2024.03.08 19:00
目覚めた時、そこには闇。
突然入る一筋の光。大声を出して話しかけて来る知らない誰か。身に覚えのない場所。
外に出れば荒れた海。ボートには助けてくれる知らない人々。
少女は思う。ただいつものように寝ていただけだったのにと。
少年が言う。ただいつものように寝ていただけだと。
皆が言う。自分たちも同じだと。
今回紹介する漫画は『7SEEDS』。
来る「衝突の冬」と呼ばれる人類が死滅するやもしれぬ未曾有の災厄に備えた、世界の政府が立ち上げた最終プロジェクト名「7SEEDS」。未来のために選ばれた若者たちを冷凍保存し、再び人間が住めるであろう環境になったとコンピューターが判断した時、解凍し放出される。
登場人物たちの名前にはそれぞれ季語が入っており異なる春夏秋冬、それぞれ7人のチームに分けられた。
冬を忍び春に種を蒔くように
7つの種……
そんな彼らが主人公の群像劇である。
彼らは荒廃した地球で生き抜くために様々な困難に立ち向かう。物語はサバイバル、人間ドラマ、冒険要素が絡み合い、極限状態で直面する困難や人間関係の複雑さには緊張感が漂いこちらに息つく暇も与えない。それぞれが大人になる過程の葛藤や成長、絆が描かれており気づけばその緊張感は紐解かれその優しさや思いやりに胸を揺さぶられている。
僕が田村由美先生の作品で好きなのはいつもそれぞれのキャラクターが紡ぎ出す言葉の与えてくれる力だ。
普段何気なく通り過ぎて行くような言葉の棘に気づかされたり、いつの間にやら人生の指針や座右の銘にしているような言葉を心に突き刺してくれる。
人と人、何ものとの出会いの尊さも身に沁みるのだ。
田村先生とは幸いにもご縁があり『BASARA』という作品の舞台化に際し、おそれながらも演出をやらせていただきました。
運命の子と言われていた双子の兄が討たれ絶望が広がるが、代わりに妹の少女が奮い立ち、自分こそが運命の“少年”と偽り生きて行くも、知らず知らず敵と恋に落ちてしまうという物語。(またいつかご紹介できたら)
その時、誠に勝手ながらその舞台のポスターのために考えたワンフレーズが
──出逢いが運命を斬り拓く──
今日も目覚める。
陽の光や有象無象の気配を感じる。
いつものように家族と顔を合わせ朝支度をしてご飯を食べる。テレビをつければ朝の顔。スマホをのぞけば友人や恋人、仕事などの連絡確認。ネットやSNSからは否が応でも浴びる情報の数々。外に出れば仕事や学校に向かう人々。変わらない日常。平穏な日々。繰り返されていく毎日。
これがどれだけ特別なことなのか。
どれだけの人達が出会い、お互いを支え合い、どれだけの歴史が紡がれ今があるのか。
過去も未来であり未来にも未来がある。
人の紡いできた未来が歴史なのだろう。
我々もまた未来への種なのだろう。
まだ見ぬ未来へ、出逢うために生きる。
キャラクター達が語る台詞の吹き出しじゃないところこそ真骨頂で、先生らしさが溢れていると勝手に思っているのでぜひ細部に渡りお見逃しなく。