関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ! 第17回
下心丸出しで失敗した『クレオパトラ』から学んでいった“デート映画”のすすめ
2023.12.10 12:00
2023.12.10 12:00
関根勤が偏愛するマニアックな映画を語る連載『関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ!』。第17回は1970年に日本公開された手塚治虫の『クレオパトラ』を中心に“デート映画”について考える。
最初のデートでの映画チョイス、失敗しがち。いろんな人が経験してきたことだが、例に漏れず映画デートの苦い思い出がある関根勤が、その失敗談を含め、結局のところどんな映画が向いているのか語る。
第17回 “デート映画”を考える
僕が高校2年生の時に同じクラスでちょっと好きだった女の子を電話でデートに誘ったの。手塚治虫さんが監督したアニメ映画の『クレオパトラ』を観ようと思って。予告編を観て、ちょっとセクシーなシーンがあったんですよ。だから「これでちょっと刺激を与えて……」って下心がありつつ誘いました。そしたら「何観るの?」って聞かれて『クレオパトラ』って言ったら「え~あれ見るの?」って、もうどういう映画かバレちゃってたんです(笑)。
それで観に行って、お茶飲んだのかな。夕方くらいに別れて、次の日くらいに「来週の日曜またどこか行かない?」って電話で聞いたら「ちょっとスケジュールが空いていない」って言われて。「あ、そうなんだ。じゃあその次の日曜は?」って聞いたら「そこもダメ」って。ちょっと返事に間が開きながら「忙しいなあ」って言っていたから「あ、これはお断りなんだな」って思ってそこから僕からは押さないようにしました。“引き潮の関根”って自称していましたから(笑)そこからは一切追わず、普通のクラスメイトととして付き合っていましたね。しつこいって思われたら嫌だし。「あいつしつこかったな、空気読めないな」って言われるのが嫌じゃないですか。
『クレオパトラ』はやはり予告編通りでセクシーな、なかなかエロティックな映画でした。それが失敗だったのかも。もっと純愛な映画だったら良かったと思った。ダメでした、失敗しましたね。映画本編に関しては正直詳しく覚えていませんが、やはり手塚治虫さんの画風が大好きなんですよね。手塚さんは自分では「僕は女性を描くのが下手だ」って言っているけど、僕はそんなことないと思っています。彼の描く女性は魅力的で好きでした。
その映画デートの失敗から約2年後、大学1年生の時に今度は最初のデートで『エクソシスト』に行っちゃいました。ダメでしたね(笑)。それからさらに2年後、今の妻との初デートは、ジーン・ハックマン主演の『カンバセーション…盗聴…』だったんです。彼女は大学の文化祭で2度ほどすでに会っていて、初デートではあるけど顔見知りではありました。この映画は重い映画ではあるけど、気持ち悪い映画じゃなかったから良かった。その後の食事でも盛り上がりました。ただ、付き合った後に『燃えよドラゴン』と『ダーティハリー』の2本立てに連れてったら横で寝ていました(笑)。僕、『燃えよドラゴン』は33回くらい観ていたんですけどね。『ダーティハリー』も6回目くらいで。それで失敗しました。
もともと自分は『ある愛の詩』とか『ロミオとジュリエット』とかデート映画的な作品は観ないんですよ。だって、気の迷いじゃないですか恋愛なんて(笑)。特にアメリカなんて離婚率も高いし、その場限りのノリの部分だけ映画にされたってそんなの観ていられませんよ。でも『初恋のきた道』は良かったんです。あれは添い遂げた後の話だから応援できました。“ボーイ・ミーツ・ガール”的な映画……例えば『ユー・ガット・メール』とか、感情移入できなかった。完全な作り物に感じてしまったんです。ああいう作品は、観ることで「恋愛したいわ」って気持ちになって綺麗になって……という作品で、僕とかは『燃えよドラゴン』を観て「強くなるんだ!」って盛り上がる。だからそれぞれお互いに必要な映画ではあるんですよね。
失敗をしてきたからこそ、今なら『ショーシャンクの空に』とか良いなって思う。ちょっとエグい描写もありますが、デート向きですよね。あとは連載でも取り上げたことがあるけど、『トランスポーター』とかも観やすそう。『ブレードランナー』とかは難しいからやめたほうがいい気がしますね。SF好きだったらアリだけど。『ホーム・アローン』とか『マーズ・アタック!』などのコメディ映画も面白いから良いと思います。
次のページ