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今年ならではの魅力と2人の冒険譚が“伝えたい想い”を紐解く

朗読劇『ハロルドとモード』開幕、黒柳徹子×七五三掛龍也の呼応が観る者にもたらすものとは

2025.10.04 16:00

2025.10.04 16:00

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会見で語られた、変わらない“進歩”への思い

再演ごとに他のキャストもガラリと変わるのがこのG2演出×黒柳徹子主演版の『ハロルドとモード』の特徴だが、今回、ハロルドとモードを取り巻く人々を演じる顔ぶれもとても魅力的だ。例えば、警官役などさまざまな役柄でキレのある動きと口跡の良いセリフを聞かせてくれたのは、映像や舞台で個性的な印象を残す前野朋哉。コメディリリーフとして作品にテンポ感を加える存在だ。ハロルドのことを案じながらも、どこかズレている(?)母親を演じたのは和久井映見。1つ匙加減を間違えると非常に“嫌な毒親”になりそうなところを、これが本人の持つチャーミングさも相まって絶妙! こういった役をやらせたら彼女の右に出る人はいないのでは? 

前野朋哉、七五三掛龍也(Travis Japan)

ハロルドの母親にデートをセッティングされる女の子たちを演じる森迫永依は、見事な演技力で個性的な女子を演じ、堂々たるコメディエンヌぶりだ。舞台出演はまだ3作目と言うから驚き! また、G2作品では古くからのおなじみ出演者であり、七五三掛とは昨年の『ダブリンの鐘つきカビ人間』でも共演した松尾貴史は、威圧的な役から風変わりな彫刻家まで自在に演じ分ける。余談だがこの彫刻家グローカス、ドラマ『相棒』シリーズで松尾が演じているホームレス“一郎くん”をちょっと思い出す人がいるかもしれない。

森迫永依

しかし、観終わってしみじみと実感したのは、黒柳徹子という人が「なぜこの作品を上演したいと思ったか」ということだ。彼女のことを知っている人……著作『窓ぎわのトットちゃん』を読んだことがあったり、『徹子の部屋』で繰り広げられるゲストとのやりとりからその人柄をわかっている人なら、観始めてすぐにピンとくるだろう。なぜなら、何事にもとらわれず、眼の前の“生”を全力で謳歌するモードは、まさに彼女にぴったり! 

しかし、この作品は単なる“年齢差のある2人の男女のおとぎ話”に終わらない。そのヒントは、劇中でさらっと触れられる「モードの腕にある入れ墨の番号」などのディテールから推察できる。そこからわかるのは、この作品に出てくるモードという人は、「アウシュビッツの生き残りである」ということ。そういった彼女の壮絶な過去をことさらに強調せず、現在の“生”の中に過去が少し垣間見える……今作が名作とされる所以だろう。

また、黒柳徹子といえば2023年に公開されたアニメ映画『窓ぎわのトットちゃん』での戦時中の描写も話題となったが、あの作品も彼女のたっての願いで実現したもの。そういった「伝えなければいけないこと」への想いも、今作に感じられてしまうのは考えすぎだろうか? 記者会見で「私はこれを55年ほど前に日本で観てから、将来あのぐらいの年齢になったら、自分もやりたいなと思ってたんです。その年はもう随分過ぎたんですけど、今できて嬉しいなと思っています」と語った黒柳。そして、演劇の魅力について聞かれて「毎日少しずつでも進歩しようと努力していると、少しずつでも進歩するかなと思ったりして。こういういいお相手の方がいらっしゃると頑張ろうと思う気にもなるので、毎日が楽しみです」と語った。

人は何歳でも、好奇心と探究心を忘れなければ、舞台上の彼女のように生きられるのだろうか? そんなことを感じてしまう。自分が老いていくことへの考え方が、少し変わるような気さえする……そんな素敵な作品だ。

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作品情報

朗読劇『ハロルドとモード』

『ハロルドとモード』キービジュアル

『ハロルドとモード』キービジュアル

朗読劇『ハロルドとモード』

【東京公演】
日程:2025年9月30日(火)~10月10日(金)
会場:EX THEATER ROPPONGI
主催:テレビ朝日 サンライズプロモーション東京
チケット料金:S席¥10,800 A席¥9,000(全席指定・税込)

【大阪公演】
日程:2025年10月16日(木)〜19日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール
主催:サンライズプロモーション大阪
チケット料金:¥10,800(全席指定・税込)

公式サイトはこちら

キャスト&スタッフ

出演:黒柳徹子 七五三掛龍也(Travis Japan) 森迫永依 前野朋哉 松尾貴史 和久井映見

作:コリン・ヒギンズ
上演台本・演出:G2
音楽・演奏:荻野清子
演出補:平田純哉

企画・製作:テレビ朝日 サンライズプロモーション東京

宣伝:キョードーメディアス

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