繊細な役を演じた映画『ブルーを笑えるその日まで』の舞台裏
渡邉心結&角心菜、2人一緒の“初主演”で深まった絆と夢の解像度
2023.12.09 17:00
2023.12.09 17:00
新鋭・武田かりん監督の初長編作品『ブルーを笑えるその日まで』が12月8日(金)よりアップリンク吉祥寺にて2週間限定で公開中。中学時代に「味方はどこにもいなかった」という監督が自身の実体験を元に制作した本作では、現在16歳の渡邉心結と17歳の角心菜がダブル主演を務めている。
演じたアン(渡邉)とアイナ(角)は、どちらもクラスに居場所がない“ひとりぼっち”の女の子。物語ではそんな2人が出会い、夢のような夏休みを過ごしていく。繊細な演技を必要としたこの作品で映画初主演を飾った2人に、撮影中に感じた気持ちや今の夢を聞いた。
苦しくなる気持ちを大切にして演じた
──取材までは役のイメージが強かったのですが、普段のお2人がとても明るくて安心しました。
渡邉・角 はい、仲良いもんね!
──映画は武田かりん監督が「過去の自分を救いたい」という思いで制作された作品ですが、脚本を読んだときの印象はどうでしたか?
渡邉 監督の思いがたくさん詰まった台本だなと思いました。最初に台本をいただいたのは2年前のオーディションのときで、そこから2年かけて少しずつ変わっていって。一番新しい脚本を読んだとき、監督の伝えたいものがさらにぎゅっと詰まっていて、すごく素敵で感動しました。アンを演じたいという気持ちが強くなりました。
角 監督の思いが詰まっているからこそ、リアルというか……例えば、アンが友達のユリナ(丸本凛)と仲がよかったけど、まわりのせいでユリナが離れていってしまう、でもユリナの本心はやっぱりアンと仲よくしたいとか。そういう表現がすごいリアルに描かれていて。他にも見ていて苦しくなる部分がたくさんあるんですけど、そのとき感じた気持ちは、演じるうえで大切にしていました。
──撮影中は武田監督とは密にコミュニケーションを?
渡邉 アンは監督と何度も話し合って作り上げました。声の出し方や声のトーンだったり、スピードだったり、立ち方、仕草、歩き方……そういう細かいところまで全部話しました。(※だんだんヒソヒソ声に)
──やっぱりアンの話になるとアンのモードに入っちゃう……?
渡邉 えー(笑)。
角 うん、たしかに! でも、いつもは全然違います。
──監督からは具体的にどんな指示があったんでしょうか。
渡邉 本読みのときに監督から「こうしたらいいよ」「アンはこういうイメージだよ」というのは伝えてもらいました。あと、アイナと出会ってアンが変わるシーンは、私自身の明るいところを入れてほしいと言われました。それを聞いて、シーンによって「ここはアンっぽく」とか、「ここはもうちょっと渡邉心結を入れる」とか、私が思ったアンを演じました。
角 私はこういうふうに動いて、というより「このシーンはこういう心情だから」というのを教えてもらいました。そういう心情ならアイナはこういう動きをするなって、自分で探したりして。あと、移動中に、渡邉さんと役を交代してアンとアイナを演じたりもしました。交換して演じてみることで「こういう演じ方もあるんだ」と気づきもあって、監督だけじゃなくて、渡邉さんとも一緒に役作りをしてました。
──役としては渡邉さんが演じたアンは監督がご自身を投影された子で、アイナは「こういう子がいたらいいのに」という監督の思いが詰まってる子ですよね。
渡邉 そうです! まさにそう言われました。
角 アイナは監督にとって欲しい存在だからって、ずっと言われてました。
──渡邉さんは以前出演された映画『都会のトム&ソーヤ』(2021年)のインタビューで「次は優等生とは正反対の役柄もやってみたい」とおっしゃっていましたが、今回、優等生じゃないアンを演じてみていかがでしたか。
渡邉 優等生じゃない役をやりたいと言っていたのは、私が優等生じゃないからで。私と似た役か不良みたいな役をやってみたいなと思っていました。アンはどちらかというと私とは真逆の性格で、自分と違う性格を演じることはすごく楽しかったです。
──角さんも、よく笑う明るい子の役が多いからちょっと影のある役や不良の役とか挑戦してみたいとおっしゃっていたのを拝見しました。今回はまさに少し影のある役、演じられてどうでした?
角 アイナはたくさん笑う子で、結構明るい子に見えるんですけど、ただ明るいだけじゃなくて、つらい過去があったからこそアンに寄り添えるというか……なので笑顔であっても元気な笑顔というよりかは、優しい、なんでも話したくなるような笑顔を練習してみたり、話し方とかも心を開いてくれるような話し方を研究したりしました。
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