2024.09.11 17:30
SAMPHA ©︎ Daiki Miura
2024.09.11 17:30
DAY1の記事はこちら
言い出しっぺがやらない訳には、いかないのだ。
いきなり何の話かというと開催直前記事で2日目のラインナップに対して“その気になれば音楽の世界旅行が出来る”なんて斜め上からのご提案をブチ上げさせていただいた筆者、これを可能な限り実践してみることにしたのである。
結果としてはHedigan’sの日本から始まりTHE LAST DINNER PARTYでイギリス、GLASS BEAMSでオーストラリア、EYEDRESSでフィリピン、NONAMEでアメリカ、SAMPHAで再びイギリス、KRAFTWERKでドイツ、NIKOんで再び日本、ALIでインドネシア、HOMEで三度の日本、YIN YINでオランダの11組で8ヵ国。40歳の俺が各組極力フルでライブを観るとなると時間的にも体力的にもこんくらいが限界でした(泣)。
まあ、そんな勝手なる事情もあり1日目はなるべく早く就寝……という訳にもいかず偶然出くわしたアレキのスタッフチーム(別現場でフジに来ていたとのこと)と深夜まで酒盛りに興じてしまい、そらもうスウィートな二日酔いを引き摺りつつたどり着いたは11:30のレッドマーキー。アクトはHedigan’s。Suchmosの河西“YONCE”洋介(Vo,Gu)らが新たに結成したバンドである。実は筆者が旧知の仲である大内岳(Dr)が参加しているのも楽しみなポイントであった(というのも筆者が[Alexandros]の前に組んでいたバンドでOLD JOEと対バンした事があるのですよ)。
リリース済の音源ではアーシー、フォーキー、ブルージー、サイケといった単語が想起されるバンドでもあり、またそのアンサンブルにはけたたましくギターが唸るヘヴィさ、言わば往年のブルースロックあるいはストーナー的な香りさえ感じさせる出来であったが、これがライブとなるとその獰猛さは想像以上。スローテンポの曲が中心なのだが大内の全身を震わせながらのドラミングが容赦なくオーディエンスたちにバシバシと叩きつけられ、“O’Share”では栗田祐輔(Key)もギターを担当するというトリプルギター編成が朝イチのマーキーにノイズの塊を喰らわせる。ライブ用の長尺アレンジでプレイされた「説教くさいおっさんのルンバ」は中でも特に強烈で、これがたまらなく二日酔いの我が身に合うのだ(怪我の功名ってヤツ笑)。ライブが終わる頃には何故か酔いも抜けており、二日酔いの身体ごとすっかりHedigan’sに呑み込まれてしまった様な感覚。
グリーンステージに移動しTHE LAST DINNER PARTY。近年本当に熱いアクトが頻発しているサウスロンドンを拠点とするバンドなのだが、そんな近年のバンドに比べるとシアトリカルな楽曲とそれを増幅させるヴィジュアルイメージ、というよりメンバー5人の絵力が圧倒的に強く、本国での勢いをそのままにフジロック初出演にしてグリーンステージに降臨である。サポートドラマーを奥に配置し、メンバー5人が横並びとなるフォーメーションが先ず強い。そして各々が纏うカラフルな衣装がどれもこれも本当にお洒落。スタイリングはセルフなのだろうか。
「Burn Alive」から始められたライブはこれがまた目がいくつあっても足りないくらいメンバーの一挙手一投足が冴えまくっている。中でも見どころといえばやはりフロントを務めるAbigail Morris(Vo)のステージングであろう。オペラ的な歌唱も繰り出しながら何かに取り憑かれているかのようにステージを右往左往しつつ、演奏メインのセクションでもイカしたポージングの嵐。彼女に先導されるかの様にオーディエンスもその動きを徐々に大きくしていく。Georgia Davies(Ba,Cho)のフレンドリーな日本語MC(粉川しのさんのポストによると、何でも高校で日本語の授業を取っていたからだそう)がさらにオーディエンスの心を掴み、個人的にはめちゃ上がった「Call Me」(BLONDIEのカバー)やラストの「Nothing Matters」でその存在感を存分に示してくれた。
と、つい最後までTHE LAST DINNER PARTYを観てしまったがため、その直後に始まったレッドマーキーのGLASS BEAMSは着いた頃には大混雑の大盛り上がり。楽曲もさることながらこちらも先のTHE LAST DINNER PARTY同様、ヴィジュアルイメージやコスチュームなど音楽以外の部分でもその表現の手を尽くしに尽くしたバンドである。つうかあのマスクはズルい。何となしの元ネタが見えるSLIPKNOTとはまた別の、キャラクタービジネスとしての新たな発明である。あんな超カッコいいマスクマン3人組なんて絶対生で観たいに決まってる。
煌びやかな前者と打って変わってその隣のステージではこんなにもエキゾチックな光景が広げられているだなんて。この落差こそまさに世界旅行の醍醐味そのもの。ここは中心人物であるRajan Silva(ちなみにその他2人のメンバーは公式プロフィールが存在せず、その素性は一切不明とのこと笑)がルーツに持つインドの王宮か、はたまたアラビアンナイトか。ビヨーンとした響きのアルペジオがオーディエンスを心地よい陶酔へと誘いつつ、ドラマーが時折鳴らすウィンドチャイムの音色が覚醒作用をもたらす。迎え酒でもしておくべきだったかとも思ったが、ここは純粋に音楽だけで酔うとしよう。ふと周囲に目をやると皆々思い思いにばっちりキマってるご様子でしたよ(勿論合法的に笑)。
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