2024.10.24 18:00
2024.10.24 18:00
終わって達成感を強く感じるのは上手い俳優
──『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』に携わることで感じたジョーカーの新たな魅力はありましたか?
難しいですね。吹替の試写を1回見ただけなんですが、見る度に印象が変わる気がするのであと2~3回は字幕付きで見たいと思ってます。でも今回のジョーカーはかっこいいというより悲しさを感じますよね。1は例えば、スローモーションでアパートを出てエレベーターのところで振り返ったジョーカーが堪らなくかっこよかった。あそこは喋ってないから安心して見られるんです。でも2はああいうアプローチのシーンはないですよね。
──キャラクターとしてのジョーカーにスポットを当てるというより、アーサーとしての人間性を掘るシーンが多いような印象がありました。
そう。リーのためにジョーカーでいなきゃいけないっていう切迫感を常に感じて見ていたところはあります。強いジョーカーでいることにすがろうとしている部分もあるのかな。1はアーサーでいることに負荷がかかってアーサーを脱ぎ捨てジョーカーと化す。2は幻想の中でいろいろなかっこいいジョーカーが出てくるんだけれど、1と比べてアーサーはより深い悩みを抱えている気がしましたね。
──ジョーカーをはじめ多種多様なキャラクターを演じられていますが、そのために日常生活で意識していることはありますか?
「あります」って言ったらかっこいいんでしょうけど、特にないんですよね。よく言われている、どんな役が来てもいいように日頃から人間観察を怠るなっていうようなことは全くやらないんですが、若い頃からできるだけ感受性の高いアンテナを持とうとは思っています。日々血のにじむ様な努力をしているわけではありませんが、幸せなことにいろいろな役をいただける声優になれたのは、僕の何かしらの信念を評価していただいているのか、若しくは単にただ役に声が合っていたということだっただけなのかはわかりません。
──平田さんにとって声優の醍醐味というと何になるのでしょう?
もしかしたらさっきお話しした「役になりきることを意識しているわけではない」という発言と矛盾するかもしれませんが、吹替をしている役者さんとシンクロできたと勘違いできる瞬間がごくまれにあることです。勝手ながら「今、息がぴったりだったんじゃないか?」と思える瞬間がこれまで何回かあるんですよね。
──吹替をやる上で一番意識していることというと?
呼吸を合わせることですかね。相手と呼吸のタイミングが合うとセリフが合いやすくなります。呼吸を合わせるためには俳優の目線から心情の動きを読み取って、「次のセリフはどういう気持ちで言うのかな」と想像する。あと、例えば怒鳴り声を発するとしたら、「この怒鳴り声にはこういう要素もああいう要素もあるんだろうな」と想像します。大事なのは目線から呼吸を読み取ることですね。なんか俺かっこいいこと言ってるな。
──(笑)では、うまい役者の吹替の方がよりやりがいを感じますか?
そうですけど、上手い役者って大概面倒なので嫌ですよね。『ジョーカー』の1作目のキャストが発表されてホアキン・フェニックスが主演と知り、「誰が吹き込むんだろう? 絶対面倒くさいだろうな」と思ってたら僕がやらせてもらえることになりました。映像を見て、口元と声だけではなく表情全体をしっかり捉えながらリハーサルするには時間がかかりますが、終わった後に達成感を強く感じるのはホアキン・フェニックスをはじめ、上手い俳優さんですよね。ティム・ロスも上手くて面倒くさいです。
──「面倒くさい」っていうのは誉め言葉ですよね(笑)。
そうですね。たまに「ちょっとは吹き替える身になって演技してほしいな」って思いますけど。
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』場面写真 ©︎ & TM DC ©︎ 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved