2022.07.04 00:00
映画を語るうえで
僕、『ローマの休日』とか王道で観ていない作品が結構あるんです。『風と共に去りぬ』も観ていなかったけど、娘の麻里が映画紹介の番組をやるっていうので観てほしいと言われ、仕方なく観ました。そしたらね、日本が白黒映画の時代に、オールカラーの70mmでものすごい予算をかけた作品で。当時のアメリカの映画界というか、アメリカの経済力をまざまざと見せつけられた。面白いとは思わなかったけど、ただ凄いなとは思いました。
『風と共に去りぬ』もそうですが、自分の確固たる基準というか、頑固というか……みんなが良いって言っても、「いや、僕にはちょっと」と、思う作品はある。ただね、映画の評論における僕の理論というか考えとしては、(作品が)面白くなかったことに関しては“僕が面白くないだけ”だから、作品そのものは一切否定しません。少なくとも、僕に影響を受ける方がいるとします。そしてその人が、理髪師の人が主人公の映画を見て、それに感動して素晴らしい理容師になる可能性もあるわけですよ。歌手の映画を観て、歌手を目指して素晴らしいアーティストになる可能性だってある。僕はその映画を、“僕の趣味が合わないから”と否定することで、その人が“運命の映画”に出逢えなくなるのが嫌なんです。
逆に「この映画を見ようかな」と迷っている人に「関根勤が面白いって言っているから、見てみよう」と観てもらって、「この映画が僕の人生を変えてくれた」と思ってもらえるような、そっちのプラスの方の動きに僕は全力を尽くしていきたい。だって、たかが個人が、「面白いか、つまらないか」って言っているだけですからね。なので、僕が面白いと思った映画は推薦するし、それを観て面白くなくても「あ、関根と意見合わなかったな」で良いんですよ。その中で、「あ、本当に面白かった。ありがとう」と思っていただければ嬉しいです。
そういうわけで、僕は作品に関しては絶対否定しません。もちろん、喫茶店で仲間と話す時は、そういう話もしますよ。「あの作品はちょっとね、15分で出てきちゃった」とか。しかし、映画の持っている効力というか、そこにある素晴らしさを損ないたくないので、公の場では否定はしたくありません。なので、この連載では私が今までずっと観てきた映画の中で、心に残っているマニアックで笑えたり、あるいはちょっと怖かったりという作品をご紹介していきたいと思います。