芸人結成物語 by やついいちろう 第14回
ダウ90000(後編)──「一番遠回りが一番早い」3年間で見つけた8人だけの正攻法
2023.11.02 18:30
2023.11.02 18:30
コロナ禍を機に決断した“こっち”の道
やつい それでいよいよ最後の人が。
吉原 一番年下で、そもそも私だけ日芸じゃないんですよ。東京女子大学に通ってて、インカレで東京大学の落語研究会に入ってたんですよ。女子大にお笑いサークルがなくて。高校のときからお笑いが大好きで、この阿佐ヶ谷アートスペースプロットにも見にきてて。
やつい すげえ、オタクだね。
吉原 そうですね。お笑いサークルは大会があって、“はりねずみのパジャマ”もそこに出てたんですよ。大学のお笑いサークルを名乗ってる人たちが出場してたんですけど、ひとつだけ大学名なしで団体名だけで。日芸の演劇サークルの人がコントとかで出てるらしいって聞いて周囲の人たちも「へえ〜」って感じだったんですよ。客席も興味なさそうな感じだったんですけど、出たらすっごいウケたんですよ。
やつい 天才エピソードしか出てこないじゃん。腕組んでる状態の人間を全員爆笑させるんでしょ?
吉原 そこでウケると界隈で名が知れるんですよ。最初に東大落研の先輩と蓮見さんが仲よくなって。
やつい 目つけてたんだ。
蓮見 話しかけてくれました。
吉原 それで快く私とも仲良くしてくれて、YouTubeの撮影でゲストに呼んでくれるようになって、ダウになるタイミングで入りました。
蓮見 吉原は女子メンバーの中にもいないタイプで、あと一番コントをやってきてたんで、圧倒的に嗅覚が鋭くて。演技のテンポとコントのテンポは違うじゃないですか。だから入ってくれたらだいぶ楽になるなと思って。ダウ90000を作りますって日があったんですけど、そのタイミングで。
吉原 私は昔子役をやってて、お芝居がすごい好きだったんです。お笑いも好きだから、ちょうど演劇もお笑いもできる場所があったらいいなと思っていて。
やつい ハロプロの子と同級生だよね? さんまさんのラジオで聴いたよ。
吉原 そうです! それで落研にも所属しながらこっちもやって。演劇もお笑いもできてていいなーって。
やつい “はりねずみのパジャマ”はもうたくさん人いたんじゃないの? ウケ続けた4年間。人数が膨れ上がってそうじゃん。
蓮見 僕が社会人になったときに空中分解みたいになったんですよ。卒業しちゃったから、サークルには行けないし。
やつい たしかにサークルの成り立ちを聞くと、主宰2人がいないと終わりだもね。あとはスタンプ押す人しかいないもんね。
蓮見 スタンプ持ってる子だけがね。スタンプカードがなくなっちゃって。
やつい 育てようって気持ちもなかったんでしょ?
蓮見 ただ、時間を奪いすぎちゃったなとは思ってて。僕はまったく別でコンビで漫才とかやってて、NSC入るかとかも相談してたんですけど。残った子たちをどうするかって考えてたら、みんなは学生だったんでまだいいんですけど、園田は就職してなくて。やばいぞとなって。
園田 フリーターでいいかなって。
やつい それはずっと続けようとかじゃないんだよね?
園田 最後の演劇公演がコロナでつぶれちゃって、一瞬でなんにもなくなったんですよ。そこで夢が醒めて、フリーターでも稼げるしいいかって。そしたら、またやらないかって。
蓮見 コンビの単独がコロナで中止になって、もう無理だってなったんです。一回こっちでちゃんとやろうと思って。それが2020年9月で、「就職する気がないやつだけ残ってくれ」って言って今のメンバーが残りました。
やつい 30人以上いたわけでしょ?
蓮見 そのときはもう15人ぐらいに減ってました。もう一回やろうよってなったときに既に他のサークルに入ってる人もいて。
中島 就職決まってる子もいたしね。
蓮見 日芸の先輩で就職しながら中途半端に劇団やってる人を見てきてるので、それは嫌だなと思って。みんな俳優志望だったから、もともと就職する気なくて大学入ってる人も多かったんですよね。最初は10人残ってたんですけど、2人辞めて今の8人になりました。で、その9月から阿佐ヶ谷アートスペースプロットでやってます。
やつい やっとここに来た……!
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