映画『早乙女カナコの場合は』公開を迎えた思いを素顔で語る
「どんな現場でもフラットな姿勢は変わらない」旬を更新し続ける俳優・山田杏奈を成り立たすもの
2025.03.24 18:00
2025.03.24 18:00
どんな現場であっても楽しい人間でありたい
──麻衣子は大学入学を機に「新しいことに挑戦したい」という思いから、自分を変えようとしますよね。そこで、自分の価値観で自分自身を縛っていきます。
可愛くいなくちゃいけない。恋愛しなきゃいけない。そういう感覚は、集団の中にいるとどうしても芽生えてしまいがちなんでしょうね。

──「学校」というある種の集団ですね。
麻衣子は大学生ですが、中学校も高校も、ほとんど同じようなものだと思います。実際に私が学生だった頃、すごく狭い世界で生きている感覚がありました。いろんな面で周囲に気を遣って合わせたり、みんなの求めるキャラクターを演じたり。
──分かります。
でも私自身はそんなのあまり気にしないタイプでした(笑)。
──(笑)でもだからこそ、これだけたくさんの作品でいろんなタイプの役を演じられるのかなとも思います。山田さんは楽な自分でいるために、どのようにバランスを取っているのでしょうか?
撮影現場に関しては、カメラの回っていないところでは基本的に山田杏奈のままでいるようにしています。山田杏奈としてみなさんとお話ししますし、関わる作品や演じる役が違っても、この自分のスタンスは変わらないですね。それに、あんまり役を引きずるタイプでもないんですよ。

──たしかに、ひとつの役を引きずっていたら、こんなにも多くのキャラクターは演じられませんよね。
そうだと思います。だから私はどんな現場であっても自分自身を大切に、常に楽しい人間でありたいなと思っているんです。私がちゃんと私でいられるように。
──素敵な心がけですね。
でも実は、たいして何も考えていないのかもしれません(笑)。人と喋るのが好きになってきたのがここ数年のことで、20代に入ってから少しずつ楽しいと思えるようになってきました。元々のフラットな性格と、こういった私自身の変化が、今の私を成立させているんだと思います。
──人と話すのが好きになったきっかけは何かあるんですか?
以前はとにかく人見知りで、とくに初対面の人と話すのが苦手だったんです。でも10代のうちに、そんなことは言ってられないことに気がついて(苦笑)。少しずつ自分のほうから話しかけてみるようになりました。

──自ら気づいたと。
はい。あとはそうですね、やっぱり成人してお酒の場に顔を出せるようになったのも大きいと思います。たとえば作品の打ち上げに参加することなど、以前はすごく億劫だったんですよ。でも回数を重ねるうちに、いろんな方とお話しするのが楽しくなってきたなって。そこではさまざまな考え方や価値観に触れられますから。
──そういう気づきや変化が生まれるのは、作品を通してよりも、日常生活の中でのことが多いんですか?
日常の中で気づくことのほうが多いかもしれませんね。ただ、今の私の認識としては、自分で気づいて自分から変化したと思っていますが、いろんなところから無意識のうちに受けた影響の結果として、変化している部分はきっと大きいと思います。
──時間が経ってみてようやく気がつくことって多いですよね。
そうだと思います。今経験していることが、しばらく時間が経って私の人生や生き方に影響してくるかもしれませんし。あとこのお仕事って、純粋に出会う人の数がとても多いんです。世の中にはいろんなお仕事がありますが、数ヵ月ごとに身の回りの人間関係がここまで大きく変化するのって、そうないと思うんです。

──改めて考えてみるとすごいことですよね。
それで、こういうお仕事をしていない友人たちからよく言われるんですよ。「人との出会いの数がとんでもないよね」って。確かにそのとおりです。だから本当にいろんな方々から、無意識のうちに受けている影響はきっと多いはずなんです。
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