2025.07.08 12:00
2025.07.08 12:00
表現者として、人生は楽しいことを伝えたい
──きっと人生っていろんな経験を経て少しずつ自分というものが出来上がっていくものだと思うんですけど、お二人はどの時点で今の自分になったという感覚がありますか。
大野 面白いですね。そこで言うと、僕は1週間前です。
──そんなに最近ですか。
大野 というのも、1週間前に今の髪型にしたんです。それまで金髪にしたりロングにしたり髪の毛で結構遊んでいたんですけど、なんかしっくり来なくて。仕事の向き合い方や生き方に関しても少しモヤモヤしていました。で、洋次に合わせて髪を短くしてみたら、あ、自分はこれだって、数年モヤモヤしていたものが一気に晴れたんです。
南沢 へええ。なかなかそんな体験ないんですよ。
大野 ずっと噛み合っていないなと思っていた歯車がピタッと合った感じ。そういう意味も含めて、この作品や佐伯洋次という役との出会いはすごく幸せだなと。

南沢 私はどうだろうなあ。本当に日々変化している感覚があるんですよね。私、すごく影響を受けやすいタイプなんですよ。初めましての人とお話しするだけで、あ、自分、ちょっと変わったかもと思う。
大野 桐山さんが南沢さんのことを「柔軟だけど、しっかりした芯がある」と言ってましたけど、今の話聞くとまさにそうなんですね。
南沢 かもしれないです。この稽古に入ってからも刻一刻と自分が変わっていっているのを感じるし。だから、今の自分になったのは今、というのが私の答えです。
──ではもう一つ。お二人とも趣味をいろいろお持ちですが、相手にオススメしたい趣味はありますか。
南沢 大野さん、趣味はなんですか。
大野 僕は今はカメラかなあ。バイクも好きなんだけど、危ないからプライベートでは乗れなくて。アートが好きで、でもゼロから何かを生み出すのは苦手で。カメラだったらそこにあるものを撮ることから始めればいいからできるかもと思って、ちょっと始めてみました。カメラはやってないですか?
南沢 興味はあるけど、やってないです。山に行くのが好きなのでカメラがあったらもっと楽しいだろうなって。でも、ついスマホで手軽にすませちゃう(笑)。
大野 いいよ、カメラは。カメラで撮ると、空気感まで切り取れる感じがする。せっかく行ったなら思い出はいちばん綺麗な形で残しておきたいじゃない? もし興味があったらぜひやってみてほしい。
南沢 そこで言うと、カメラがお好きなら山登りをオススメしたいです。
大野 好きです、山登り。海よりも山派。自然が大好きで、等々力渓谷とか何回も行ってる。
南沢 おおお。
大野 一人で深呼吸がしたくて。これ、病んでるのかな(笑)。
南沢 いや、自然の中に行きたくなるときはありますよ。
大野 1回夏に行って、神社のところで売ってるソフトクリームを食べながら、一人で何やってるんだろうと思った(笑)。でもそういう時間が好きですね。
──役者にとって、お芝居にふれていない時間をどう過ごすかって、すごく大事な気がするんですけど、そういう何者でもない時間は自分にどんなものをくれますか。
南沢 確かに役ではない時間をつくりたいと意識的に思っているところはあって。それが私にとって趣味の時間なんですね。山登りも、読書も、落語を聞くことも、完全にただの趣味。でも本を読みながら、こういう人いるんだって知ったり、こういうとき人はこういう気持ちになるんだって考えたり。
大野 それ、お芝居から離れてられていないじゃないですか(笑)。
南沢 本当だ(笑)。離れていない。

大野 山登りは?
南沢 山登り中は自分と向き合っていますね。
大野 わりとハードめな山に行ってます?
南沢 結構ハードかも。先月は塔ノ岳に行きました。標高はそんなに高くないんですけど、往復で7〜8時間かかったかな。
大野 うわ。すごい。
南沢 疲れたけど気持ちいい、みたいなあの疲労感がいいんですよね。山に登ってるときは完全にオフですね。
大野 行きたーい!
南沢 ぜひぜひ。
大野 7〜8時間はちょっと体の衰えが来てるのでアレだけど(笑)。
南沢 じゃあもうちょっと楽しめるところで(笑)。
大野 きっとそういう人生を楽しむ時間が大事なんですよね。僕の場合、20代は俳優業しかやってなくて、仕事が趣味ですって感じでした。それはそれで楽しかったんですけど、人生の深みや広がりがないなってふっと思って。役を生きるといっても、自分の人生の幅が狭いと、役が自分の器に入りきらない気がしたんです。
南沢 わかります。
大野 だから、まずは自分の人生を楽しまないとなって。特に僕らは、応援してくださる方に何かしら影響を与えられる仕事をしている。たとえば僕が写真にハマっていたら、僕を応援している方も「写真面白そうかも」「私も何か趣味を見つけたい」と思ってくれるかもしれない。そんなふうに人生を楽しむきっかけを提供できたらなって。表現をする者として、人生は楽しいということを一番に伝えたい。そのためにも僕自身が僕の人生を楽しんでいるんです。
