2026.10.07 19:00
2026.10.07 19:00
うまいだけの歌より、下手でも心がこもった歌のほうが届く
──まさに加藤さんの音楽人生を振り返るうえで、ミュージカルとの出会いは外せないと思います。今おっしゃっていただいたことも含めてミュージカルと出会ったことで、加藤さんにはどのような意識の変化がありましたか?
改めて「歌って言葉なんだな」と思いました。
──1年目に苦しんだときも「言葉を届けたい」という気持ちがあったとおっしゃっていましたね。
はい。ミュージカルの稽古中に「歌を歌うんじゃない」と言われたことがきっかけで。ミュージカルってお芝居だから、役の気持ちや作品の思いを歌に乗せる、“セリフが歌になる”というイメージだと思うんです。僕自身も最初はそう思っていたので、「歌を歌うんじゃない」と言われたときは「いや、歌ですよ」と思いました。でも歌じゃなくてセリフ、言葉なんですよね。「そのメロディは、自分の中から出てきたものが音になってお客さんに聞こえているんだ」と言われて。「自分が歌いたいように歌うんじゃなくて、役としてこの言葉をどう歌うか」を考えると、そこに自分自身はいらないんです。だから自然と役の声で歌うようになる。もちろんピッチとか、そこは気にしないといけないですけど。
──なるほど。
そもそも僕はずっと歌に自信がなかったんです。でもうまくなりたいという気持ちはある。だけど「うまいから響く歌なのか?」と考えてみると……昔、自分がミュージカルをやる前に舞台を見に行って「なんか響かないな」と思ったことがあったんです。これは僕の仮説ですが、うまいだけの歌より、下手でも心がこもった歌のほうが届くんですよね。もちろんうまくて気持ちもこもっているのが一番ですけど。技術よりも気持ちを大事にしようと思うようになったのは、「歌を歌うんじゃない」と言われたことがきっかけで、それを自分の肌で感じられたのは、ものすごく大きなことでした。ミュージカルに出演したことで発声法を見直したり、クラシカルな発声を身につけられたことで、自分の歌の表現も広がったなと思います。

──加藤さんは作詞や曲も手がけられていますが、楽曲を作ることを含めてクリエイティブな面においての意識の変化はありましたか?
それでいうと、やっぱり曲作りにおいてお芝居から受けるインスピレーションというものはあって。実際に自分じゃない誰かを演じるって、役者さんしかやらないことじゃないですか。自分が違う誰かの人生を演じて経験したものを曲にすることもあるんです。人間じゃない何かとして生きたり、本当に叶わない身分違いの恋愛をしたり。そういうところでは、役者をやっていて良かったなと思います。
──確かにそれは、俳優さんにしかできないことなのかも。
イメージすることはできても実際に経験することはできないから。僕たちも一部を経験したにすぎないですけど、よりリアリティを持って書けるのかなと思います。
──20年間、俳優業と音楽活動を並行してやられてきた加藤さん。現在の加藤さんは、俳優業と音楽活動の関係性をどう考えていらっしゃいますか?
昔はお芝居が苦手だったんです。本当は歌だけできればよかったんですけど、そういうわけにもいかず……というところで始めたところがあって。でも今では、どちらもなくてはならないものになりました。お芝居から受けるインスピレーションってすごいんだなと思うし、自分が演じていなくても、例えば映画や舞台を見に行って受ける刺激もすごい。だからこそ、こういう世界に身を置けるってすごいことなんだって毎回思います。
──そうして20周年を迎えられたわけですが。6月から8月にかけて、47都道府県Talk&Liveツアー「Kazuki Kato ROAD TOUR 2026 ~Thank you for coming! 4~」を回られました。47都道府県ツアーを回ろうと思った理由と、実際に回った感想を教えてください。
これまでに全国いろいろなところでライブをやりましたけど、いまだに行けていないところがあって。それが悔しかったし、申し訳なくもあって。だからこの20周年のタイミングで全部行きましょうと覚悟を決めて、スタッフにも協力してもらって、ようやくできました。

──スケジュール的にも大変だったとは思いますが、いかがでしたか?
このタイミングでできて良かったなと思います。この気持ちを忘れちゃいけないなと思いました。
──このツアーでどういう気持ちを得たのでしょうか?
やっぱり音楽って届けるものなんだなって思いました。そもそも全国、皆さんの地元でライブをやりたいと思ったのも、地元・名古屋に住んでいた中学生のとき、L’Arc-en-Cielさんのライブに行って、HYDEさんがMCで「味噌カツ食べたで。味噌煮込みも食べたで」って言ってくれたのがきっかけで。「HYDE、味噌カツ食ったんかて!?」って、めちゃくちゃテンションが上がってうれしかったんです。だからこそ、自分も歌う側になったら、それをみんなの地元で届けたいと思っていて。それが今回叶えられて本当に良かったなと思いました。
──大変ではなかったですか?
全然。スタッフは大変だったと思いますけど、僕はずっと楽しかったです。バンドマスターに「これは誰にでもできることじゃない。この経験は無駄にしちゃいけない」と言われて。だから楽しかったけど、ちゃんと次に繋げていかないとなという覚悟にもなりました。
次のページ


