2022.07.19 07:00
なんにも飾らず聴かせたかった『WATASHIAUWA Tour』
──そんな「JaPo」から3年が経ち、2019年はデビュー25周年を見据えたツアー『WATASHIAUWA Tour』がありました。ある時期のライヴは観客にも集中力を強いるようなところがあったものですけど、あのライヴはUAさんをすごく近くに感じられたし、一緒に楽しみたいという気持ちを前面に出しながら進めているように感じたんですよ。
うん、確かにそうでした。あのときのバンドはトリオ+コーラス2名というシンプルなもので、それぞれの音が太くせめぎあうような状態にもっていきながら、なんにも飾らず聴かせることをやりたかったんです。内橋くんがバンマスで、スキルとセンスを持ち合わせた気のおけるミュージシャンたちなので、私はどこで入ってどこで終わっても大丈夫という安心感があった。そこで『情熱』を始め、『甘い運命』とか『Love Scene』など朝本(浩文)さんの曲も歌ったわけですけど、そのときにお客さんの熱がブワーっとくるわけですよ。それで自分もほくほくしてきて、幸せだなと思えたし、なんでしばらく歌わずにいたんだろうとも思ってね。でも、またそんな曲を作って歌いたくても、朝本さんはもういないという現実があるわけで。後悔ではないけど、そういう気づきもあったんです。
──あのときのUAさんはフランクに観客に話しかけたり、観客の質問に答えて長々と話したりと、リラックスした雰囲気を作りながら自分も楽しんでいるようでした。
MCは昔から緊張するんですけど、なんかラクになったところがあったのかな。沖縄でいい意味でのユルさを学んだからかもしれない(笑)。沖縄だとステージとステージを降りた場所との境界線が曖昧で、ゆんたく(沖縄の方言で、おしゃべり)している席でも歌わされるし、授乳しながら歌ったりも普通にするし。あと、歌手のUAだと思ってみんな聴くけど、UAの歌をそんなに知らないだろうから、島唄を歌ったり、小学校のときの校歌を真剣に歌ったりして。そうやってわりと場数を踏んだんですね。お話をメインにしたライヴをやったり、内部被曝の危険性を伝えたいという思いから、みんなで力を合わせて「お祭り」を作ったりもしたし。そういった経験が実になって現れたんだと思います。
──なるほど。で、2020年は25周年を記念したライヴをやるはずだったものの、コロナ禍でやることができず。2021年には約20年ぶりのAJICO再始動がありました。先日、UAさんのラジオ番組を聴いていたら、AJICOをやってからバンドの面白さがわかったと話されていましたね。
それも今回のAJICOでわかったんですよ。20数年前のときは、私はガムシャラすぎて、壊れるくらいに頑張って、「燃え尽きたー、もうできへんわぁー」みたいになったので二度とないと思っていたんですけど。運命の不思議で去年またやってみたら、UAとして出るときと緊張感が全然違ってね。なんか、音にたゆたえる自分がいたというか。
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