映画『星つなぎのエリオ』で演じた父親像がくれた気づきとは
「一人を楽しめるのは、独りじゃないから」現代を旅する松山ケンイチに聞く生き方のヒント
2025.08.12 17:30
2025.08.12 17:30
人生は“遊び”がなければ苦しくなる
──Xでたまにリプ返しをされていますけど、ワードセンスが秀逸ですよね。あれは直感で打ってるんですか。それとも結構練ってから送っていますか。
いや、あんまり考えていないです。その瞬間のやりとりを楽しんでいるだけ、という感じですね。
──そうやって松山さんがSNS上で顔も知らない人たちとコミュニケーションを楽しんでいる姿を見ていると、こちらまで楽しくなってきます。
僕は今、基本的に“遊び”のことしか頭になくて。どうやったらもっと楽しくなるか、どうやったらもっと遊べるかということばかり考えているんですね。人生に必要なのは“遊び”だと思う。今、Xだけじゃなく、TikTokとかインスタとか、いろんなSNSを見て、こういう面白いことをやっているんだと勉強させてもらっているところで。そういうネット上の話題なんて、言ってしまえば1日2日で消えてしまうことがほとんどなんですけど。でもその1日2日の賞味期限の間に救われている人も絶対にいる。些細なことかもしれない。一瞬で消えるものかもしれない。だけど、一瞬でも笑って日々を過ごしていくのって、とても素敵なこと。俳優以外で自分ができるエンタメとして、そういうささやかな楽しみをみなさんにお届けできるなら、これからも続けていこうと思っています。
──“遊び”というのが、松山さんのライフスタイルの中で大事なワードなんですね。
それしかないですね。遊んで生活ができたら、これ以上のことはない。もちろん全部の遊びが生活の糧になるわけではないですけど、なんとか楽しく生活できるようにしたいというのは、もうずっと考えています。今の僕にとってSNSは、みなさんと一緒に遊びをつくっていく場。そこに可能性を感じています。
──じゃあ、今、松山さんが生きる上で大事にしていることというと。
楽しく過ごすということだけですね。遊びがなければ苦しくなる。みんなが楽しく暮らしていくことがいちばんだと思っています。

──とはいえ、人間である以上、どうやっても楽しい気持ちになれないときもあります。そんなとき、松山さんはどうしますか。
寝ます。僕は睡眠をかなり大事にしていて。疲れているときほど、ちゃんと寝たい。できれば12時間くらい寝たいですよね。特に今は東京なんてめちゃくちゃ暑いでしょう。どうしてもエアコンをつけざるを得ないんですけど、エアコンをつけると眠りが浅くなりません?
──なります。
それがね、なかなか大変なんですけど。楽しくなれない理由って、大体が疲れているからなんですよね。寝れば体力が回復する。体力が回復すると、気力も回復しますから。シンプルですけど、寝るのがいちばんです。あとは、別に僕も四六時中誰かとつながっていたい人間というわけではないので。楽しくなれないときは、一人の時間を欲しているときなんだろうなと。だから、とことん一人で過ごす。で、誰かとまたふれ合いたくなったら、外に出て動き出すということをやっています。
──それこそ2拠点生活をやってらっしゃいますけど、東京にいる自分と、もう一つの場所にいる自分は違いますか。
全然違いますね。東京にいるときの自分は日によってやってることが全然違いますけど、向こうに行けば完全にルーティンが決まっているので。起きる時間も寝る時間も仕事する時間も固定化されていて、特に臨機応変な対応を求められることもない。楽ですよ、とっても。でも面白いことに、東京にいてスケジュールに追われているときより向こうにいる時間のほうが1日が早く感じるんです。やりたいことがたくさんあるんでしょうね。向こうにいるときは、あれもやりたい、これもやりたいって好き勝手動いているから、1日があっという間。そして、そんなふうに決められたルーティンの中で好きに生きている時間が、自分を整えてくれている気がします。

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