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80年代が舞台のこの怪作は、なぜ心を揺さぶるのか?

Hey! Say! JUMP髙木雄也が虚飾に潜む“闇”を魅せる、ミュージカル『アメリカン・サイコ』開幕

2025.04.01 20:30

2025.04.01 20:30

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全身に表れた俳優・髙木雄也の覚悟

キャスティング面では、まずはこの役を務め上げた髙木雄也に拍手を贈りたい。演出の河原は会見で昨年の夏から出演者にボディメイクを指示していたことに触れ「体が締まっていないと降ろしてもいいんじゃないかというくらい、この作品はビジュアルがすべて」「この色々言われている時代にルッキズムの塊のような作品」と語っていたが、その理由は舞台を観ると納得する。パトリックをはじめ、この作品に出てくる人物たちのほとんどが、そういった“ビジュアルを重視する”人物だからだ。日焼けサロンやジムに通い、肌や髪を徹底的に磨き上げ、その上でブランド物のスーツに身を包む。仕事も、見た目も、すべてがパーフェクトであるのが大前提で、そこから“さらに上”を目指さなくてはいけない……そんな人種を演じる上で、髙木雄也という俳優のビジュアルがどれだけ説得力を持つか!

髙木雄也演じるパトリック、玉置成実演じるコートニー

しかもこの作品に出演するために相当な肉体改造を施したらしく、「食事とか、なかなか筋肉がつかないタイプの人間なので、本当に苦労しました。食事で脂肪を落としていって、トレーナーさんと考えながら体を作ったり。その間にライブがあったり、グループ仕事もあったので、正直きつかった」と記者会見では語ったが、作品のチラシと舞台での彼を見比べると顔の輪郭がほぼ別人。彼が、どれだけこの舞台に賭けていたかがよくわかる。

この作品はパトリックがスタイリッシュさを追求すればするほど、また彼の周囲が華やかになればなるほど、パトリック自身の孤独や空虚さが際立だっていく……という構造になっている。その彼の中の“空虚さ”がおそらく彼を殺人へと駆り立てていくのだが、凶行に至ってしまう理由はなんとなくは察するものの、彼が“サイコ”だからなのか、なにかバックボーンがあるのか、そこは明確には明かされない。そういった難しい役である上に、ダンスもナンバーも出演場面も非常に多く、高木いわく「大変でない部分がない」。そして結構な数の場面で上記のブリーフ一丁の裸体。これまでも舞台作品では『裏切りの街』などアイドルらしからぬ役にも挑戦してきた彼だが、今作でまた新たな一面を見せつけたのは間違いない。

この風変わりな作品が面白く見られるのは、高木以外のキャストも実力派揃いだからだろう。会見で本人が「人をイラッとさせる人物(笑)」と語ったポールをなんとも楽しそうに演じていた大貫勇輔は、安定のダンススキルと持ち前のチャーミングさで、パトリックが嫉妬する人物というキャラクターに説得力をもたせる。近年ミュージカル出演が相次ぐ石田ニコルはビジュアルも歌も抜群、エヴリンという役が嫌味にならないのは彼女自身の持つ魅力が大きいのでは? また、ジーンを演じる音月桂の、キャスト陣の中ではいい意味で異質な存在感がこの作品のストーリーにピッタリとハマっている。歌唱力、演技力の確かさは言わずもがな、だ。パトリックの浮気相手・コートニー役の玉置成美、コートニーの彼氏ながら隠れゲイ?のルイスを演じる原田優一など、しっかりした実力を持つキャストがコメディリリーフをつとめているのも大きい。

ティム役の中河内雅貴、エヴリン役の石田ニコル
デヴィッド役の高橋駿一

演出の河原は会見で「ストーリーとかあってないようなものだから、お話を真剣に追うようなタイプの芝居ではない」と言っていたが、けしてそんなことはない。この作品を観ると、80年代の空気が持っていた華やかさと表裏一体になった虚ろさを感じると同時に、では今の時代は……? と思わされる。景気こそ当時のような状況ではないが、それでも自分を飾り立て、虚飾の世界を波乗りするように渡り歩く……そんな人はいつだって私たちの周りにいるのではないだろうか? そして自分自身の中にも、そういった部分はないだろうか? 笑って、楽しんで、ゾッとさせられて、それでいて自分の心のなかにパトリックのような“空虚”がないか自戒させられる“怪作”。観る人に、大きなインパクトを残すに違いない。

(左から)大貫勇輔、石田ニコル、髙木雄也、音月桂、河原雅彦

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作品情報

PARCO PRODUCE 2025 ミュージカル『アメリカン・サイコ』

PARCO PRODUCE 2025 ミュージカル『アメリカン・サイコ』

【東京公演】新国立劇場 中劇場 2025年3月30日(日)~4月13日(日)
チケット:S席15,000円、A席12,000円

【大阪公演】森ノ宮ピロティホール 2025年4月19日(土)~21日(月)
チケット:15,000円

【北九州公演】J:COM北九州芸術劇場大ホール 2025年4月26日(土)11:00開演/16:00開演
チケット:15,000円

【広島公演】JMSアステールプラザ大ホール 2025年4月30日(水)13:00開演/18:00開演
チケット:15,000円

公式サイトはこちら

スタッフ&キャスト

脚本:ロベルト・アギーレ=サカサ
作詞・作曲:ダンカン・シーク
原作:ブレット・イーストン・エリス
翻訳・訳詞:福田響志
演出:河原雅彦

出演:髙木雄也
音月桂 石田ニコル 中河内雅貴 原田優一 玉置成実
高橋駿一 GENTA YAMAGUCHI 松野乃知
ダンドイ舞莉花 エリザベス・マリー 吉田繭 加島茜
秋本奈緒美 コング桑田 大貫勇輔
企画・製作:株式会社パルコ

1990年3月26日生まれ 大阪府出身/2007年、Hey! Say! JUMPのメンバーとしてデビュー。絶大な人気を誇るアイドル・グループの一員として活躍中。24年6月からレギュラー番組「いたジャン!」(CX)がスタート。ソロとしても「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!」(18年~/TX)、雑誌「Fine」レギュラーモデル(20~24年)、ラジオ「髙木雄也のYOU YAKAI」(23年~/FM大阪)など、幅広く活躍している。主な出演作に、【ドラマ】「ザ・タクシー飯店」(22・TX)、「女王の法医学~屍活師~2」(22・TX)、「FINAL CUT」(18・CX)、【舞台】『東京輪舞』(24)、『星降る夜に出掛けよう』(23)、『裏切りの街』(22)、ミュージカル『ブロードウェイと銃弾』(21)、『クイーン・エリザベス-輝ける王冠と秘められし愛-』(19)、『薔薇と白鳥』(18)などがある。

1980年6月19日生まれ 埼玉県出身/1996年、宝塚音楽学校入学。98年、宝塚歌劇団に第84期生として入団。宙組公演「シトラスの風」で初舞台。その後、雪組に配属。10年、雪組トップスターに就任。華やかな容姿に加え、歌、ダンス、芝居と3拍子揃った実力派トップスターと称され、12年惜しまれながら退団。現在、様々なドラマ、映画、舞台などに出演中。近年の主な出演作に、【ドラマ】「モンスター」(24・CX) 、「ラブライブ!スクールアイドルミュージカル THE DRAMA」(24・MBS系)、【映画】「劇場版MOZU」(2015)、【舞台】『この世界の片隅に』『斑鳩の王子-戯史 聖徳太子伝-』(24)、『ひげよ、さらば』『ある馬の物語』『それを言っちゃお終い』(23)、『レオポルトシュタット』『陰陽師 生成り姫』(22)、『ナイツ・テイル-騎士物語-』(21・18)などがある。

石田ニコル

アーティスト情報

1990年5月29日生まれ 山口県出身/2010年に「KOBEコレクションモデルオーディション2010」でグランプリを受賞。以降、様々なファッション雑誌で活躍。さらに、俳優としてドラマやミュージカルなどで幅広く活躍する。近年の主な出演作に、【ドラマ】「クラスメイトの女子、全員好きでした」(24・NTV系)、【映画】「すくってごらん」(21)、「いけいけ!バカオンナ」(20)、【舞台】『ファントム』『MEAN GIRLS』(23)、『薔薇とサムライ2 海賊女王の帰還』『恋のすべて』(22)、『マドモアゼル・モーツァルト』『イン・ザ・ハイツ』(21)、『フラッシュダンス』(20)などがある。2025年1月・2月に映画「サラリーマン金太郎」【暁】編・【魁】編の公開を控えている。

1988年6月1日生まれ 和歌山県出身/2003年ソニーミュージックよりシングル「Believe」でデビュー。「機動戦士ガンダムSEED」とその続編「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」のオープニング&エンディング主題歌を過去最多の計4曲担当。オリコンウィークリーで1位を獲得。シンガーとしてだけでなく、ブロードウェイミュージカルでの主演や映画出演など女優としての才能も発揮している。近年の主な出演作に、【舞台】『ヴァグラント』『李香蘭-花と華-』(23)、『私は怪獣-ネオンキッズ Live beat-』『キンキーブーツ』『犬との約束』(22)、『ザ・パンデモニアム・ロック・ショー』(21)、『美少女戦士セーラームーン』『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-』(19)などがある。

1988年8月31日生まれ 神奈川県出身/7歳より母の経営するスタジオでダンスを始める。祖父は体操のオリンピック強化選手、母や伯母も元体操選手という生粋のサラブレッド。17歳よりプロダンサーとして数々の作品に出演。バレエ・ジャズ・コンテンポラリー・モダン・ストリート・アクロバット等多岐に渡るジャンルのダンスを踊りこなす。近年の主な出演作に、【映画】『八犬伝』(24)、【舞台】『アメリカン・サイコ』(25)、『天保十二年のシェイクスピア』(24)、『ねじまき鳥クロニクル』(23・20)、『ハリー・ポッターと呪いの子』(23)、『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』『王家の紋章』(21)、『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー』(20・17)、『ロミオ&ジュリエット』(19・17・11)などがある。

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