2025.06.27 18:00
2025.06.27 18:00
自分の恋心が自立して2曲作りたくなった
──サウンド面はどういったところからアイデアを?
自分は基本的にトラックメーカーさんにトラックをお願いして、曲を作っていきます。最初の段階で、曲のテーマとリファレンスを投げて、そこから返ってきたものを受け取ってから考えていく。今回もその作り方で進めました。といっても最初にトラックメーカーさんにお伝えしたのは、映画が“時間もの”だったので、時間にまつわる音なども入れたいというくらいでしたね。だからトラック次第では、主人公目線の曲じゃなくて、同級生目線の曲になっていたかもしれないです。
──本当にトラック次第なんですね。
はい。自分一人で作っていたら、確実にイメージ通りのものができると思うんですけど、人と音楽をやると、相手から出てくるものは毎回新鮮で。そのおかげで飽きずに音楽をやれているのかなと思います。トラックメーカーさんのそのときのマインドとか、成長とか、そういうものがトラックに出るし、自分もそれに呼応することで詞が引き出されていくんですよ。そのミラクルみたいなものを楽しんでいるんだと思います。

──今回は、その“一緒に音楽を作る”という相手の中に、映画もあったと。
まさに。
──この作品のタイアップじゃなかったら、小説テーマの曲も生まれなかったかもしれないですしね。
そう! 自分は小説があまり読めないんですよ。だから普通にしていたら、制作時にキーワードとして「小説」は出てこない。
──普段、小説を読まないんですね。そんなことを一切感じさせない歌詞でしたが、それはどうやって?
記憶を遡らせて……小学生のときに作文で賞を獲ったことがあって。そのとき、どう書いていいかわからなかったから、嫌だったことをいろいろワァって書いたんです。そのときのことを思い出して「文章ってこうやって書いてたよな」って。あとは自分が読めた小説を読み返したり、小説の書き方を調べたり。
──そこまで!
やはり小説をテーマにする以上、想像だけだと嘘になっちゃうので、ある程度のリアリティーは必要かなと思って。
──小説の書き方は、今回の作詞に何か役に立ちましたか?
はい。それこそ「プロットを書く」ということは、調べるまで知らなかったですし。あと、自分は一人称で歌詞を書くことが多いんですけど、小説なので俯瞰してみようかなと考えが変わったり、小説らしい景色を説明する描写を入れたり。そういうものは勉強になりましたし、新しい言葉の形としていろいろなフォーマットが追加された感じです。

──ということは、今回だけではなく、今後の作詞にも影響が出そうですね。
それはもう、めちゃくちゃ!
──小説を読んでみようとは?
いや、それは……(笑)。
──さらに、主題歌とは別に、映画のインスパイアソング「貴方に晴れ」も制作されました。これはどうして作られたのでしょうか?
映画を観て、茂(演:倉悠貴)の目線をどうしても詞にしたかったんです。恋愛において、好きな人から“選ばれない”ことってあるじゃないですか。なんかその感じから……自分の過去の恋愛を思い出してしまって、見ながら茂に感情移入してしまったんですよ。「自分が茂の立場でもきっと手伝っちゃうだろうな」とか「でも好きな人がいたらすごく嫌だろうな」とか「でもそれが運命だし」とか。自分も世話焼きなタイプだから、気持ちはわかるけど、煮え切らないよなって。なんか見ながら自分の恋心が自立しちゃって。
──映画サイドから頼まれたわけではなく、映画を観ていたら作りたくなってしまったと。
はい。主題歌の時点で2曲選択肢として出したんです。自分としては2曲とも気に入った曲になったので、どっちを選んでもらってもいいと思って。なんか……『リライト』という映画は、どこに自分の気持ちや目を置いても1曲書けるような作品ですごく楽しかったです。いろいろなところにストーリーがあるから。
──学園ものの側面もあるので、登場人物も多いですしね。
そうそう。自分がこれまで観た時間ものって、もっとファンタジーなものが多くて、自分を投影するという感じではなかったんですけど、この『リライト』は自分たちも経験したことある青春時代も舞台の一つなので、自分としては感情も降りてきやすかったんですよね。
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