今の自分の“顔”をどう思う?最新主演映画では孤独な青年役に
「この仕事は、終わりがあるから美しい」青木柚を成長させる一期一会、今年向き合った変化とは
2025.09.07 13:30
2025.09.07 13:30
失敗をあまりしていないことに怖さを感じる
──10代20代って顕著に顔が変わっていく時期だと思うんですけど、青木さんって若い頃から仕事をしているから、その変化がすべて作品に刻み込まれている。そういうのを自覚的に振り返ることはありますか。
たまたまですけど、ちょうど昨日、自分が昔出ていた松本花奈監督の『またね』という短編映画を観たところです。
──どうでした?
顔が完成されていないなあって(笑)。幼いというか、全然意思のない顔をしていて、ダメだ……みたいな(笑)。でも、誰においても言えることだと思いますけど、昔のもう失くしてしまった表情がなんか今より良く見えたりすることもあって。不思議な気持ちになりますね。

──おっしゃる通り、10代の頃はちょっと所在のない顔をされていたんですよね。それがある頃からふっと変わったように思ったんですけど、ご自身で思い当たるところはありますか。
ずっと何か背負っている役をやらせていただいてきて。20歳前後の頃に、このまま脆い役をやり続けるのも限界があるというか、そういう役で声をかけてもらえるのも今だけだよなということはすごく考えていました。何も持っていない自分だから選んでいただいてるんだなって当時からずっと思っていたし。今でも昔の作品を観て、「柚くんの繊細な役いいね」と褒めていただけることがあるので、ありがたいなという気持ちはありつつ、自分なりになんとか折り合いをつけようと必死でしたね。
──未成年の鬱屈みたいなものが、ダイレクトに顔に出ていたんですよね。映画監督にとってはたまらない顔というか。
それが良かったのかなっていうのはありますけど。でもやっぱりそれだけじゃダメだ、もっとちゃんと別のところでも勝負できるようにならなきゃっていう気持ちは強くて。そういう意識の変化はこれからも楽しみです。今はイケオジへの道を切り開こうとしている最中です(笑)。
──(笑)。今の自分の顔は好きですか。
(近くにあった姿見に目をやり)いい顔してます(笑)。
──グッと色気が出てきたと思いますよ。
すみません、ありがとうございます(笑)。

──最後にちょっとだけ近況を聞かせてください。2025年もすっかり後半戦に入っていますが、上半期を振り返ると、ご自身にとってどんな時間でしたか。
仕事との向き合い方を考え直す時間ではありました。自分は、他の人と比べて情熱が圧倒的に足りてないなって思ったんですよ。「命懸ける」という言葉を僕はあんまり信じてこなかったんですけど、本当にそれくらいの気持ちで作品と向き合う共演者の方を見て、こういう方もいるんだって思ったり。このままじゃ自分は“それっぽい人”にしかならずに終わっていくんじゃないかなって節々で感じた半年でした。
──自分は情熱が足りていないんじゃないかと思うのは、キャリアを積み重ねたゆえの慣れが理由なんでしょうか。
どうなんですかね。いまだに本番前はめちゃくちゃ緊張するので、すごく慣れましたというわけではないんですけど。たぶん大失敗をあまりしていないことが怖いのかな。よく曲とかで「何度失敗しても突き進んでいこうぜ」みたいなメッセージがありますけど、ふと我に返ったんですよね、そう言えば自分、大失敗したことないかもなと。
もちろん日々反省はあるし、自分や人から見てダメなところはいっぱいあるけど、頭を抱えるくらいの大失敗ってなかなかない。結局なんとなく過ごしてきてしまったというか。それが何故かショックというか。この半年、そういうことをわりとずっと考えていたんですけど、その日々を無駄なものにしないように、ここからちゃんと頑張っていかないとなという感じです。

──そういえば、以前日記をつけているという話を聞いたことがあるんですけど、今も続けていますか。
書いてますよ。
──それは、たとえばどういうことを?
う〜ん。向かいから走ってきた自転車に乗ってた男の人のTシャツに「ポンコツ」って書いてあって、それが良かったとか、そういうことです(笑)。
──本当にとりとめのない内容なんですね(笑)。
本当に白Tに黒字で「ポンコツ」としか書いてなかったんですよ。すごくいいなと思って。日記につけてるだけで、ひょんなことも思い出せる。そんなに振り返ることはしないですけど、でも自分の日々を豊かにしてくれている気がします。
──そんな青木さんにとって、日々をいとおしいとか、わずらわしいとか、何か形容詞で表すとすれば、日々はどういうものですか。
日々は? うーん……そうだなあ。日々は難しい、ですね。
