアイデアやヒントを頂けていたから、今の自分があるんだなと思うんです。10年ずっとやりたいことをやり続けてきたけれど、その「やりたいこと」が生まれるきっかけは皆さんからのアイデアであることが多くて。
──先ほど話してくださった「ファンの方との掛け算」にも通ずる話ですね。
そうですね。だから僕はずっと皆さんと一緒に音楽を作ってる感覚があるんです。皆さんのコメントを敢えて無視して「超学生はこういうこともやってしまいます」という側面を見せるのも、サプライズ的な意味で面白いなと思っちゃってるところもありますけど(笑)。今後もファンの方々との二人三脚の関係性は大事にしていきたいなと思っています。
──『仮面ライダーBLACK SUN』にはどのような印象を持ちましたか?
仮面ライダーシリーズには「小さい子たちに夢や希望を与える」というイメージがあると思うんですけど、『仮面ライダーBLACK SUN』は「世界はこんなにとんでもないひどさを孕んでいます」ということを提示している作品だと思います。大人になった昭和平成ライダーのファンの方が観ると、技術と映像美の融合や、限りない『仮面ライダーブラック』へのリスペクトも感じられると思う。これを観るか観ないかで世界の見方が変わるぐらい、観る人に大きな影響を与える作品だとも思うので、目の肥えた『仮面ライダー』ファンの方、TVで放送されていた仮面ライダーだけを観ていた方にもぜひご覧いただきたいですし、いま仮面ライダーを愛している小さい子たちも、早く大きくなって観てほしいなと思います。
──そういう作品の主題歌を担当するのは、なかなか刺激的だろうなと。
本当にそうですね。この作品のテーマソングをこんな若造に託していただけたのには何か大きな意味があると思って挑んでいきました。
──「Did you see the sunrise?」という楽曲自体も、これまで超学生さんが歌ってきたものとは違う趣向だと思います。
松隈ケンタさんの曲は激しいサウンドでそれぞれのボーカリストの個性をぐわっと引っ張っていくようなイメージが強かったんですけど、「Did you see the sunrise?」はどちらかというと作品の持つ旨味をものすごく濃くした曲になっているのが第一印象でした。超学生の歌ってきた曲とは異なるサウンドでありつつ、ミックスには子音が前に飛んでくる感じのインターネットっぽさや、今の流行りの低域のふくよかさも出ているので、いろんな要素のハイブリッドで誰が聴いてもかっこいい音にしていただいてるんじゃないかなと思います。
──音にはちょっと渋さもありますしね。
音の密度はそれこそ『仮面ライダーブラック』を観ていた世代の方々に、がっつり刺さるようなサウンドじゃないかな。だから普段VOVALOIDをたくさん聴く方には、かなり新鮮だと思います。いろんな倍音を含んだギターやバイオリンが惜しみなく、すべて意味を持って、テトリスみたいに詰められている。今は整理整頓されているサウンドメイクが多いと思うので、この音の波はかなりいい体験になるんじゃないかなと思います。
──歌ううえでの感覚もこれまでと違うのではないでしょうか?
僕のざらついた声は整理された音の中では結構有利な要素が多いんですけど、この曲でそういう声で歌うと逆に埋もれるという不思議な現象が起きまして。周波数の高い広域の部分や、ロングトーンの部分はいかに倍音をたくさん出して、ツンと張り詰めた音にするかを試行錯誤していきました。だから録り終えたときは「本当にこれで大丈夫なのかな?」と不安で。でも松隈さんのボーカルディレクションのもとOKをいただいたので、それを信頼して完成をドキドキしながら待ちました。そうしたら完パケの音源が素晴らしくて。ご一緒できて本当に良かったなと思いましたし、勉強になりました。
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