芸人結成物語 by やついいちろう 第14回
ダウ90000(後編)──「一番遠回りが一番早い」3年間で見つけた8人だけの正攻法
2023.11.02 18:30
2023.11.02 18:30
ひとりのメンバーが大好きだった中島
やつい それで忽那さんが入ったわけなんだ。
蓮見 面白かったんですよ。変なセリフの読み方する人で。もうひとりの主宰と2人で「この子は抱えような」と話したのを覚えてます。空気感が独特だったんで、このままずっと舞台上に存在させといた方がいいなと思いました。
忽那 へえ〜。普段言ってくれないから。
蓮見 台本を渡して、客前でやって手応えを感じてる顔してくれてる子が残るんだなってわかるようになってきました。辞めていく子ってウケてもうれしそうにしてないから。
やつい なんでうれしそうじゃないんだろ。
蓮見 たぶん演技がしたいなかで、笑われてるって思ってたのかなって。感覚が違うんですよね。道上とかはやってきてなかったから、演技というカテゴリの中に“ウケたい”というものを含ませることに成功したんですよ。
やつい 完全にお笑いだけに特化してるっていう演劇もあんまいないじゃん? せっかく演劇やるならお笑い以外の要素も入れてとか。お笑いだけやるんだったらフットワークも軽くなるし。だから、むしろ蓮見くんがおかしい。求めてる役者の種類が違うんだと思う。
蓮見 それはそうかもしれない!
やつい 辞めていった人たちは割と普通の演劇みたいな、お笑いもやりたいし感動させたいし、複合的なことをやりたかったんじゃないの?
蓮見 おこがましいよって思ってました。大学の教室で大学生が作ったもの見て、感動なんかするわけねえだろって(笑)。感動させるとか嫌いでした。
やつい こっちの方が手数もあるし、面白いじゃんってことだよね。
蓮見 長い時間書いていられるから、設定をいちいち区切らなくていいのが楽だったんですよね。
やつい そこは30人もいれば楽だよね。女装とかもさせる必要もないし。
蓮見 めっちゃ人がいたおかげでよかったです。好きなことを書いたら誰かしらやってもらえるんで。
やつい 書いたら書いたで落ちたり受かったりするライバルもいるしね。ほんと面白いね。それで次は?
中島 私が入りました。飯原と同じで俳優になりたくて大学に入って。忽那と同じコースの同級生で最初は仲よくはなかったんですけど、私が忽那のこと大好きだったんですよ。ずっとこんな感じだから面白くて。
やつい 気になってたんだ?
中島 はい、クラスで最初に私が気づいて、「百依子は本当に忽那が好きだよね」って言われてて。私がいたクラスはほとんどサークルに入ってなかったんですけど、忽那はひとり先に入ってたんです。すごく覚えてるのは最初に、走ってきた忽那からチラシをもらって、そのまま走って行っちゃったっていう記憶で。そのチラシが演劇公演ので、大学1年の秋頃にやるっていう。見に行けば感想とか言い合って仲よくなれる口実にできると思って、それで見に行ったらめっっちゃ面白くて。すぐ忽那に「どうにか入りたいです」ってLINEして、そのあと練馬のマックで蓮見さんと忽那と会いました。
やつい 必ずファーストフード店で話すんだね。
蓮見 お金がなかったので(笑)。
中島 忽那から話を聞いてたので2時間ぐらい話すと思ってたんですよ。でも自分は自己紹介したぐらいで、蓮見さんから「じゃ、よろしくね」って。
やつい かっこいい!
蓮見 2時間も話すことなくないですか? でも、電話とかLINEだと来なくなっちゃうので、会った方がいいかなって。中島は明るい子だったから大丈夫だろうなって。めっちゃ緊張してたんですよね。
やつい 一発目にね、圧倒的なステージを見せられたらちょっとファン目線で行っちゃうよね。それは緊張しちゃうよ。
中島 忽那からはその場で「もう入ったよー」って。
やつい 忽那さんは小さい妖精なの?(笑)
全員 (笑)
忽那 いろんな友達を連れてきてくれて、同級生の友達ができました。
やつい 友達はほしくなかった?
忽那 ほしくないわけじゃないけど、意識になかったというか。
やつい 友達がいないことも気づいてなかったのかもね。サークルに入ったから仲間はいるし。
忽那 気づいたらできてた……楽しくなってきちゃった。
やつい 楽しくなってきちゃったのね! これが友達なんだ! これが友達か!って。
全員 (笑)
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