2024.05.31 18:00
2024.05.31 18:00
自分のことを高く見積もらなくなった
──殺人の告白を言ってしまった側と聞いてしまった側。このシチュエーションが最高に面白かったですが、もし奈緒さんが聞いてしまった側の立場になったらどうしますか。
忘れたいですよね。「なんで言うの?」って思う(笑)。聞いちゃった側の人生も変えちゃうような告白じゃないですか。そういう秘密はできれば自分で墓場まで持っていってほしい(笑)。聞いてしまった以上、今度は自分の秘密になっちゃうじゃないですか。それが困る。どうしたらいいんだろう。
──聞いてしまった側としては、とばっちりですよね。
死を前にして、懺悔をしたくなる気持ちはすごくわかるんです。けど、それはできれば神様にやってほしいです!
──じゃあ、逆に言ってしまった側だったら?
「ごめんね、気まずいよね」って。それでなんとかします(笑)。
──ジヨンのように襲ったりはしない?
襲いはしないですね(笑)。二人の場合、あんな特別な状況だから理性が働いてない部分があると思っていて。印象的だったのが、途中でジヨンが「友達だったじゃないか」と本音のような一言を漏らすんです。あそこはもともとの彼自身が出た気がして、後半に来てこの一言を言うんだって、グッと来ちゃいました。二人の間には、一言では言い表せない友情とか妬みがあって、そこにはもちろん愛情もある。だからこそ、すべてが裏返って、あんなことになってしまったんだなと、ハッとさせられる場面でした。
──ジヨンほどではないにせよ、人はみんな何かしら封印したい後悔や懺悔を背負って生きています。奈緒さんは、そういったネガティブな思い出とどう折り合いをつけながら生きていますか。
自分の20代を振り返っても、まったく後悔をしない20代ではなかったですし、今も小さな後悔みたいなものはいくつか残ってはいます。でもどれも自分の勉強になったことだったり、今となっては未熟だったなと思う部分が何かしらあるので、消したいとは思わない。だからこれから起きる後悔も、10年後ぐらいには未熟だったなと思えるんじゃないかなって。人生は、その繰り返しのような気がします。
──後悔って、人によっては化膿してグチュグチュになることもあると思うんです。それを消したいとは思わないと言えるのは、奈緒さん自身がどういう生き方をしてきたからだと思いますか。
自分のことをあんまり高く見積もらなくなったのは大きいですね。私も人間だから、ずるいところとか、ぐうたらなところとか、恥ずかしい傲慢さは持っている。それを自分でちゃんと認められたことで楽になれました。自分のことをいい人間だと思っていると、何かマイナスことが起きたときに、つい目を背けてしまうんですよね。傷口が化膿しちゃうのって、自分で蓋をしたせい。開き直るわけではないけれど、自分にもダメなところはいっぱいあると受け入れたら、マイナスなことも受け止められるんじゃないかなって。
──自分を受け入れることが大事なんですね。
最近、1日に起きたことをノートに書くようにしているんですね。5分測って、その日の出来事とか、その日できたことを思い出せる範囲で書き出してみる。何でもいいんです、洗濯をしたとか、掃除をしたとか、そんな小さなことでもいいから、まずは書いてみる。そうすると、今日も何もできなかったと漠然と思って落ち込んでいたものが、意外とこれとこれはできたじゃんとポジティブに思えたり。
逆に自分のだらしないところも書くんですけど、何日かしたら、また同じことを書いていたりするんですね。それを見て、これは結構根が深い問題かもしれないと考えたり。きっと私は過去にも同じようなことをして人に迷惑をかけていたんだろうなと反省したり。そうやって自分のことを知って、受け入れて、嫌なところに関してはできるだけしないようにする練習をしています。
──面白いですね。どうしてノートをとるようになったんですか。
なんでだろう。毎日があっという間に過ぎていって。今日したことを次の日には覚えてないなと思った瞬間があったんですよ。そんな生き方でいいのかと疑問を抱いていたときに何かしら可視化するといいという話を聞いて、5分ならできるなと思って何気なく始めてみました。どんなに忙しくても、1日5分でもいいから自分のことを知る時間をつくれたらいいなという気持ちで始めたんですけど、今となってはその5分が自分にとっていい時間になっています。
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